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死人と兵士は剣と魔法の世界で旅をする  作者: papaking
グラムタ・最初の街
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夜闇族その他

僕は結局その葡萄酒を飲んでしまった。

シヴェシュがどういう人なのかわからなくて断りきれなかったのだ。

大丈夫か。これで魂を取られたりしないだろうな。

僕の魂って取っていって役に立つものかどうかわからないけど。

ちなみに葡萄酒は別にまずくはないけど美味しくもなく、いい気分にもならなかった。

ただ、匂いは好きだ。

きっと砂糖をたくさん入れたら美味しくなるだろう。

そう思いながら飲み干した。

「あまりお好きではありませんかな。それにしてはよい飲みっぷりだが」

「いえ、初めてなので」

僕は正直に言った。

「ほほう。顔の方が本当のお年に近いのかな。まあ、無理して飲むようなものでもありませんよ」

シヴェシュが手を挙げると、葡萄酒の代わりにいい匂いのする水がグラスに入って出てきた。

「料理は今準備させております。その間お話いたしませんか。ここの払いは持ちますので」

否やもない。

もう葡萄酒飲んでしまったし。

僕は頷いた。

「結構!例のヴォールトから聞かれましたかな。夜闇族についてもそんなに驚かれてはいないようだが」

いや、驚いているよ。

「あまり表情が出ないので……。人間以外のいろんな種族が街にいるってことくらいしか聞いていません」

「なるほどね」

シヴェシュは目を細めるみたいにしてこっちを見た。

気がつくと、その顔は細かい毛で覆われている。

これが本当の顔なのかな。

「私、グラムタに棲む異種族のまとめ役みたいなことをしておりまして」

「はあ」

「この街に来る異種族を一度は面談しておくことになっているのですよ」

「はあ」

と、僕はもう一度曖昧に言った。

シヴェシュがテーブルの上で組んだ手には長く光る爪が伸びていた。

「なぜだかわかりますか?」

「あ、えーと、グラムタで悪いことをしないように、ですか?」

「悪いというのは相対的な言葉ですね。誰にとってですか?」

「えーと、グラムタに住む人にとってかな……」

そうだといいな。そうじゃないと困るんだけど。

僕が思い切って言うと、シヴェシュはしばらくこめかみに手をあてて考え込んでしまった。

まずい、これは怒らせてしまったかな。

戦いになってしまうかも。僕がウェブリーに手を這わせていると、シヴェシュがこっちを見た。

殺気はない。

「ま、我々もグラムタに棲む者ですからな。"人"に異種族も含めて貰えればよい答えです」

僕はこくこくと頷いた。

人間しか認めないとなると自分自身怪しくなるし。

「貴方は人間寄りなのですな」

元は人間だからそのへんは許してほしいな。

「異種族にも色々ありまして。グラムタに棲もうという者には最低でも人間を単純な獲物と見ない程度のモラルを求めておるのです」

「単純じゃなければいいの?」

「人間好きであればそれに越したことはありませんが、そこまで求めるとかなりの割合の来訪者を撃退しなくてはならなくなりますので」

うわあ。

異種族と人間の間には深い溝がある。

改めて思い知らされたよ。

「入市するが早いか一家皆殺しにしてバラバラに刻み始めるような輩はさすがに放っておけませんからな」

そこまで危ないのがいるのか。

そんな話をしていたら料理が運ばれて来た。

僕の前だけに。

「お構いなく。我々夜闇族には人間風の料理は口に合いませんので、ワインだけで失礼しますよ」

ねえ、そのワインって血とか入ってないよね?


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