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死人と兵士は剣と魔法の世界で旅をする  作者: papaking
グラムタ・最初の街
30/57

個人依頼

「探索者に魔術士がいるなんて聞いてねえぞ……」

親方が鎧に出来た穴を調べながらぶつぶつ言っている。

人形の背中には頭が入ってしまいそうな射出孔があいていた。

やりすぎたのか……。

この人形っていくらくらいするんだろう。

ちょっと心配になってきた。

見た目はいかにも素人が作ったみたいに見えるんだけどな。

「あの、お支払いしますから」

「あぁ?まだどんな鎧にするか決まってねえだろ」

ヴレッキ親方は不機嫌そうに言った。

「いや、そのにんぎょ……」

「魔術士とは恐れ入った。たしかに俺も魔術士の防具なんざ作ったことはねえ!」

聞いてくださいよ。

「だいたい、魔術士の防具ってのは魔力がこめられてて普通の革や金属じゃないってのは聞いたことがあるが、お前さん、自前で用意できないってのはなんかワケアリなんだろ。わかるぜ」

「はあ」

「だが俺も五つの時に徒弟に入ってここタヴァンで一筋にやってきた!それなりに自信はあると思ってくんな」

「そ、そうなんですか。すごいですね……」

「まずは採寸だ。デザインだのはその後で」

「え?」

親方が手を振ると巻き尺を持った職人さんがわっと群がってきた。

お金のことを言ってないんだけど。

作ってもらえるなら、まあ、いいか。

クリファさんは途中から見えないなと思っていたら、音にびっくりしてひっくりかえった職人さんの巻き添えを喰って目を回してたみたい。

ややこしいから丁度いい。


「上等な服を着てるし、それを鎧下と思うことにするぜ」

親方は採寸が済んだ僕を紙がいっぱい散らばった部屋に連れてきた。

「普通は革か」

「え?」

「素材だよ。前衛で戦わないならそこまで抗刃性は問題にならないからな」

え、どうなんだろう。前衛?僕は後衛なのか?

「一人でやってるので……」

目をむいた親方に僕はこの間の負傷の話をした。

「たいした傷じゃなかったんですけど」

「ソロの魔術士……前衛でも後衛でもないってことか」

「近づかれるまでに倒すようにはしてるんですけど、なるべく負傷したくないなって」

「そりゃ当たり前だが……基本は避けと思えば、革に要所だけ小札を加えるか、なあ」

いいのかどうか見当もつかない。

「おまかせします」

「まかせとけ!」

ちょっと親方、やけになってないかな?


それから親方はデザイン画を描いてくれた。

失礼だとは思うけど、びっくりするくらい上手で、僕は見惚れてしまった。

金属補強付きの革の上衣ダブレット、急所と太ももを守る下半身鎧。

腕鎧と鉄靴は邪魔そうだったのでなしにした。

「兜はどうする?」

「あ……でも見にくくなりますよね。周りが」

「射手に兜は普通ないわな。都で一度だけ全周に透視シースルーの呪文がかかった兜を見たことがあるが、さすがに用意できねえ。ハチガネでもつけとくか」

都にはそんなものがあるんだ。

是非一度見てみたい。

それは遠い希望として、今の僕に用意されたハチガネというのは、つまり幅広の革帯に金属の板を縫い付け、頭の周りに巻き付けて後ろで縛るものだった。

それからもっと堅い革で作った首輪。

首の大きな血管を守る、らしい。

血管なんかないと思うけど、それをヴレッキ親方に話しても仕方ないしなあ。


納期は一週間みてくれと言われた。

料金は琥珀金二枚。

「気合いを入れて作るからよ」

とヴレッキ親方は言ってくれた。

目を覚ましたクリファさんが帰り道に話してくれたことによると、納期も料金もかなり破格らしい。

普通一月かかり、料金も倍かかってもおかしくないそうだ。

よかった。

倍と言われたら払えない。

ホールに帰ると、ライレさんが待っていた。

「おう、待ってたぜ。クリファは説教な!」

クリファさんはささっと逃げようとしたけど無駄だった。

「愛は無罪なんです!」

「何言ってるんだ?」

「さあ?」

僕にわかるはずがない。

「このサボり娘は後でいいや。グライムズさん、話があるんだが」

「何でしょう?」

「あんた宛てに個人依頼がある」

何だろう。

ライレさんが少し心配そうに見えた。


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