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24.猫カーチャン

 猫塚にて呪いを解くまであと1歩なのに……呪いの正体っぽい黒いもやに邪魔されている。

 今はうめぼしが動きを止めてくれているけど、いつまで持つかはわからない。

 こいつを倒すためには、母さんの力を借りるしかなさそうだ。

 しかしその時……空中になにかが現れた。

 もしかしていつものお告げをくれる謎の人影かな?


『タカ……少年よ、今日も知恵を授けよう』

「いつもありがとう、通りすがりの物知りおばちゃん」

「わあ……タカシ君っていろんな知り合いがいるんだね」


 今日の半透明で浮いている物知りおばちゃんは、着物を着ていた。

 マスクとサングラスをして、頭はおばちゃんパーマ。

 そして髪からは猫耳がぴょこんと出ている。

 相変わらずだれかわからないのはお約束。


『いつも召喚する時に何が出ていたか思い出すんだよ』

「出てるって……魔法陣?」

『そう……いつもは自動で出ているが、少年が自らの魔力で描くこともできる。何が出るかはお楽しみ』

「僕が自ら……」

『そう。時間がないからしっかりね。もうすぐ清めの塩の結界は破られる』


 見ると、地面の盛り塩が少しずつ散らばっている気がする。

 たしかに急がなきゃ……。


「やってみるよ、ありがとう。通りすがりの物知りおばちゃん」

『がんばってね。あともうひとつ予言を授けよう。今日の夕飯は肉じゃがだよ……』

「にんじんがはいってるもきゅっ」


 そして謎の物知りおばちゃんは消えていった。

 なんかもう定番だなあ。

 よし、やってみようか。


 魔法陣を描く……これだけ言われてもきっと何を描けばいいかさっぱりだっただろう。

 しかしヒントはさっき猫叉さんがくれた。

 僕の杖に猫叉さんの毛が飛んできたということは、この杖の魔法陣をかけということだ。

 魔力で魔法陣をかくようなので、地面でなくとも空中で大丈夫だ。

 僕は猫塚の前で杖に魔力を込め……魔法陣を描いていく。


「タカシ君……なんだかかっこいい……」

「もきゅきゅっ」


 普段の召喚の魔法陣は見えないようだけど、今書いている魔法陣は見えるようだ。

 正直自分でもかっこいい気がしている。

 そして空中に魔法陣が完成した。

 何が出るかはお楽しみらしいけど……やってみよう!


「召喚!」


 僕の声と同時に、魔法陣が光り出す。

 そして……たくさんの猫が現れた。

 さっきの黒猫もいて、今度は半透明じゃない。


「にゃにゃにゃにゃにゃー!」

「にゃおーん!」

「グヌヌヌヌ……」


 猫たちは黒いもやに向かって飛びかかっていく。

 その中に1匹、さっきの物知りおばちゃんを小さくしたようなのがいるけど……見なかったことにしよう。

 黒いもやは攻撃に耐えきれなくなったのか、地面へと戻っていった。


「今のうちだよ。沙鬼ちゃん、清めの水を使って」

「うん、やってみるね」


 埋められている何かに、沙鬼ちゃんが呪文を唱えながら清めの水をかけていく。

 呪文はヨロズさんが古い本を呼んで調べてくれたやつだ。

 これで呪いが解けるはず……。


「グオオオオオオンッ!」


 地面を震わせて恐ろしい声が響いた。

 これは苦しそうな声……?

 その悲鳴が消えると……あたりに漂っていた嫌な気配が消えていった。


「タカシ君、成功したのかな? 呪いが解けたこれは……骨?」

「猫さんの大切なものはこれみたいだね。ここはお墓なのかな……」

「うん、これで猫さんも自由になれるよね」


 ふと……誰かに呼ばれている気がした。

 僕が描いた魔法陣はまだそのまま……ここから聞こえるようだ。

 まだなにか召喚できるのだろうか。


「召喚……」

「にゃおーん!」


 杖を持ってつぶやくと、魔法陣から桜色の猫が飛び出してきた。

 尻尾が2つある……猫叉さんだ。

 そして魔法陣はすーっと消えていく。


「呪いが解けたと思うたら、ここに通じる道が現れた。便利なものよのう」

「猫さん、逃げてきたんだね」

「うむ、やはりお主に頼んで正解じゃった。おや?」


 猫叉さんは、さっき現れた猫たちに気づいたようだ。

 その猫たちはと言うと、こちらには気づかず勝利のポーズを決めている。

 かあさ……じゃなくて謎のおばちゃんっぽい猫が演技指導をしているようだ。


「お前たち……」

「にゃお? にゃにゃ!」

「にゃーにゃー!」


 猫たちが猫叉さんに気づき、お互いに猛ダッシュで近づいた。

 そして嬉しそうにじゃれあう猫たち。

 知り合いなのだろうか?

