純白の刀
どうしてこうも、戦闘描写は難しいのか
「何をそんなに驚いているのさ?....あ、そうかそうか。誰にも言って無いんだった。これはね、僕の作った魔族。結構時間がかかったけどね、おかけで面白かったかな?」
つまりは、いま倒した魔族は魔王の作った魔族であるということ。
「あ、もちろん、さっきのやつは自分のことをただの一魔族で僕が作ったなんて知らないよ?」
「お前は、何がしたいの?」
「ん?そろそろ気づいてると思ったんだけどなぁ。僕は僕が楽しめればそれでいいんだ。
このつまらない世界をね」
「やっぱりあなたはこの世には相応しくない。というより、存在する必要もない。消えろ」
怒りが頂点に達し、見なくても皮膚で生存本能で理解できるような殺気で辺りを覆い尽くしていく。
しかし、魔王はもちろんのこと、ピクリともせず、愛想笑いを浮かべる。
両者は無言だったが、愛想笑いを浮かべたままの魔王はやがて、小さく手招きをする。
「っ!この糞野郎」
手には、刀身が黒光りする美しい刀を手にしたままで魔王へと近づき、刀を振り回す。
もちろん、変に振り回しているわけではないが、魔王は鼻唄でも歌いだしそうに小さく軽く、さばいていく。
「ふふ、楽しいねぇ?」
「まさか?楽しいわけがないでしょ」
楽しそうな魔王に対し、ユイの顔はというと、少し焦りの表情を浮かべていた。
(クロ。少し速くできる?)
『それは我の力どうこうではないだろう?まぁ、力は貸す。それをコントロールするんだな』
「なら、ここから速さも精度を上げる」
「楽しみだね!」
思いきり横に振り抜き、一旦距離をとり、力を引き出す。
目を少し見開き、体勢を低くし、刀は帯刀するように、足に力をいれ一気に加速する。
魔王も流石にその刀が自分に降り下ろされる瞬間に剣を生み出す。
カキンとなったと思えば、すでにどちらも次の行動へ移り、打ち合いになる。
右へ左へ上から下へ、あらゆる方向からの剣技であったが、あと一歩というところで魔王には届かない。
決め手が足りない。
「流石は攻撃に特化した龍が背後にいるだけはあるね。んじゃ今度は少しこっちからもいかせてもらおうかな?」
攻守は交代した。
少しの攻防をするが、ユイの皮膚には所々に赤い線が通っている。
守りも足りない。
「あと一本この戦いについていけるのがあれば」
別に作れないわけではないが、どうしても、耐久力などを考えると期待通りのものは作れないのが現状であったが、この戦いについていけるような名剣や名刀がそこらにあるわけはない。
「もう終わりってこ...っ!」
魔王の言葉を遮ったのはユイの望んだ一振りの刀であった。
空から降ってきた刀は純白で自らの漆黒とまさに正反対であった。
『ちっ、忌々しい白神龍め。まぁいい。貴様の大切なやつの刀だ。お前にしか使えないだろう』
その刀を魔王は取ろうとしたが見えない力に阻まれているのか近づけていない。
「はは、まさか、この前の男にここで邪魔をされるとはね」
もう一人の勇者であったタイチのものであった。
「どうして?また、助けてくれるのね」
小さくありがとうと呟き、その刀を手に取る。
「じゃあ、本番といこうか」




