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25.襲撃計画

「ではタカシよ。その妖力を借りるぞ」

「うん、どうぞ」


 僕が持つ杖の上にさくらはちょこんと乗っかる。

 後ろ足だけで立ち、前足を天に掲げてなにかの呪文を唱え始めた。

 なんていうか可愛い。

 僕は多少疲れてもいいから、たっぷりと妖力をあげるとしよう。


「退魔の陣……展開!」


 さくらは少女のような可愛い声で、かっこいい言葉を言った。

 そして猫塚が光に包まれていく。


「よし終わったぞ。妖力を多めにもらってしまったが大丈夫か?」

「うん……大丈夫。わたがし……おねがい」

「まかせて! もきゅもまじっきゅあー!」

「ほう、なかなかに器用な兎よ」


 わたがしの魔法で少しは回復するが、やはり消費の方が激しい。

 まあ……あとは帰るだけだし大丈夫だろう。


「ありがとねわたがし。それで……ここは今どうなってるの?」

「悪しき心の者が近寄れぬ結界をかけた。これが在ることに気づかず通り過ぎるじゃろうて」

「そっか、じゃあ子猫ちゃんたちは安全だね」

「うむ、感謝するぞ」


 さあ、帰るとしようかな。

 青鬼さん達に終わったと伝えなくっちゃ。


――うめぼしにまかせるぴー。空中で偵察してるからみんなの位置もわかるっぴ――


 あ、いないと思ったら偵察してくれてたんだね。

 ありがとう。お願いするよ。


 しばらくすると涯炎さんがやってきて、安全な場所まで送ってもらうことになった。


 昔倒された悪い大妖怪の残した瘴気で悪くなってしまった青鬼たち。

 僕とうめぼしの力で3人だけ正気を取り戻したけど……里に戻って大丈夫なのかな?


「涯炎さんたちはこれからどうするんですか?」

「里の者を元に戻せるよう、尽力する」

「僕もできることがあれば協力しますが……」

「あ、わたしもです」

「我らが里のことは我らで解決する……と言いたいところなのだが、お前たちにはこれを話しておかねばなるまいな」


 涯炎さんはひどく真剣な顔で僕と沙鬼ちゃんを交互に見てきた。

 なにかとっても重要な話のようだ。


「青鬼の里では、赤鬼の里を襲撃し……滅ぼす準備を進めている」

「え!?」

「そんな……」

「先ほどの猫塚の件もその作戦の一環らしい。詳しくは知らぬが、悪しき人間に協力をさせたとか」

「見世物小屋の人かな……」


 さくらの大切なもの……子供たちの亡骸に呪いをかけて脅し、芸をさせていたやつらだ。

 いったいどんな協力をしたんだろうか。


「人間達に赤鬼の里の場所を教え、襲撃させるよう仕向けたと聞く。どうなったかは知らぬが、そこの娘が無事ということは大丈夫だったのか?」

「あ、はい。なんとか撃退できたみたいです」

「そうか、さすがは我らの同族。人間にひけはとらぬようで嬉しいぞ」


 撃退したのは母さんだけど……ややこしくなるので黙っておこう。

 あの襲撃も青鬼が仕向けたことだったようだ。


「そのような争いに儂と子供たちを巻き込んだか……。あの人間どもは許せんな」

「さくら……」

「タカシよ、すまぬが少しだけ別行動をとらせてくれ。やつらだけは許せぬ」

「えっと……僕も行くよ」

「お主は赤鬼の里へ戻り、襲撃に備える必要があるじゃろう」


 たしかに青鬼の襲撃が一番重要な問題だ。

 でもさくらが何をするか心配なんだ……。

 見世物小屋の人を皆殺しにしそうな勢いで怒っている気がする。

 これが殺気というやつなんだろうか?

 どうするべきか……。


「私もついて行くよ」

「えと……母さん?」


 いつの間に現われたのか、母さんはコートと帽子? をかぶってサングラスを着けている。

 一言で言うと……昔風の探偵というかスパイというか。


「タカシの母親か。儂1人で問題ないぞ」

「いいや、子供を人質に取るなんて許せないんだ。嫌と言ってもついて行くよ」

「ならば勝手にするがいい……」

「そうするよ」


 さくらはそっけない態度だが、なんとなく殺気が薄れた気がする。

 母親同士、通じるものがあるのだろうか。

 とりあえず母さんがいれば、血なまぐさいことにはならない気がする。


「じゃあ行ってくるから、タカシは沙希ちゃんを守るんだよ」

「うん、さくらをよろしくね」

「任せときな。じゃあ行くよ、乗りな!」

「うむ」


 母さんがそこらに落ちていた大きな丸太にまたがると、それが浮いた。

 なんら疑問にもたず後ろに乗るさくら。

 そして異様なスピードで丸太は走って行った。

 バイクのエンジンのような音が聞こえたのはきっと幻聴だろう。


「なんと凄まじき術の使い手よ……」

「タカシ君のお母様はすごいんです」

「親子そろって見事な使い手なのだな」


 なんか褒められたからよしとして……僕は僕のできることをしよう。


「それで涯炎さん。赤鬼の里を襲撃する日は決まってるんですか?」

「まだわからぬが、すぐにでも行こうとする勢いだ。我らが遅らせようとは思うが、おそらく無理だろう。迎撃の準備を整えておいてくれ。悔しいが……この戦は青鬼が負けるべきだ」

