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チルバット乱入

どうやって帰る話を切り出そうかな。

フィリス嬢は綺麗だし、案外素直なところもあるけれど、今結婚したいかと聞かれたらイイエ、としか言えない。

僕にはまだ早いよ。

それにはまず、話をここに着た目的に戻さなきゃ。

フィリス嬢が負傷したことについて、シヴェシュの代わりに謝罪しないとね。

「あの……」

「ご主人様!」

でも、僕の言葉は口の中で止まっているうちに遮られてしまった。


テラスに走り込んで来たのは鎧を着た背の高い人だった。

「なんだ、朝食中に」

「申し訳ございませぬ。つい先ほど、北側の防壁が姿隠しの呪文に反応いたしました。暗殺者の可能性もございます。取り急ぎ、避難をお願いいたします。」

「なんと!」

ローゼンシュタイン氏は立ち上がった。

ちょっと嬉しそうに見える。

「無謀な者がいたものだな。我が剣の錆にしてくれん!」

でも、鎧の人は冷静だった。

「危険です。反応したのは防壁の外側ですぞ。飛行しているかも知れず、人間型をしていない可能性も高いいと思われます」

「アール。わしが遅れを取るはずがあるまい!」

「そういう話ではございません……」

僕は話の間、テラスから見える東の空を見ていた。

雨のせいかな。

少し城壁の蔦がゆがんで見える。

気になる。

不自然だ。

いきなり失礼かもしれないけど、怪我をする人が出て欲しくないし、仕方が無いよね。

僕は見当をつけたあたりに.455ウェブリー弾を撃ち込んだ。

一発だけだよ?

朝食中だしね。

みんなびっくりした顔でこっちを見ている。

まずかったかな。

「何をなさるか!」

鎧のおじさん、ごめんなさい。

でもうまく当たったみたいなので許して下さい。


「ヂュイイイイイイイイ」

ひどい唸り声を上げて煤みたいに黒い蝙蝠が庭園の植え込みに倒れ込んだ。

大きい。

そりゃ当たるよね。

体だけでも馬くらいありそうだ。

冷たき蝙蝠チルバットなのかな。それにしては大きすぎないか。

「なんという化物!ご主人様、お下がりください!あの大きさに接近戦を挑むのは無謀です!」

「何を申す……アロイス、引っ張らんでくれ!」

どたばたしているうちに蝙蝠が身を起こした。

人間より背の高い蝙蝠って冗談みたいだな。

ウェブリーは翼に当たったらしく、右の翼がボロ布のようになっているけど、戦意は旺盛だ。

「ギイイイイイイイ!」

ばかでかい口から放たれる妙な腐臭が鼻をつく。

ああ、こいつ、あの巨死体と同じ感じがする。

容赦しなくていいな。

僕は"ファントム"を呼び出し、リー・エンフィールド銃を取り出した。

その時"ファントム"の後尾が朝食のテーブルにガツンと当たったけど、もう今更だ。

気にしないぞ。

タン!

鋭い銃声が何かをごまかすように響き渡った。


飛ぶ生き物はそのために体が華奢に出来ているそうだ。

そのせいか知らないけど、冷たき蝙蝠チルバットは一発で内臓をぶちまけて死んだ。

魔物にしては防御力は弱い部類じゃないかと思う。

「恐るべき手練れ……さすがフィリスお嬢様の……」

とか鎧のおじさんは言ってたけど、相性がいいだけだからね!


「本当に素晴らしい腕前でしたわ……ところで、大したことではありませんけれど、今目の前に何か変なものが現れて、それから消えたらテーブルから食器が全部落ちておりました。本当に、大した事ではございませんけれど!」

奥様のお気に入りのカップだったらしい。

しくじった……。

グラムタで一番の職人に食器セットを作って送ってもらおう。

お金がかかっても仕方ない。


「これほどの怪物、姿隠しをかけるだけでも相当の魔力を消費するはず。油断ならぬ敵かと」

鎧のおじさんはアールと言う名前らしい。

鋭い目つきで蝙蝠の死体を検分している。

「魔術士か。面倒だのう」

「我々だけでは魔術探知を気軽に行えませんからな。今回も都市防衛拠点の機能を使えたからよいものの……。優秀な魔術士の支援が欲しいものです」

なんで二人ともこっちを見てるの?

僕にはそんな力ありませんよ!


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