 しばらく見守るとしようか。


「猫さんたちうれしそうだね。あの猫さんたちはなんなのかな? タカシ君が呼びだしたんだよね?」

「うん……でもよくわからないままに呼んじゃったから……」

「そっか……すごく仲良さそうだし、猫さん泣いてるように見える」


 たしかに猫叉さんの瞳はうるんでいるように見える。

 それだけ仲がいいってことなのかな?


「呼んだのはそこのタカシのようじゃが……お前さんが案内してくれたんじゃな。ありがとう」

「どういたしまして、それじゃあ邪魔ものは消えるね」


 猫耳でコスプレしたっぽい小さなおばちゃんはすーっと消えていった。

 お遊びで現れたのかと思ったけど、なにか意味があって出てきたみたいだ。


 それからしばらく猫たちはじゃれあって……猫叉さん以外の猫は消えていった。

 そして僕の元へ戻ってくる。


「待たせてすまぬな。まさかこんな形で我が子たちに再開できるとは思わなんだ」

「あ、猫さんのお子さんたちだったんですね。どこから来たんだろう?」

「黄泉の国かのう……。あの子たちは儂と違って普通の猫。だいぶ前に死んでこの猫塚に埋まっておる。お主はそれを呼んでくれたのじゃ。見こんだ通り凄まじき力よ」

「いえ、僕の力だけじゃなくて……」

「それも含めてお主の力よ。誇ってよいぞ」


 母さんはここに猫叉さんの子供がいるって知ってたんだろうか?

 きっとそうかな……猫叉さんと子供たちを会わせてあげたかったんだろう。

 やっぱりすごいや……。


「さてタカシにそこの娘……名は何という?」

「沙鬼です。無事助かってよかったです。でも以前とイメージが違いますね」

「あれは屈辱的な演技指導をされておったのじゃ」

「そうでしたか……大変でしたね」


 見世物小屋ですっごく可愛かったからなあ。

 沙鬼ちゃんはあの時の猫叉さんを気に入っていたので、少しがっかりしているかもしれない。


「無事助けてもらったので構わぬ。今からこの石を元に戻すのを手伝ってくれるか?」

「はい」


 墓なのに開いた状態だから、早く綺麗に戻さないとね。

 猫叉さんの指示通りに石を積んでいく。

 この形には術的な意味があるのかもしれない。


「それより猫さん、また荒らされたり呪いかけられちゃうんじゃ……」

「そうさのう……結界を張って守りたいが、儂の妖力も衰えているようじゃ。どうしたものか……」

「もきゅもきゅー」

「ふむ……そうか」


 わたがしがいつものように鳴いただけなのに、猫叉さんはなにか納得したようだ。


「タカシよ。わしもお主と契約がしたい。この力を貸す代わりに……わしにも力を分けてくれ」

「いいんですか? 僕としては大歓迎ですが」

「うむ。お主の力を借りればこの子たちは守られる」


 猫叉さんを僕が召喚できるようになるみたいだ。

 妖力も知識もすごそうだし、僕としては大助かりだ。


「ではえっと……猫さんの名前はなんでしょうか?」

「これまでたくさんの名前を付けられたが……どれもしっくりこなかった。お主が新たに名付けてくれて構わぬ」

「じゃあ……」


 猫叉さんはピンクと白と黒の三毛猫って感じの見た目だ。

 その中でもピンクが綺麗で目立つ……よし決めた。


「じゃあ名前はさくらもちでどうでしょう」

「餅は余計じゃ、さくらでよい。それに敬語も使わなくてよいぞ。よろしくな、タカシ」

「あ、うん……」


 すごい勢いで餅を否定された……。

 まあいいか、猫叉さんの名前はさくらだ。

 僕が杖をかざすと、さくらは光に包まれて僕の左腕に『猫』の文字が浮かび上がった。

 左腕には母さんの印もあって、『母猫』と書いてあるようにも見える……。

 このままお友達が増えていくと、僕の体って文字だらけになるのだろうか?

 まあいい……とりあえず初召喚だ。


「さくら召喚!」

「にゃおーん!」


 可愛い鳴き声を上げてさくらが現れた。


「さくらさん、今の現れ方すごく素敵です」

「そうか? 沙鬼よ、お主も敬語は不要。時々であれば、こないだのように可愛がってくれても構わぬぞ。それっ」

「わああ……さくらちゃーん」

「にゃごにゃご……」


 さくらが沙鬼ちゃんの胸に飛び込んで甘えている。

 きっとじゃれるのも好きなんだな。

 沙鬼ちゃんが大喜びしているので僕も嬉しい。

 しばらくその微笑ましい光景を見ていた。

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