結末
結衣はこうして、復讐の最後の相手、人間の王のところにたどり着いた。
行く先を阻む者はもうどこにもいない。全ての邪魔者を消し去った。
兵士も同郷の勇者も、クロウドも...。
「さっさと殺してしまったらどうです。念願の復讐がやっと果たせるのですよ?それとも、感傷に浸っているのですか?」
後ろからの声。すぐに振り向くがそこにはシャムがいるだけで他に誰もいない。
気のせいではない。それは間違えようがないと確信しながら、前を見る。
目の前に顔があった。
「ーーーっ!」
流石の結衣も動揺を隠せず、すぐさまその場から飛び退く。
「そんなに驚かなくてもいいじゃないですか?...この口調も疲れたな」
そいつは紛れもなく先ほど灰になった筈のクロウドであった。
「やけに呆気ないと思ったわよ。でも、私の前に立ちはだかるのなら容赦しないから」
結衣も本気を出していなかったのか、先ほどまでよりも早いスピードでクロウドに近づき、攻撃を仕掛ける。
「はぁ、聞き分けの悪い奴だ。さっき、言ったろうがよ。あの王を殺したきゃ殺せ。前回の俺は全力で負けたんだからよ。邪魔する気なんてさらさらねぇよ」
フェイントやら魔法やらの手数の攻撃の全て、何もかもを無力化しながらクロウドは続けた。
「俺はこの結末を見てここから去るつもりなんだよ。さっさと殺せ。出来ないならさっさと帰れ」
「...分かったわよ」
クロウドの横を通り過ぎ、王の正面に立つ。
「命乞いも何にも無しなのね」
「ふん、しても無駄なことは分かってる。
敵わないことも全てな。さっさと殺れ。貴様にはその権利がある」
少しの沈黙があった。
結衣が何を考えていたのかは結衣しか知らない。
拍子抜けだと思ったかもしれない。やっと復讐が終わると考えたのかもしれない。クロウドの意を探っていたのかもしれない。
感傷に浸っていたのかもしれない。心に整理をつけていたのかもしれない。
結衣の頰に涙が伝った。
そして、刀に手を掛け、結衣は....。
あとはエピローグですね




