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06.カーチャンの開拓史

 僕は母さんの背中に乗って空を飛んでいた。

 

「タカシー、空はどうだい?」

「うん、気持ちいいよー! もっと早く飛んでほしいな」

「よーし、しっかりつかまってるんだよ」

「わあー!」


 すごい速さで風を切って飛んでいく母さん。

 あ、土饅の町が見えるぞ。小さいなあ。

 すると、どこからともなくサイレンの音が聞こえてきた。


「そこのカーチャン、止まりなさい。スピード違反です」

「やばいね、空中警察に見られちゃったよ。タカシ、逃げるからしっかりつかまってな!」

「えええ!? ひゃああああー!」


 そして5分に及ぶカーチャンチェイスの末、警察にあっさり捕まってしまった……。


「まったくもう、あんなスピード出すと危ないよ。まだ若いのに事故したらどうするの」

「すみません……」

「とりあえず免許出して」

「え? 免許って……」

「第一種カーチャン運転免許だよ。もしかして無免許じゃないだろうね」


 免許なんて持ってない……というか飛んでるのは母さんなのに何故か僕が怒られている。

 もしかして僕ピンチ?


「母さん、どうしよう……」

「ごめんねタカシ……母さんもうだめだよ……」


 母さんの頭上でランプが点滅している。

 このまま母さんが消えると、僕は落ちてしまう?

 いったいどうしたらいいんだ……。





「うーん……落ちちゃうよお……」

「タカシ君、大丈夫? しっかりして……」

「むにゃむにゃ……あれれ?」


 僕の顔を沙鬼ちゃんが覗き込んでいた……。

 なんだ夢か……ちょっと一安心。


「あ、起きたね。なんだかうなされてたよ」

「うん……怖い夢見てたみたい。おはよう沙鬼ちゃん」

「おはよ。ところでわらびもちさんは? 一緒に朝食作ろうと思ってたんだけど」


 母さんの布団には誰もいない。

 召喚の時間切れで帰ったから呼びださないとな。


「母さーん、沙鬼ちゃんが呼んでるよー」

「わわっ!? なにか光ってるよ。あ、なにか落ちてきた」


 魔法陣は出現したが、母さんは現れなかった……。

 あれ? どうしたんだろう……。

 昨日の夜、もうすぐ母さんはいなくなると言っていたことが思い返される。

 魔法陣の上に落ちているのは紙だ。

 そこに日本語でこう書いてあった。


――トイレ中。ちょっと待っててね――


「母さんトイレ行ってるみたい」

「そっか、じゃあ待ってていいかな」

「うん。あ、わたがしとうめぼしも呼ぼうっと」

「あ、そうだ。鬼火のこと教えておいてあげないと。あの子たちって太陽の光に弱いんだ。だから呼ぶのは夜だけにしてあげてね」

「そうなんだ。教えてくれてありがとうね」


 そっか、ちょっとさみしいけどしょうがないか。

 とりあえずわたがしを呼ぼう。


「もっきゅー! おはようもきゅっ」

「わたがしおはよー。おいで」

「さきちゃーん」


 沙鬼ちゃんの胸に飛び込むわたがし。

 懐いてるなあ。

 のんびりしていると、部屋のふすまが開けられた。


「おはよー、タカシ。あ、沙鬼ちゃんも来てたんだ」

「わらびもちさん、おはようございます」

「おはよう母さん、いつの間にそっちにいたの?」

「タカシがさっき呼んだ時だよ」


 召喚した直後にトイレに行ったのかな?

 まだ召喚の仕組みがよくわからないや。

 というか母さんの仕組みがわからない。


「じゃあ沙鬼ちゃん、一緒に朝ごはん作ろうか」

「はい! タカシ君、楽しみに待っててね」

「うん、楽しみ」


 母さんと沙希ちゃんは台所へ行ったようだ。

 さて、わたがしと一緒に昨日採った野草の確認でもするか。


「たくさんあるからお金いっぱいもらえるかな。でもこれ怪我とかに効くんだよね。いくつか持ってた方がいいのかな? 使い方わからないけど」

「もきゅっ、わたがし使えるよ」

「え? どうやって使うの?」

「わたがしね、草を食べるといろんな魔法が使えるようになるきゅっ」


 わたがしにそんな能力があるんだ。

 いや、僕の魔力で成長したのかも?

