29.カーチャンは続くよどこまでも
あの青鬼襲撃事件から半年が過ぎた。
あの後青鬼は全員元にもどり、里へと戻って行った。
以前は赤鬼と青鬼で仲が悪かったようだけど、これからは交流が深まっていくらしい。
仲良くするっていいことだよね。
僕はと言えば、母さんをこの世界に留めるのに全魔力を注いでいるため、それ以外は普通の人間と同じになってしまった。
簡単な術すら使えない。
でも、元の世界にいた時と違って健康な体がある。
それだけで満足だ。
母さんも術が使えなくなっているが、本人は何も気にしていないようだ。
いろんな家庭を回って料理を教えたり、カーチャン学校を設立して子供たちと仲良くやっている。
幸せすぎて怖いわあ。が口癖となっているので、きっと幸せなんだろう。
もっともっと幸せになってほしい。
ちなみに、僕も勉強を教える手伝いをしている。
ほんとに学校の先生になっちゃおうかなあ。
わたがしとうめぼしとさくらは、この里にのんびりと住みついている。
自由にしていいと言ったら、僕と一緒にいたいと言ってくれた。
だから、召喚できなくなっても何ら変化なしだ。
わたがしとうめぼしは弱くなったけど、さくらが術を教えているので、そのうち前より強くなるかもしれない。
そして沙鬼ちゃんとは……あのあとすぐに結婚式を挙げた。
人間と鬼の結婚は初らしいけど、だれもが祝福してくれた。
青鬼の里からは涯炎さんが来て祝ってくれた。
おかげで幸せいっぱいだ。
さらにもう一人……膨らんだ沙鬼ちゃんのおなかの中に僕たちの子供がいる。
「あ、そこに石があるよ。気をつけて歩いてね」
「大丈夫。タカシ君ってば心配しすぎだよ」
「だって沙鬼ちゃんとおなかの子になにかあったら……」
「それだけ心配してくれてたら何も起きないよ」
沙鬼ちゃんの体調はすこぶるいいらしい。
だから散歩した方がいいってことで、毎日歩いてるんだけど……。
本当に大丈夫なのか不安で仕方がない。
健康な子であってほしいんだ。
「僕ちゃんとお父さんになれるかなあ」
「大丈夫だよ。親に愛された子はね、自分の子にも愛情を注げるんだって。タカシ君にはあんなに素敵なお母様がいるんだから」
「そうだね……。がんばっていいお父さんになるよ」
「うん、わたしも一緒に頑張るね」
母さんは初孫を自分の手で最初に取り上げると張り切っている。
何気に産婆さん経験もあるようだ。
僕としても母さんにしてもらう方がありがたい。
「ねえタカシ君、この子が大きくなったらタカシ君の故郷に行ってみたいな」
「えっとそれは……」
「だめなの?」
どうしようかな……夫婦に隠し事は無しだよね。
でも違う世界から来たと言って信じてくれるんだろうか?
そういえば……母さんのおかしな話を沙鬼ちゃんは全部信じてくれていた。
だからきっとこの話も信じてくれるだろう。
「沙鬼ちゃん、ちょっと長くなるけど僕の話を聞いてくれるかな?」
「もちろんだよ。じかんはたっぷりあるし……タカシ君の話ならずっと聞いていたいもの」
「じゃあ……。昔々……こことは違う世界に体の弱い男の子がいてね……」
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。




