復讐心
お腹へりやした
秘密裏に行われた会談の跡地はボロボロで、もはや、何が存在していたのか、何が起こったのかすら想像が出来ない。
そんな跡地には、王から送られてきた兵士が魔王の兵士より先に着いていた。
「凄いことになってやがるな」
「一体、何がどうなったらこんなことになるってんだよ」
そこに魔族と人族が鉢合わせしていたら、どうなっていたのかは分からない。
「そんなことより、遺体は残ってすらいないだろうが命令がある。確認をしにいくぞ」
辺りを探索し始める王の兵士たち。
数分が経ち、誰もがやる必要性を感じ始めた時に少し真面目な兵士がみてしまった。
特に大きくえぐれている地面のちょうど中央に座っていた人。
後ろ姿しか見えなかったが一瞬で勇者だと分かるほどの存在感だった。
「ゆ、勇者が...」
それがその兵士の最期の言葉だったのだが、その短い言葉は幸か不幸かそこにいた他の兵士にも耳にはいった。
「ば、馬鹿なそんなはずがないだろう」
その場にいた兵士がその声のした方へ慌てて行き言葉を失う。
「く、首が、首と胴体が離れてやがる」
兵士の首と胴体は離れており、一瞬で殺されたのは明らかだった。
そのまま、目線は勇者の方へと向けられる。
ーーーーーーー
時は、兵士の来る少し前まで遡る。
うぅ、うめき声を発しながら意識が戻ったのは結衣である。
「えぇと...。た、太一は?」
しかし、その疑問も記憶が戻るのと同時に解消されていく。極めつけはその手に持っているひとつの物体だった。
「ーーっ!」
声もでなかった。自分が持っているのは手。
関節の長さまでほどしかない手。
それが、太一のものだと気づくまで時間はかからなかった。
「あぁぁぁ。なんでぇ、こうなっちゃったの」
衝撃が強すぎた。結衣の黒かった髪は、元の色の面影も残さないくらい白くなった。
遅れてやって来たのはとある感情だった。
今までに経験したないほどの沸々と燃え上がっていく怒り。復讐心だった。
「絶対に殺してやる」
『いい復讐心だな』
「誰?」
『我か?我は黒神龍だ。そうだな、お前の中で眠っていたんだがな、この通りその復讐心の強さで目をさました』
黒神龍は目覚めた。
『力が欲しいか?』
「欲しい、あいつらを殺せるだけの」
『ふっふ、お前は運がいい。よかろう、すぐにでも封印を解いて出ていくつもりだったが、お前の復讐に興味が湧いた。力を貸してやろうではないか』
結衣は迷わなかった。どんなことがあっても、復讐は遂げる。たとえ命が尽きようとも悪魔に魂を売ってでも、だから
「私はどんな手を使ってでもあいつらを殺さなきゃいけないの。役に立たなかったら承知しないからね」
ギュッと太一の手を握りしめ、決心を決めたときだった。兵士が勇者である結衣の姿を確認したのは。
やっと、自分の書きたい感じになってきた




