観光
「起きてくださーい」
朝日が昇り始めてまもなくのこと。
そんな声と共に目が覚めた。
「どうしたの?シャム」
視界に最初に入ったのは宿の天井。次いで、シャムの顔が入ってきた。
「朝ですよ?」
朝から無邪気なシャムの顔が眩しい。
ユイはベッドから体を起こして言う。
「...もしかして、町が楽しみで早く起きちゃった?」
「違うもん。いっつも起きるのはこれぐらいだもん」
シャムの言っていることは一応正しい。起きる時間は大体この時間。だが、町のことは楽しみにしていた。
「別に嘘をつかなくていいのに...」
まぁ、もちろんユイにはバレていた。理由は言わずもがな、しっぽである。
「うーん、じゃあ散歩でもいこうか?」
時間もあったので散歩を提案する。
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「わぁぁぁ」
商店街の方はまだやってないと思ったのだが、
それなりに賑わっていた。
「朝早いのにどうしてこんなに賑わっているのかな?」
「そりゃあ、今日から祭りだからな」
独り言を聞かれたらしく、返事が聞こえた。
「それを見にきたんじゃないねぇのか?まぁ、色んなとこで色んなことやってっからよ。退屈はしねぇと思うぜ?」
「へぇ~、そうなんですね。わざわざありがとうございます」
「礼なんていいって。そんなら、うちの近くよってくれや。旨いもん食わせてやるぜ?」
ニタッと笑い、んじゃなと言ってそのおじさんは
去ったのを見送り、二人は歩く。
本当に色々な店がある、そう思いながらそこらを見て歩く。
気になるものを食べ、気になる遊戯をしていると
あっという間に昼を過ぎた
やがて、さっきのおじさんがやってる屋台に
ついた。
「さっきのお嬢ちゃん、こっちへこいよ」
最初は全く気づかなかった。
「さっきはありがとうございます。でもいいんですか?行列になってますよ?」
ここは結構な広さの広場なのだが、そこで屋台をやってるということでおじさんの屋台は結構な行列になっていて、気づけなかったのだ。
「あぁ、いいんだよ。うちの奥さんもやってくれてるしな」
「それにしても混んでますね。それにここでなんかやるんですか?」
「あぁ、ここではな...」
そんなときに違う声が大きく入ってくる。
「みなさま、大変長らくお待たせしました。本日、この中央広場のメインイベントのミス、ミスターコンテストを始めさせていただきます。司会を務めますのは私、メルト。今回の審査官は三名。それぞれ、人、獣、魔と感性も違うであろう方々をこの会場よりランダムにつれて参りました」
「ま、そういうことだ」
そして、おじさんは裏に引っ込み、肉串を数本持ってきた。
「ほれ、食うだろ?」
シャムが嬉々としてそれを受け取りほおばる。
「どう、美味しい?」
「旨いか?」
ユイとおじさんの呼びかけにシャムは
「ん~、まぁ、まあまあかな」
...もう既に言う必要もないだろう。シャムはしっぽをふっている。
「そうか、なら良かった」
おじさんも気づいたようだ。
「それでは、早速、選手の入場です」
最初はミスコンのほうを行うのか様々な格好の女性が続々と舞台裏から現れる。
「ふぅん...!」
眺めていたユイは
急に驚いた顔をし、小さな声で
「ねぇ、クロ。あいつ?」
『そうだ。あやつだな」
まぁ分かるでしょ




