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死人と兵士は剣と魔法の世界で旅をする  作者: papaking
グラムタ・最初の街
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稼ぎ・お金と存在値

自分の中ではかっこよく名乗ってみても、次に待っているのは側溝さらいだ。

人生は厳しい。

西門のあたりは商人の家が多いそうだ。

土地が低いので雨水が溜まりやすく、それを流すための側溝が家の周りに掘ってある。

でも大路は人が多くてゴミだらけ。

ただでさえ雨のたびに側溝にゴミが流れ込む上に、わざわざいらなくなったものを放り込んでいく人もいるとかで、つまって嫌な臭いを出している。

いらなくなったものというのはつまり、おまるに入った糞便とか、腐った食べ物とか、生き物の死体とか、本当にどうしようもないもののことだ。

だから全然人気のない依頼なのだ。

でも、僕なら大丈夫、だろう。

汚いとか、そんな贅沢なことは考えていられない。

「こんにちは、市から依頼を受けて来ました」

僕は聞いていた店兼商店にたどり着いて店先の人に声をかけた。

「あ!掃除屋は裏に回れよ。臭いだろ……んん?」

その人はものすごく怪訝そうな顔をした。

「依頼って、どぶさらいしか頼んでないよ。隣の薬種屋ならいつでも探索者を募集してると思うけど、うちは金物屋なんだから」

「いえ、ですから掃除に来ました。裏に廻りますね」

「待て!あんた、道具も持ってないし、そんな立派な服でやるような仕事じゃないぞ」

そうか、道具がいるんだ。困ったな。

「道具はどこかで売っていませんか」

「うちは金物屋だからうちで売ってるけどな」

「売って下さい」

「ええ……おかしいだろ……そりゃ買ってくれるなら売るけども」

僕は懐から昨日の報酬の残りを出した。

「これで足りますか」

「あんた、本当になんなんだ?何人分の道具を買うつもりだ」

「一人分です」

店の人はあきらめたみたいに頭を振った。

「うちで一番いいのを見繕っとくよ。そんで、気が済むまでどぶさらいをやってくれ」


先端が鉄のスコップ、大きなざる、立派なピッチフォークで銀貨二枚。

ピッチフォークは武器にもなりそうだ。

スパイク・バヨネットがあるから白兵戦をやるにしても多分出番はないだろうけど。

意外な発見もあった。

ピッチフォークを構えると、存在値が少しだけ増えるのだ。

ウェブリーやリー・エンフィールド銃は全然変化してくれないのに。

当たり前か。銃や軍服は僕の一部なのだし。

鎧や剣を買ったらもっと増えるのかも。

ただ、手放すとすぐに元に戻ってしまう。

あてにはできないな。

さて、仕事を始めよう。

どぶから汚泥を跳ね上げ、大きなものはピッチフォークで刺して放り出す。

ある程度たまったら地区の焼き場に運んで焼いてしまう。

焼き場というのは一日中ゴミが燃えている広場で、暑いし臭いしところによっては有毒なガスが出ている。

まともな人間は近づけないので普通は近くの貧民に金を渡して持っていってもらうそうだが、僕はまともじゃない。平気だ。

焼け残ったゴミから金属や小銭を拾っている子供たちがぎょっとした目でこっちを見るが、そのうち慣れてくれたようだ。

夕方になる前に金物屋の側溝さらいは終わった。

さっき道具を売ってくれた店の人に報告すると、感心してくれたけど余計怖がってた気もする。


仕事はうまくいったけど、思ったほど存在値は増えなかった。

たったの2だ。

なんだか損をした気分だ。

何がいけないんだろう。

とりあえず、ホールに戻ってライレさんに呪石を渡し、報告をすると原因を教えてくれた。

「金物屋から怪しい奴が来てるから助けてくれって依頼が来てたぞ。掃除人がどう見ても殺し屋だって。一家皆殺しになるんじゃないかって心配してたぞ。ちゃんと説明しておいたけどな」

なるほど。

つまり僕は感謝されてなかったんだ。

難しいなあ。

「似合わないことはするもんじゃねえよ。グライムズさん」

僕には何が似合うんだろう。

ああ、ライレさんからはきっちり60の存在値と昨日よりだいぶ銀貨が多めな手のひらいっぱいの報酬がもらえた。

ライレさんの場合、感謝っていうんじゃない気がするけどね。


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