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02.カーチャンの目玉焼き

 さて、僕が召喚士となって母さんを召喚できることはわかった。

 その証が腕にある『母』という模様のようだ。

 とりあえず服を脱いで、体に他の模様がないか探してみた。

 背中は見えないけど……どうやらないようだ。

 背中は母さんに見てもらおうかな。


「母さん、召喚!」


 地面に魔法陣が現れ、母さんが出てくる。

 どうもこの魔法陣にも『母』と書いてあるようだ。


「タカシー、呼んだかい?」

「うん、ちょっと背中になにか模様がないか見てくれない?」

「んー? 特に何もないよ」

「そっかー……」


 今のところ召喚できるのは母さんだけのようだ。

 残念に思いながら服を着る。


「あ、タカシ。さっきの鬼にシャツ破られたみたいだね。直すから貸してごらん」

「うん、じゃあお願い」


 母さんがシャツを縫っている間、僕はまたウサギと遊ぶことにした。

 どうやら僕に完全になついてくれたらしい。


「ねえ母さん、この子飼っていいかなあ」

「タカシがちゃんと世話できるんならいいんじゃないかい」

「そうだね……でも僕、この世界のこと何にも知らないからなあ……。母さんは知ってるの?」

「うーん、母さんもよく知らないんだよ。ごめんね、頼りにならなくて」


 よく考えたら、食事も寝る場所もない状態なんだった。

 ウサギを飼うとかじゃなくて、まず生き延びることを考えないといけないんだな。


「あ、でもそうだ。タカシは召喚士なんだよね。たしかね、相手を屈服させるかお友達になるかのどっちかで召喚できるようになるらしいよ。そのウサギ相手にやってみなよ」

「そうなんだ……。ねえ、僕とお友達になってくれる?」

「もきゅっ!」

「そっか! あ、でもどうしたらいいんだろう?」


 お友達になったはいいけど、どうやって召喚できるようにするんだろう?

 あの神様……もっとちゃんと教えておいてほしかったな。


「タカシ、名前をつけてあげないと」

「あ、そうか……。じゃあえっと……お前は今日からわたがしだ。真っ白でふわふわしてるし」

「もっきゅー!」


 するとわたがしの体が光り……僕の右腕に吸い込まれていった。

 右腕には『兎』の模様が浮かび上がってくる。

 これで召喚できるのかな?


