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21.なんとなく参観日

 次の日となった。

 猫叉さんを助けるために猫塚へ行く。

 母さんは沙鬼ちゃんに、2人で行っておいでと言ったらしい。

 僕もほんとは母さんに頼らずに行きたかったが、一緒に来てもらいたいと思いなおした。


「ねえ母さん、今日の冒険一緒に来てくれないかな?」

「え? 母さんが行くとタカシの楽しい冒険を邪魔することにならないかなあ? 変な術ばっかり使うし……」


 自覚あったんだ……。

 母さんのあれってふざけてるわけじゃなく、素なんだろうなあ。


「うん……母さんの術には頼らずに冒険しようと思ってる。母さんはピンチの時……特に沙鬼ちゃんが危ない時だけ手を貸してほしいんだ」

「それならピンチの時に召喚してくれればいいかなって思うよ。やっぱり2人で行きなよ」

「えっとね……僕が元気に冒険してる姿を母さんに見てほしいんだ」

「タカシ……」


 昨日思い出した。

 病気で寝ていた僕が元気になることを母さんが願ってくれていたことを。

 だから……違う世界ではあるけど見てほしいんだ。


「だから一緒に来てよ」

「うん……見守ってるね」

「ありがとう、母さん」


 よし……母さんにいいところを見せよう。

 気分は参観日だ。




 そして準備が終わった。

 僕の格好は、母さんとと沙鬼ちゃんが仕立ててくれた男用の着物。

 沙鬼ちゃんはいつも通り人間に化けている。

 わたがしはちっちゃなリュックを背負って可愛らしい。

 いつの間にか昼間も活動できるようになってたうめぼしはふわふわ浮いている。


「ねえタカシ、母さんの変装はどうかな?」

「うーん……その髪型で手配書の人とばればれかも」


 母さんはマスクにサングラスで変装しているのだが、特徴的なおばちゃんパーマが目立ちすぎる。

 これで土饅の町に行けば一発で御用だろう。


「母さんは変化の術とか使えないの?」

「使えるけど……タカシがショック受けちゃうかも」

「よくわかんないけどやめておこうか……」


 母さんが自分で言うくらいだ……怖すぎる。

 うーん、困ったなあ。


「お母様、この頭巾をかぶってはいかがですか?」

「あ、沙鬼ちゃんありがとうね」

「どれどれ……」


 沙鬼ちゃんが持ってきてくれたのは、時代劇で尼さんがかぶっているような白い頭巾だ。

 いつも着ている割烹着と色も合う。

 膨らんだ髪にかぶせてるせいで頭がやけに大きく見えるが、それは仕方ないか。

 とりあえずこれで準備完了だ。


「ではしゅっぱーつ!」

「おー!」

「もきゅー!」

「ぴぴーっ!」


 みんなで掛け声を出すが、母さんは静かだ。

 サングラスとマスクという完全な不審者だが、きっとあの下でにっこりとしているんだろう。

 少し後ろから見守ろうとしてくれているんだと思う。


「じゃあまずは早駆けの術で土饅の町を少し過ぎたあたりまで行こう。母さんは使えるかな?」

「もちろんだよ。そおいっ!」

「わわっ……一瞬で詠唱完了なんて……やはりお母様はすごいですね」

「ふふっ、だてに歳は取ってないよ」

「じゃあ僕も使って……。母さん、競争しよう!」


 きっと母さんには敵わないだろうけど、僕が元気に走る姿を見てもらうとしよう。

 わたがしは僕の肩に乗り、うめぼしは沙鬼ちゃんの肩に乗っている。

 さあ、今日も走るぞー!


「タカシ君、なんだかはりきってるね」

「うん。えっと……早く猫さんを助けたいんだ」

「そうだね、がんばろ!」


 僕と沙鬼ちゃんは横並びに走っている。

 母さんはついてきてるかなと後ろを見ると……なんだあれは?

