同郷
なんやこんやゆっくりゆらゆらしてたら、一ヶ月たってました。すみません。これから更新ペースあげる...つもりです
「待てぇぇぇぇぇぇ」
そんな声が大広間に響く。
しかし、ユイもシャムも足を止める気配はなく、既に扉にと着こうととしている。
「お前はそれでも日本人かぁぁ」
ユイにとってはとても気になる単語が聞こえ、ついつい声のした方へと顔を向けてしまうのだがそこには色とりどりの髪色をした日本人だろうか?が四人いる。
「赤は情熱の証。赤城 一」
赤色の髪の暑苦しいまではいかないがそれなりに熱い情熱の持ち主なのだろう。
「青は冷静の証。二宮 青藍」
青色の髪に真面目そうな顔。このパーティのブレーキをしていそうではある。
「黄は幸せの証。黄海ーー」
よくある戦隊モノのお決まりの挨拶。何故言っている間に攻撃しないのだろうかという疑問を持ったことは多いだろう。
しかし、初めて見るのであれば確かに最後まで見ようという気にはなるのである。
結衣もそんな心境ではあったが途中で自分の立場とバカをする勇者を見ながら、気づいてしまった。
「御託はいいのよ。異世界に来て周りにちやほやされていい気になって、調子にのるんじゃないわよ!」
だから、最後まで見るのをやめた。大声を出して自己紹介を止めた。
「同郷のよしみで今引けば、命はとらないであげる。早く決めなさい」
久しぶりの同郷の人間。流石の結衣であっても懐かしくあり、哀れに思う。この子たちも騙されているんだと。
「う、うるさい。俺らのカッコいいシーンだったろうがそれを中断させておいて、命を乞えだぁ?ふざけんじゃねぇぞ。お前、それでも日本人かぁぁ」
「忠告はしたわよ?」
威勢よく啖呵を切った、自己紹介の済んでいなかった緑色の髪の青年は異世界にてその短い一生を斬首で幕を閉じた。
「きゃあぁぁぁぁ」
隣の黄色い髪の女子は堪らず悲鳴をあげるが、それも直ぐに消える。
残った二人は動けなかった。四人いた勇者の二人の命があっという間に同郷の高校生に刈り取られたことが相当のショックであった。
調子に乗っていたのは間違いない。驕っていたのも間違いない。それでも人類最強とも言える職業である勇者に敵うはずない。勝てるやつなどいないと思っていた。
それが間違いだった。いや、ここまでくると運が悪かったとしか言いようがないのだろう。強いていうならば結衣は苦しまないように気を使って殺そうとしたことが唯一の幸運だろうか。
「悪いわね。こんな世界に救いなんて存在がしないのよ」
周りの兵士は逃げ出す。実力の差がはっきりし過ぎた。
結衣は急ぐ。自分の大切な人を殺した王の下へと。