「わたがし、召喚!」


 母さんの時と同じように地面に魔法陣が現れ、わたがしが現れた。


「もっきゅー!」

「わたがし! これでずっと一緒にいられるぞ!」

「よかったね、タカシ」

「うん! でも母さん、僕がこうやって召喚できるようになるってよく知ってたね」

「タカシのことなら何でも知ってるんだよ。さ、シャツ直ったから着てごらん」

「ありがと、母さん」


 破れた袖のところは、ウサギのアップリケで補強してあった。

 わたがしそっくりなのはいいけど……この歳でこれは恥ずかしい。

 でも……わたがしがその部分に嬉しそうにじゃれてきたので、文句は言わないことにした。

 とりあえず冒険を開始しようかな。


「母さん、今から人のいる町とか探そうと思うんだ」

「そうだね。ここにいるとさっきの赤いおじさん達みたいな危険もありそうだし、その方がいいね。ちょっと町の方角を占ってみるよ」

「母さんそんなことできるの?」

「ああ。母さんいろんな魔法が使えるようになったんだよ」


 そう言って母さんはどこからともなくカセットコンロとフライパンを取り出す。

 あれも魔法の一種なんだろうか……。

 そして、卵を取り出してフライパンに落とした。


「母さん、何してるの?」

「これね、目玉焼き占いだよ」

「そうなんだ……油は引かなくていいの?」

「焦げ付かないフライパンだから大丈夫」

「そっか……」


 少し待つと、おいしそうな目玉焼きが完成した。

 そういえばおなかすいたなあ……今はお昼ごろだろうか。


「よし、黄身がこっちのほうに寄ったから……町はあっちの方角だよ!」

「え……そんな占いなの?」

「そうだよ。ちゃんと当たるから安心して。それよりこれ食べるかい?」

「うん!」


 母さんがお皿に目玉焼きを乗せてくれ、箸と醤油も出してくれた。

 さらにウィンナーとかも焼いてくれた。

 久しぶりに母さんの手料理を食べる気がして、なんだか嬉しいな。


「おいしいよ、母さん」

「そうかい、よかったよ」

「僕1人だとすぐに迷子になったり、おなかすかせてたかもしれないね。母さんがいて良かったよ」

「ふふっ、呼んでくれたらいつでも助けに来るからね」

「うん。そう言えば呼びだせる時間には限りがあるんだよね」

「そうだね。でもタカシが召喚士として修業を積めば、長い時間呼べるみたいだからがんばってね」


 なるほど……ゲームみたいに僕が強くなればいいのか。

 わたがしもちっこいウサギだけど、強くなったりするのかな。


「あと母さんはタカシの体にある魔力を使ってるんだ。魔力切れにならないよう、呼びだすのは必要な時だけにするのがいいよ」

「そっか……じゃあ町までは1人で行くことにするね」

「うん、がんばるんだよ。あ、わたがしはほとんど魔力必要ないみたいだから、ずっと出してても大丈夫だと思うよ」

「そっか、じゃあ一緒に行こうね。わたがし」

「もきゅっ!」


 母さんは召喚士について詳しいようだ。

 ゲームとかファンタジー小説とか全然知らないはずなのに不思議だな。


「じゃあまた必要になったら呼ぶね。目玉焼きご馳走様でした」

「うん、おなかすいたらまた呼んでね」

「わかった。じゃあ……送還」

「がんばるんだよー。晩御飯はハンバーグにするねー……」


 おいしそうなことを言いながら、母さんは消えていった。

 さあ、町を目指して出発だ。

 目玉焼き占いと言うのが少し不安だけど……。


「わたがし、僕の上に乗ってもいいよ」

「もっきゅー」

「ふふ、お前の体気持ちいいな」


 わたがしは僕の肩の上に乗っている。

 マスコットみたいだ。


「お前も喋れたら楽しいのにな」

「もきゅきゅ……しゃべるきゅっ」

「あれ? 喋った? わたがし、もう1回」

「きゅう……たかしきゅっ……」

「あ、僕の名前だね。お前すごいなあ」

「もきゅっ……たかしくんの……まりょきゅっ」


 僕の魔力って言ったのかな?

 もしかしたら僕の魔力がわたがしに力をあげている?

 こうやって成長してくれるんだったら嬉しいな。


「わたがし、僕の魔力たくさん使っていいから……大きく強くなってね」

「がんばるきゅー」


 召喚士って楽しいな。

 こうやってお友達をたくさん増やしていけそうだ。

 あ、母さんもわたがしが喋るの聞いたら驚くぞ。


 1時間ほど歩くと、道が見えてきた。

 と言っても草が生えてないだけの土の道だけど、道には違いない。

 この世界は地球に比べたら文明が遅れてるのかな?

 いったいどんな世界なんだろう。

 やっぱりファンタジーかな。

 そしてしばらく歩くと看板が見えてきた。


「なにか書いてあるけど読めないや。わたがしは?」

「わかんないきゅー」

「そうだよね、じゃあ一時的に母さん呼んでみようかな。召喚!」


「じゃじゃーん! 母さんだよー」


 魔法陣から現れた母さんは、手になにかを持っていた。

 あれは……ハンバーグ作りの最中?


「あ、ごめんね母さん。料理中だった?」

「ああ、てごねってる最中だったけど大丈夫だよ」

「というか母さんって、召喚されてない時はどこにいるの?」

「そりゃもちろん家……じゃなくて、召喚待機所だよ」

「そうなんだ……」


 よくわからないけど、深くは聞かないことにしよう。

 母さんに立て札が読めるか聞いたところ、読めるらしい。


「これはね、あっちの方向に土饅どまんの町があるって書いてあるんだよ」

「そうなんだ。母さんよく読めるね」

「母さんだからね。タカシにも今度文字を教えてあげるよ」

「うん、よろしく。じゃあ料理中に呼んでごめんね。戻っていいよ。送還」

「じゃあねー、健康考えて豆腐ハンバーグ作ることにしたよー」


 それはそれで好きなので問題はない。

 じゃあ土饅の町を目指して進もう。


「はんばあぐ?」

「わたがしは食べたことないよね。おいしいんだよ。あ、でもウサギは草食だから食べられないかな」

「もきゅう……」

「あ、豆腐なら大丈夫かも。少しわけてあげるね」

「もきゅっ!」


 召喚した子のご飯も必要なのだろうか?

 魔力を食事にしそうなものだけど……。

 でも一緒にご飯食べたいし、それでいいかな。



 それから2時間ほど歩いた……。

 でも足はそんな疲れていない。

 この体は元気いっぱいみたいだ。

 わたがしも楽しそうに僕の上をぴょんぴょん跳んでいる。

 さあ、ようやく町が見えてきたぞ。


「わたがし、あれが土饅の町みたいだよ」

「もきゅきゅー、町って人がたくさんいるの?」

「そうだね、たくさんだよ」

「楽しみだきゅっ」


 ここに来るまでに、わたがしの喋りも上手になった。

 町という言葉も教えてないのに使ってるし、どんどん賢くなっているようだ。

 さあ、母さんにもこの町を見せてあげないとね。

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