 気をつけの姿勢で直立不動したまま……手足を一切動かしていない。

 それなのに高速で移動して僕たちに着いてきている。

 なんか怖いというかシュールというか……。


「タカシ君、後ろずっと見てると危ないよ」

「あ、ごめん……。ちょっとびっくりして」

「何があるのかな……。わあ……お母様すごーい」

「すごいの?」

「うん。早駆けの術を極めるとね、あんな風に体を動かす必要もなくなるんだって。初めて見たよ」

「そうなんだ……」


 そう言われると確かにすごいけど……。

 うーん……気にしないことにしようかな。

 ちゃんと気を遣って追い抜かないようにしてくれているみたいだしね。


 沙鬼ちゃんには、母さんはピンチの時以外何もしないと説明しておいた。

 いないものだと思ってもらう……いい意味で。

 僕が母さんに元気な姿を見せたいからという理由は……恥ずかしいので黙っておいた。

 でも沙鬼ちゃんは納得してくれたようで一安心。


 そして土饅の町を少し過ぎたあたりの草原で休憩だ。


「タカシー、ゴザひいていい?」

「うん、お願い」

「お母様、手伝います」


 気分はハイキングだ。

 母さんが木でできた水筒からお茶を注いでくれる。

 この世界に合わせた道具を用意してくれたみたいだ。

 でも……沙鬼ちゃんの術で手から水を飲むのもまたやりたいなと思ったり……。


「母さんと沙鬼ちゃんは少し休んでてね。わたがしと使える野草探してくる」

「うん、いってらっしゃい」

「もきゅー」

「ぼくもついてくぴー」


 わたがしとうめぼしと少し離れたところまで行く。

 実は沙鬼ちゃんにあることをお願いしてるんだ。

 母さんに髪飾りをプレゼントすると決めたけど、僕は母さんの好みをよく知らない。

 どんなデザインや色が好きか、沙鬼ちゃんに探りを入れてもらうんだ。


「さて、使える草はあるかなあ」

「うめぼしが空から見てくるぴー。わたがしせんぱいなら持ち上げられるかもー」

「飛びたいもきゅー」


 うめぼしの炎に包まれるように、わたがしが空に浮かんでいく。

 仲良しになった感じだなあ。

 連携しても戦闘もできそうだ。

 僕はふわふわ飛ぶうめぼしについて歩いく。


「たかしくーん、いい技思いついたもきゅー。試すから見ててー」

「わかったー。やってみてー」

「うめぼしー、頼むもきゅー」

「ぴぴー!」


 わくわくしながら見ていると、うめぼしが上空に登っていった。

 コーウーメーのちび3匹は何故か僕のところに降りてくる。

 うめぼしがほぼ見えなくなった頃、かすかに声が聞こえてきた。


「わたがしー……めておきーっく!」


 上空からすごい勢いでわたがしが落ちてきた。

 なんとなく炎をまとったように見え、流れ星に見える。

 そして……地面に突っ込んで激しい音を立てた。

 威力はすごそうだけど……わたがし大丈夫かな?

 見に行くと地面に穴があいている。


「わたがし、大丈夫かな? なんか痛そうだけど……」

「もきゅきゅ……わたがし強い子なの……」


 穴の底でぴくぴくしてるけど、ちゃんと喋ってるから大丈夫かな。

 あ、うめぼしも降りてきた。

 とりあえずわたがしを引っ張り上げよう。


「わたがしせんぱい、どうだったぴ?」

「すごい威力もきゅー。でももう少し低めからした方がいいかもー」

「そうだね。はずすとわたがし動けなくなっちゃうし……。あと準備時間がいるからとどめをさす時用だね」

「んーとね、たかしくんの魔力を分けてもらってからやればもっとうまくできるもきゅ」

「なるほどー」


 たしかに僕の補助なしであれだけできたんだ。

 僕の魔力を注いでから使えば、すごい必殺技になりそうだ。


「ところでコウメはどうして降りてきたの?」

「たかしくんを守るためなのー。あと、落とす場所を正確にするために情報を伝えてもらうんだぴー」

「なるほど……いろいろ考えてくれてるんだね。うめぼしはかしこいなあ」

「ぴぴー」


 たしかにあの技を使う間、僕を守ってくれる子がいなくなるものなあ。

 仲間をもっと増やせばあの技も使いやすくなるんだろう。


「わたがし、うめぼし、これからもいろいろ試して一緒に強くなろうね」

「もきゅっ!」

「ぴぴぃーっ!」

「じゃあ野草探しを続けようか」

「あっちの方にいい場所があったもきゅー」


 というわけで本来の目的を果たし、沙鬼ちゃんと母さんの元へ戻った。

 結構時間もたったし、いろいろ話をしてくれただろう。


「2人ともお待たせー」

「あ、タカシ君おかえりー」

「おかえり、タカシ」


 2人とも楽しそうな感じだ。

 きっとなにかの話で盛り上がったんだろう。


「じゃあ休んだら行こうか」

「タカシ君は休まなくていいの?」

「うん、全然元気だよ」

「ふふっ、タカシ君の妖力たくさんあるもんね。じゃあ行こう」


 別に強がっているわけじゃあない、

 ほんとに全然疲れてないんだ。

 昨日の修行で、妖力こと魔力が増えたのかもしれない。

 母さんのアドバイスのおかげだね。


 そしてまた3人で早駆けの術を使って走りだす。

 母さんは立っているのが疲れたのか、寝そべった状態ですいーっと動いていた……。

 僕は見ない振りをしつつ走るのであった。

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