 喋り方もどんどん上手になってるし。


「じゃあどの草がいいの?」

「えっとね……これ! これ食べたら怪我を直す魔法使えるっきゅ」

「じゃあいくつか大事に保存しておこうか。でも腐っちゃわないかな」

「お外に干して乾燥させるきゅー」

「そっか、わたがしは物知りなんだね」

「タカシ君が魔力をくれてるおかげきゅ」


 やっぱりそうなんだ。

 お友達になって召喚できるようになった子は成長していく。

 これからも楽しみだな。

 体が弱いうめぼしもきっと元気になれるぞ。


 この後庭の一角を借りて、野草を天日干しした。

 そうしている間に朝食ができたらしい。

 沙鬼ちゃんが迎えに来てくれて、手をつないで食卓へ向かった。

 朝食はご飯とみそ汁と、昨日も食べた煮物だった。


「わあ、おいしそうだね。沙鬼ちゃんが作ったの?」

「そうだよ。わらびもちさんに教わりながらこのお味噌汁っていうの作ったんだ。こんな食材初めて見たよ。わらびもちさんっていろいろ持ってるんだね」

「そっか、じゃあいただきます」

「うん、わたしもいただきまーす」


 母さんがこの世界の文化に多大な影響を与えている気がするけど、まあいいか。

 母さん以外の手料理って初めてかもしれないのでなんか楽しみ。

 お味噌汁のお味はと……。


「おいしい! 沙鬼ちゃんも料理上手なんだね」

「えへへ、よかった。すごく丁寧に教えてくれたからかな。じゃあタカシ君、あーんして」

「え?」


 沙鬼ちゃんが箸でわらびをつかみ、僕の顔に差し出してきた。

 いきなりなんだろう? なんともドキドキする。


「えっとね、わらびもちさんが教えてくれたんだ。人間って仲良くなりたい相手とこういうことするんでしょ?」

「あ、うん……そうかも……」

「じゃあいいかな? あーんして」

「あーん……」


 仲良くなりたい相手とするというか、仲良くなってからする行為な気が……。

 でも嬉しいからいいか。

 母さんが余計なことを教えたことに少し感謝。


「ど、どうかな? なんかこれ恥ずかしいね……」

「うん、おいしい……」

「そっかぁ、よかった」

「と、ところで母さんはどこ行ったんだろう?」

「あ、そうだ。他の鬼たちにも差し入れするって大きな鍋持って出かけたんだよ」


 あまりにも照れくさいので、母さんの話題を出してごまかすことにした。

 人に料理をふるまうのが好きな母さんらしいや。


「じゃあもうひとつどうぞ。あーんして……」

「う、うん。あーん……」


 結局照れくさいのは変わらなかった。

 沙鬼ちゃんのピンクの肌も少し赤くなっている気がする。

 終始照れながらの朝食となるのであった……。


「おいしかった。ごちそうさま」

「うん、喜んでくれてよかった。じゃあ片づけしてくるね」

「ありがとうね。僕またさっきの庭にいるから」

「じゃあ後で行くねー」


 先ほど野草を干した庭に戻ってみる。

 さすがにこの短時間じゃ乾燥はしないか。


「この草を入れるかばんがほしいよね」

「もきゅっ、わたがしも自分のかばんがほしいの」

「じゃあ母さんに頼んだら作ってくれるかもしれないね。後で頼んでみよう」

「もきゅきゅっ」


 しばらくわたがしとのんびりしていると、沙鬼ちゃんが現れた。


「タカシ君、なんかわらびもちさんがみんなを集めて何かするみたいだよ」

「え? 母さん何をするんだろう?」

「食糧不足解決のためになにかしてくれるらしいんだ」

「そうなんだ」


 何をする気なんだろう?

 母さんってほんと世話好きだなあ。


 そして連れて行かれたのは、雑草がぼうぼうに生えている場所だった

 鬼たちが草抜きをしている。

 あと森から大量の枯れ葉を持ってきているようだ。

 中心には農家のおばちゃん的な格好の母さんが拡声器を手に指示していた。

 やはり母さんが世界観を壊しているようだ。


「母さん、何してるの?」

「あ、タカシ。えっとね、この里には畑がいろいろあるけど、ここの土地って畑作るのに向いてないみたいなんだよ。母さんの魔法で土を豊かにしようと思ってね」

「なるほど……。それで食糧不足も解決するんだ。僕も手伝おうか」

「あ、タカシは昨日採った野草を届けてきなよ」


 そういえば仕事は早く終わらせた方がいいか。

 でも大丈夫かな?


「でも母さん、召喚時間切れたら消えちゃうよね」

「ああ、それなんだけど召喚時間の延長しておくれ」

「え? どうやるの?」

「その杖振りながら、適当に呪文となえてくれたらいいよ」

「うーん? えっと……なんかうまいことなーれ」


 すると、杖からなにかしらの光が出て母さんを包んだ。

 ほんと適当にしたのにこれでいいの?


「お、なんかいい感じになったよ。ありがとね」

「うん、それでいいんだ……。じゃあ僕は土饅の町に行くね」

「うん、気をつけるんだよ。ピンチになったらちゃんと呼ぶんだよ」

「わかった、いってきます」


 では今日はわたがしと冒険しよう。

 あ、でも道わかるかな……。


「タカシ君、わたしもついて行っていい? この里の場所ってわかりにくいところにあるし」

「それは助かるけど、人間の町に行って大丈夫なの?」

「うん、わたし変化の術使えるんだよー」

「そっか、じゃあお願い」


 というわけで、沙鬼ちゃんと一緒にお出かけとなった。

 もしかしてこれってデート?


「タカシ、しっかりね。沙鬼ちゃん、タカシをよろしく」

「はい!」


 母さんは親指を立てて、僕らを見送った。

 よし、なんだかわくわくするぞー。

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