設定に矛盾はないか
「コープス・ハンド。今度は多い。六体はいるぞ。援護するか?」
「大丈夫」
僕は足を残していて比較的速度が早い先頭の三体を撃つ。二体は動かなくなり、一体は急所を外れたらしい。
装弾クリップを使って装填しなおし、撃ち漏らしたやつにとどめを刺す。
あとはただの射的だ。
「まだ一時間も経ってねえぞ……もう三十体倒すとか、どんだけ強いんだ魔術士って」
"グラムタの炎"達はちょっと引いているみたいだ。
僕は不満だ。今日は一発で倒せない事が多い。
四十発以上弾を使ってしまっている。
一日二十四発補充されるので、今までの分もあってかなり余裕があるとはいえ、どんどん外して良いわけじゃない。
「戻ろうか」
仕切り直したくなった。
"グラムタの炎"を意識しているせいで射撃が雑になっているのかも知れない。
「もうか……、でも戦果は十分だよな」
リンドたちも何か疲れているみたいだ。
「コープス・ハンドとそんなにたくさん遭うことってないからな。精神を削られるぜ」
そんなものだろうか。
「もう帰ってきたのか?早すぎやしねえか」
「いや、俺達じゃもう無理っす……」
ライレさんにリンドが報告している。
ロックは職員に手当してもらいながら魔術について別の職員と熱心に話をしている。
ライスとエリースは待合テーブルに飲み物を持ってきたまま天井を見上げていた。
僕は"グラムタの炎"が知っているピーター・グライムズの設定について考えていた。
・武器を召喚して戦う。
・遠距離武器である。
・種類がいくつあるとかは、話してない。
・魔術を使える回数には限りがある。
・魔力がない人間には扱えない。
・魔力のない人間が持つと消えてしまって、僕のホルスターに戻る。
・地面に置くのは大丈夫……
うん、いいのか悪いのかさえわからない。
大体、僕自身が魔術について何も知らないのだし、詳しい人ならそんな魔術はないってあっさり言われてしまいそうだ。
故郷で「これが魔術だ!」と言って教えてもらったというのはどうだろう。
これなら本当の魔術について何も知らなくてもおかしくはない。
魔術士がグラムタに来て僕を見たらあっさりばれてしまうかもしれないけれど。
なんとかこの線でごまかせないかな……。
「めちゃくちゃですぜ。アレは」
「そんなに強えか」
「戦いにならないんですって。物凄え音がしたと思ったら手から火を吹いて」
「んで、コープス・ハンドがバラバラか」
「弓みたいに引く時間もいらないみたいですし、威力が段違いです。持ってないですけど、長弓や弩なんかより強いんじゃないですかね」
「長弓は命中率が低いし、弩はクソ高けえからな。それより強い攻撃を連発か」
「魔術士ってみんなあんなんなんですかね」
「さあな……だが、中央に高い紹介金を払っても魔術士を招聘する決心がついた」
「あんなのが増えたら俺らの立つ瀬がないんですがそれは」
「お前らも魔術を覚えろよ」
「無茶ですよ……」