表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/29

22.鬼の角

 次の休憩場所へも、問題なく到着した。

 少し休んで、これから猫塚へ向かう。

 ここからは危険がありそうなので慎重にだ。


「タカシ、母さんは消えてるね」

「え? うん……」

「そいっ!」


 母さんが消えた……。

 これもなにかの術かな。


「お母様はいろんな術を使いこなせるんですね。わたしもその術練習してるんですがなかなか……」

「コツがあるんだよ。今度教えてあげるね」

「ぜひお願いします」


 声は聞こえるけど……そこに人がいるようには全く思えない。

 きっとすごい術なんだろう。

 僕と沙鬼ちゃんもそれが使えれば、簡単に猫塚に行けたのになあ。


「じゃあ母さんはいないものと思ってね。がんばるんだよ」

「うん、がんばるよ」

「はい、お母様」


 というわけで、今からは沙鬼ちゃんと2人で冒険だ……ということにしておこう。

 目立たないように早駆けの術は使わない方がいいかなと思ったが、早駆けの術をかけた状態で歩くという手段もあるらしい。

 付近に警戒しながら歩いて行く。


「ねえうめぼし、空から偵察してもらえるかな? でももし危険だったらすぐ降りてきてね」

「わかったぴー。実はうめぼしね、透明になれるんだよ」

「そうなんだ、すごいんだね」

「いってくるぴー」


 うめぼしが上に登りながらすーっと消えていった。

 なんだかお化けっぽいなあ。


「そうだったよ。鬼火ってね、昼間は消えてるでしょ。だからあの術を普通に使えるんだよ」

「なるほど、得意な術なんだね」


 うめぼしが強くなって、昼間も活動できるようになったおかげで大活躍だ。

 念話もできるはずだし、これで安全に行けそうだ。

 でも油断はせず……慎重に行こう。


――たかしくん、向こうの方に青い鬼さんがいるの。でもなにか変だぴー――


 少し進むとうめぼしから連絡が来た。

 どんな風に変なのかな?


――なんかね、2人の青鬼さんが角のない青鬼さんをいじめてるように見えるの――


 角のない青鬼?

 もしかして一昨日僕らを襲った青鬼だろうか。

 沙鬼ちゃんにも説明しつつ、うめぼしに誘導してもらって近づいてみる。

 岩陰から様子を伺うと……。


「おい角なし、何度も言わせるな。早く角を折ったやつを倒しに行け」

「1人で行って勝てるわけもないだろう。それに怖いんだ……」

「ふん、角を折られて腑抜けたか。そんな奴は死んだほうがマシだ。人間に殺されに行くか、今ここで我らに殺されるか……好きな方を選べ」


 なんだかかわいそうな状態となっている。

 鬼が角を折られるのはかなり屈辱的なことなんだろう。


「あの青鬼はやっぱりわたし達を襲った鬼だね」

「みたいだね。ねえ、折れた角って元に戻せないの?」

「凄腕の治療術師さんならできるかもしれないけど……鬼にはいないかなあ」

「そっか……」


 母さんならできるだろうか?

 なんとなく……ごはん粒でくっつけそうな気がする。

 それはちょっとかわいそうかな。


「なんだかかわいそうだから助けようか。角の折れた鬼は弱気になってそうだからお話できるかも」

「そうだね。じゃあまたわたがしがある程度弱らせてくれたら、わたしが眠らせるよ」

「もっきゅー。今日はさきちゃんが捕まってないから余裕っきゅ」

「でも2匹いるからね。うめぼしにもなんとかできないか聞いてみる」


 うめぼし、青鬼の片方を倒せるかな?


――うーんとね、僕が鬼たちの気をひくから、わたがし先輩に両方倒してもらうのがいいと思うっぴ――


 なるほど。

 じゃあ合図したら頼むよ。


「わたがし、うめぼしが気をそらせてくれるから一気に倒しちゃって」

「わかったもきゅー」

「じゃあ僕の杖に乗って、魔力をあげるよ」

「みなぎるもきゅー!」


 わたがしに魔力をチャージしつつ……。

 うめぼし、準備できたからお願い。


――了解だぴー! 火の粉の術ー!――


 すると空中から赤いなにかが出現して降ってきた。

 透明なうめぼしはあの位置にいるみたいだ。

 その火の粉は青鬼たちに降り注ぎ……。


「あちちちち! な、なんだこれは?」

「人間どもの襲撃か? くうっ……上か!」

「この程度の火など……水膜の術で……」


 角のない鬼も巻き込まれて熱がってるけど、まあ仕方ないか。

 青鬼たちが上を向いている今がチャンスだ。

 わたがしへの魔力チャージもきっと十分だろう。


「たかしくん、ぼくの体を後ろに引っ張ってみてほしいもきゅっ」

「ん? こうかな……」


 わたがしの体を引っ張ろうとすると、やけに力が必要だ。

 杖から出る魔力がわたがしを引き戻そうとしているみたい。

 例えるなら……ゴムがついたわたがしを引っ張ってる感じ?