「わかりました……。でも涯炎さん、無茶して仲間の青鬼さんに倒されないようにしてくださいね」

「うむ……」


 涯炎さんはなにかを決意した目をしている。

 また会えるといいな……。

 この後、青鬼の規模とかを聞いてお別れをした。


「沙鬼ちゃん、急いで戻ろう」

「うん……。これは鬼たちの問題だけど、タカシ君も協力してくれるの?」

「もちろんだよ。お友達だもん。母さんだって間違いなく手伝ってくれるしさ」

「ありがとね……タカシ君」

「うん!」



 そんなわけで休憩もそこそこに大急ぎで帰った。


 里に戻り、沙鬼ちゃんと一緒に沙鬼ちゃんのお父さんに話を伝えに行くと、お父さんは鬼の長のところへ報告に行った。

 難しい話は大人たちに任せるとしようかな。そもそも混ぜてもらえないし。


「タカシ君、どうしてようか。なにかできることはないのかな?」

「僕はとりあえずわたがしが使う草を一緒に取りに行くよ」

「うん、さっき使いきったもきゅー」

「そっか、ここへ急いで帰るのにたくさん回復してくれたもんね。じゃあわたしもそれ手伝うよ」

「ありがともきゅー」


 わたがしの回復はきっとみんなの役に立つはず。

 準備しすぎるくらいがいいだろう。

 でも草集めの間、沙鬼ちゃんはずっと不安そうな顔だ。

 それも仕方ないことかな。


「ねえ沙鬼ちゃん、きっと大丈夫だよ。僕だけじゃ頼りないけど母さんもいるし……」

「うん……でも青鬼ってわたしたち赤鬼よりだいぶ強いんだ」

「そうなの?」

「青鬼ってね、瘴気にやられてから強さを求めて鍛えてるんだ。それに比べて赤鬼は……平和ボケしちゃったって言うのかなあ。戦いの経験が少ないんだよ」


 鬼同士で戦えば負ける可能性が高いのか……。

 これは僕と母さんにかかってるんだろうか?

 母さん……今回はおかしな術を好きなだけ使っていいから里を救ってほしいな。

 そして僕も……。


「沙鬼ちゃん、沙鬼ちゃんは絶対僕が守るから心配しないで」

「タカシ君……」

「わたがしもいるきゅっ!」

「うめぼしもだぴっ!」

「みんな……ありがとうね。なんだか大丈夫って気がしてきたよ。


 そして草取りを終え、沙鬼ちゃんの家に帰った。

 沙鬼ちゃんのお父さんはまだ戻っていない。長の家で長く話をしているんだろう。

 僕の母さんもまだのようだ。

 さくらと何をしているのか、心配だなあ。


「ふう……今日はがんばったから早く眠っちゃいそう……」

「さくらちゃん助けるのにがんばったもんね。夕飯を簡単に作ってくるから休んで待ってて」

「うん、ありがとうね」


 そう言って沙鬼ちゃんは台所へ向かって行く。

 でも……何故かすぐにお盆を持って戻ってきた。


「タカシ君、ご飯作ろうと思ったら台所に料理がおいてあったの。あとメモがあって、『チンして食べてね』って書いてあるんだ。チンって何だろう?」

「母さん料理作っておいてくれたんだ」

「お母様いつの間に……」


 そんなことできるタイミングあっただろうか?

 出発前に作っておいたのかもしれないな。

 でもチンって……この世界にレンジはないよ。


「うめぼしに任せるぴー。チンっていうのはね、あたためることだってお母さんに教わったっぴ」

「あ、そうなんだ。じゃあお願いするね」


 肉じゃがらしきお皿の周りをうめぼしとコウメ、4体の鬼火が回り始めた。

 便利な子たちだなあ。

 料理はあったかいほうがおいしいもんね。

 そして1分ほど待つと……。


「チーン! できたっぴー」

「ありがとね、うめぼし」

「いい匂いだねえ。タカシ君、これなんて料理かなあ」

「肉じゃがって言うんだ」

「そっかぁ、今度お母様に作り方教わろうっと」


 というわけで肉じゃがは美味しくいただいた。

 沙鬼ちゃんの作る肉じゃがも食べてみたいな。


 そして満腹になると、眠気が一気に襲ってきて床についた。

 鬼のことは心配だけど、とりあえ寝よう……。

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