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16.カーチャンの収穫祭

 鬼の里に無事帰ってきた。

 結構疲れたなあ……今日はよく眠れそうだよ。


「お母様どこかなあ? 挨拶したいんだけど」

「あ、呼んでみようか」


 朝からたっぷり寝てたはずだから、とっくに起きてると思うけど。

 起きてたら出てきてねと念じながら召喚してきた。

 お、いつも通りの魔法陣が出て母さんも現れたっぽい。


「じゃじゃーん! 2人ともおかえり。楽しかったかい?」

「ただいま、母さん」

「とても楽しかったです。すごく可愛い猫を見たんですよ」

「そうなのかい、ぜひ聞かせてほしいねえ。沙鬼ちゃん、今日は一緒に寝ない?」

「はい! ぜひそうしたいです」


 女性陣は仲が良い。

 母さんが寝てる途中に召喚時間が切れて、沙鬼ちゃんが驚かないといいけど……。

 寝る前に時間延長をしておけば大丈夫かな。


「ところでさ、今からジャガイモの収穫をしようと思うんだけど」

「えっと? 明日じゃなかったの? もう日が暮れちゃうよ」

「それがね、明日雨になるって天気予報でやってたんだよ」

「天気予報?」

「ほらあれだよ……猫が顔を洗うと雨になるって言うじゃない」


 沙鬼ちゃんがこの辺りに猫はいないって言ってたんだけどなあ。

 まあ、母さんの言うことは気にしないのがお約束。


「猫が顔を洗うと雨なんですか? わたしが見た猫ちゃんも顔洗ってたんです」

「うん。雨の前はじめじめするだろう? 猫はそれを嫌がって顔をごしごしするらしいんだよ」

「なるほど……お母様って物知りなんですね」

「長生きしてるからねえ」


 さて、ジャガイモ掘りか。

 疲れてはいるけど、収穫は一番楽しいからなあ。

 がんばってみようかな。


 母さんが鬼達を呼びだし、畑にはたくさんの鬼が集まった。

 ちびっ子たちが特にわくわくした顔でいるのが微笑ましい。

 これから母さんが説明をするようだ。


「みんなー! ジャガイモを食べたいかー!」

「おー!」

「フライドポテトにしたいかー!」

「おー!」

「んじゃー、説明するよー!」

「おー!」


 なんかお祭りのように盛り上がってるなあ。

 横にいる沙鬼ちゃんも楽しそうに叫んでいる。

 でもこの世界はフライドポテトあるのかな?