「たかしくん、はなしてー」

「よし、いくよ!」

「わたがしカタパルトー!」


 わたがしが勢いよく吹っ飛んでいった。

 僕も戦闘に参加した気分でちょっと嬉しい。


「ぐおおおおっ!?」

「わたがし三角跳びー!」

「ぬおおおおっ!」

「勝利だもきゅっ!」


 なんかあっさり勝利したようで、青鬼2人は倒れた。

 気絶しちゃったようで、沙鬼ちゃんが眠らせるまでもなかったようだ。

 後に残るのは、角の折れた青鬼のみ。

 話しかけてみよう。


「あの……こんにちは」

「む? 人間……式神使いか。仲間を倒したのは貴様らか? というか……一昨日我の角を折った小僧ではないか」

「ちょっとお話をしたくて……いいですか?」

「ふむ? かまわんぞ……」


 一昨日はあんなにも乱暴だったのにおとなしい。

 角を折られて弱気になっているんだろうか?


「まずその……角を折ってしまってすみません」

「なぜ謝る? 我はお前たちに害をなそうとした。それを打ち倒すのは当然のことだろう」

「まあそうですけど……。それを他の鬼たちに責められていたので……」

「角は鬼の誇りだからな。だが……感謝している。折られた角より瘴気が逃げ……我は正気を取り戻せた」

「そうなんですか……」


 沙鬼ちゃんに教わった、妖怪を狂わせる例の瘴気か。

 青鬼の本来の性格は落ち着いているんだな。


「それより女子供がここで何をしている。ここは我らの隠れ里近く。お前たちはそれなりに強いようだが、それも不意打ちあってのこと。下手をすれば殺されるぞ」

「あの……このあたりにある猫塚ってところに用があるんです」

「猫塚だと? 最近監視を命じられたあの場所か。何の用か知らぬがやめておけ」


 夢で見たように、青鬼が周りにいるのは間違いないようだ。

 それでも行かなきゃいけないけど、この青鬼の言うことももっともだ。

 今のところ少ない敵に不意打ちしかしてないもんなあ。

 この鬼さん協力してくれないものか。

 僕が言葉に詰まっていると、沙鬼ちゃんが青鬼さんに話しかけた。


「あの……他の鬼たちも角を折れば正気に返るのではないですか?」

「そうかもしれぬが……鬼の誇りを折るなどできぬ。お前たち人間……おや? お前は上手く化けているが鬼だな」

「あ、はい……。やはり鬼同士ではばれてしまうのですね」

「ならばわかるだろう。角を失った鬼がいかに虐げられるか」

「はい……」


 角ってすごく大事なんだなあ……。

 なんだか申し訳ない気分。


「同胞たちを正気には戻したいが、角を折る以外の方法を探す。そして小僧、角を折られたことは恨んではいない。そんな顔をするな」

「あ、はい……」

「我はこうして正気に返れたので感謝している。だが、他のものはどう思うかわからぬのでな……うかつなことはできぬ」

「そうですか……」


 角を折る以外で正気に返すか。

 うめぼし、ちょっと降りてきて鬼火みたいに瘴気に返せるかやってみて。


――わかったぴー、周りも安全が確認できたからおりるっぴ――


 あ、見張っててくれたんだ。

 ありがとうね。

 そしてうめぼしが降りてきて姿を現す。


「これは鬼火か……。昼間も活動できるとはな。そのウサギといい、なかなかの使い手のようだ」

「瘴気にやられた鬼火を戻したことがあるんです。だからそこで寝ている鬼もできるかも」

「ふむ……試してみてくれ」

「ぴぴーっ!」


 うめぼしは倒れている青鬼の角にまとわりついた。

 うまくいけばいいんだけど……。


「ぴぃ……。鬼火より瘴気がだいぶ多いの。戻せるけど……たかしくんの妖力のほとんど使うと思うっぴ……」

「そっか……それをするとまた動けなくなっちゃうね」

「妖力があればいいのか?」

「あ、はい……」

「ならばこれを使え……煎じて飲めば妖力がたちどころに回復する」


 青鬼さんが差し出してきたのは……こないだわたがしが折った角だった。

 すごくいい薬になるとは聞いたけど……。


「でもこれ大事なものなんじゃ……」

「構わぬ。この2人は我の大切な友人。正気に戻せるならば……角などいらぬ。さて、申し訳ないが遠くへ離れて安全な場所で行なおう」

「えと……」

「案ずるな。猫塚より離れることとなるが、この2人が正気に返れば我らが協力しよう」


 その提案はありがたい。

 青鬼さん3人が協力してくれれば結構簡単かも。


「それならぜひお願いします」

「うむ。ではこいつらは我が担いで行く。早駆けの術!」


 青鬼さんは大きな他の鬼たちを軽々と担いで走りだす。

 僕と沙鬼ちゃんも慌てて術を使ってついて行く。

 青鬼さんは後ろを振り向き、いかつい顔で微笑んできた。


「小僧、名を聞かせてくれ」

「あ、タカシって言います」

「そうか……いい名前だ」

「でしょー」

「む? 今どこかから声がしたぞ?」

「きっと気のせいですよ。それよりあなたのお名前は?」

「我が名は涯炎がいえん。よろしくな、タカシ」


 なんかこの世界に来てから聞いた名前で一番かっこいいや。

 でも僕の名前も負けちゃいないと思う。


『名前の由来はね……高い志を持ってほしいから……高志だよ……』


 今も隠れて見守っているであろう人の言葉を思い出した。

 ついつい声が出ちゃったみたいだけど……この名前をくれてありがとうね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