グラムタ市の宝物
「ちょっとこっちに来てくれるか。それと、それすぐしまえ」
ぐいぐい引っ張られる。
引っ張られるとしまえないよ!
この間使ったのと同じ応接室に入ると、ライレさんは後ろ手に扉を乱暴に閉めた。
顔が少し青白い。
「それ、どこで手に入れたんだ」
「え、コープス・ハンドを倒してですけど」
「そんなもんがどのコープス・ハンドに入ってるっていうんだよ!入るとこねえだろ!」
必死に言い訳したけど、その後も、何か疑っているらしいライレさんを落ち着かせるのにはしばらくかかった。
なんで僕疑われてるの?
「堕ちた巨人?それを倒したら出てきたってのか」
「はい。嘘じゃないですよ」
「本当だろうな。まさか、あれを倒すやつがいるとは」
「本当ですって」
おかしいな。シヴェシュの話と違う。
そこまでたいしたことじゃないっていうことだったのに。
「わかった。グライムズさんなら、そんなことに巻き込まれることがないとも限らん」
納得してくれましたか?
「だが、少しだけ待ってくれ。どこにも行くなよ」
そう言うと、グライムズさんは僕を置いて出て行ってしまった。
三十分くらいして帰ってきたライレさんは、顔色が普通に戻っていた。
「悪かった。確認できたよ」
全然わからない。
「何をです?」
「うちの宝物庫にはな」
ちょっと息をつく。
「それとまったくうり二つの石がしまわれてるんだよ」
ええ?
「泥棒なんかしませんよ!」
「わかってるよ。すまなかったな。うちとしても万一に備えとかなきゃならんから、許してくれ」
「はあ……」
「泥棒扱いされちゃ納得出来ないか。そうだろうな」
ライレさんを責める訳じゃないんだけどね。
「見せるよ。現物見ればどれだけそっくりかわかってもらえるだろ」
「宝物庫なんて、僕みたいな者を入れてもいいんでしょうか」
その部屋はホールの職員通路の一番奥、大きな扉と短い通路を二つずつ潜った先にあった。
重そうな扉は全部金属製だ。
「ああ?そりゃうまくはねえが、しょうがねえだろ」
「僕はどうしても見たいってわけじゃないんですけど」
「いいんだよ!俺も見て欲しいしな」
ああ、もう開けてしまった。
止めようとする人もいないのはどうなんだろう。
中は魔法のランタンで照らされた細長い部屋だった。
宝物っていう言葉から連想されるような豪華な雰囲気は何もない。
部屋の両側の壁に小さいものから比較的大きいものまで、無数の引き出し?扉?のようなものがたくさんついているだけだ。
「ここだ。他の扉には触れるなよ。防衛精霊がまだ動いてるからな」
言われなくても、そんなことしませんよ。
防衛精霊ってなんだろう。
僕はなるべく壁に触れないようにちょっと体をよじって細くした。
少なくともそう努力した。
そんな無駄な事をしてる間に、大きめの扉の一つからライレさんは大きな呪石を取り出した。
うん。そっくりだ。
形もよく似ている。僕のもののほうが少し角ばっているだろうか。
「これはな、"大襲来"の指揮をとった魔物の一体から取り出されたと言われてる。事の次第には異聞がたくさんあって定かじゃないがな」
「堕ちた巨人もそうだったんじゃないですか?」
「ずいぶん詳しいな。誰かから聞いたのか」
あれ、シヴェシュについて話すのはまずいかな。
僕の顔は表情に乏しい。
焦っていてもわかりにくいので、具体的な説明をしなくてすんだ。
黙っていたら、クリファさんにでも聞いたのかと思ってもらえたみたいだ。
「大したもんだ。あの怪物を倒すとはな」
「ええ、大変でした」
「後で確認はしなきゃならんが、実際に墜ちた巨人が定位置にいないことが確認出来たら特別報酬を考えるよ」
「本当ですか!」
「ああ、いくらになるかはわからねえが、期待してくれていいぜ」
僕はライレさんと一緒にホールに戻りながら、小さく拳を突き上げた。
なんだよ、誰だ墜ちた巨人を倒してもお金にならないって言ってたのは。