「沙鬼ちゃん、フライドポテトって何か知ってるの?」

「えへ、実は知らないんだ。でもきっとすごくおいしい料理なんだよね? 楽しみだなあ」

「うん、すごくおいしいよ」


 さあ、説明を適当に聞きつつ掘ろう。

 小学校でやったこともあるし、そんな難しくはないさ。

 手ととがった石で、土をゆっくりと掘っていく。

 沙鬼ちゃんも僕を見ながら同じように作業を始めた。

 わたがしもちっちゃな足で土を掘っているのが可愛らしい。


「じゃがいもさんはどこかなー。タカシ君、わくわくするね」

「うん、でも暗くなってきたから手元が見えにくいね」

「もうすぐ鬼火たちが来て明るくなるはずだよ」

「そっか。あ、うめぼしも呼ぼうっと。でてこーい、うめぼしー」


 暗くないと呼べないので、久しぶりに会った気分だ。

 うめぼしは僕たちの手元を明るく照らしてくれる。

 なんだか沙鬼ちゃんが不思議そうな顔でうめぼしを見ているぞ。


「あれ? うめぼしは火なのに、近くにいても熱くないんだね」

「うん、熱さを調整できるようになったっぴ。わたがし先輩みたいにたかしくんの肩に乗りたくって」

「いいよ、おいで」

「ぴぴー」

「あはっ、肩に乗ってる鬼火って初めて見たよ。可愛いね」


 僕の肩はほんのりあたたかく、綿のように軽い何かが乗っているような感触。

 他の鬼火はできないみたいだから、うめぼしも僕が召喚するようになって強くなっているようだ。

 そのうちわたがしみたいに大活躍してくれそうだ。


「ねえねえ、わたしの肩にも乗ってみてほしいな」

「もちろんだぴー」

「わあっ……不思議な感じだね。なんだかあたたかいし……いいなあ」

「うめぼしのおかげで明るいし、どんどん掘ろう」

「うん!」


 ある程度掘ったので、慎重に少しずつ掘っていく。

 そしてついに……じゃがいもが顔を出した。


「あ、見えてきたね。傷つけないようにっと」

「わあ……なんだかすごく大きくない? こんな大きなジャガイモ見たことないよ」

「うん、大きいね」

「今までも育てたことはあったけど、これの半分くらいの大きさだったよ」


 母さん特製の土だから育ちがいいんだろうな。

 僕からしたらちょっと大きいかなって程度だけど、沙鬼ちゃんにはすごく大きいようだ。


「ねえねえ、これはわたがしも食べていいもきゅ?」

「うめぼしもたべてみたいぴー」

「うさぎはどうだったかな……後で母さんに聞いてみようね」

「もきゅっ」

「うめぼしは……そもそも鬼火って何食べるの?」

「基本的には空気があればいいっぴ。燃える力になるんだー。でもね、なにかを燃やすとそれが力になるはずなの」


 燃える力ってことは酸素があれば生きていけるのか。

 なにかを燃やすと、わたがしが草を食べて魔法が使えるのと同じ感じになるのかも?


「うめぼしは後で試しに食べてみようか」

「ぴぴー!」

「ふふっ、一緒に食事する鬼火も初めてだよ。タカシ君のお友達になる子はみんなすごくなるんだね」

「うん、そうみたいなんだ。実は僕もよくわかってないんだけど、すごく楽しみなんだ」

「わたしも楽しみだなあ」


 和やかに会話しながら、ジャガイモはどんどん地面から出てくる。

 周りを見ると、他の鬼達も順調に収穫しているようだ。

 ちびっ子たちはジャガイモを手にして、走り回っている。

 あ、こっちに来たぞ。


「さきおねえちゃーん、ほら見て、おっきいよー」

「そうだね、すごいの取れたねえ」

「えっへんー、ねえねえ、このおにいちゃんはおねえちゃんの恋人ー?」

「そ、そうじゃなくてお友達だよ。タカシ君って言うの。みんなも仲良くするんだよ」

「はーい」


 それだけ言うとちびっ子たちはすぐに去って行った。

 小学生くらいだと思うんだけど……ませてるなあ。


「もうあの子たちってば……。変なことばっかり覚えてるんだから……」

「元気いっぱいだね。沙鬼ちゃんは仲がいいんだね」

「うん。わたし時々あの子たちに勉強とか教えてるんだ。あ……明日がその日なんだ。だから明日は一緒に遊べないや……。もちろん夜は猫ちゃんの呪いを解くためのあれをやるよ」


 そっか……明日は1人で冒険かな。

 いや、僕も勉強するって手もある。


「勉強ってもしかして字も教えてる?」

「うん、字を覚えてると役に立つからね」

「じゃあ僕も参加していいかな? 僕も字が読めるようになりたいんだ」

「いいよー。ちょうど1から教える子がいるから一緒に教えてあげる」

「助かるよ」


 よし、これでこの世界で過ごしやすくなるし冒険にも行きやすくなるぞ。

 そういえば、今ってこの里に住んでる感じだなあ。

 ま、居心地いいからしばらくはここが拠点でいいかな。


「みんな収穫できたみたいだね。これからふかしいもを作るよー」


 母さんがまた叫んで指示を出し始めた。

 鬼たちがたくさん水を汲んできていもを洗い始める。

 またある集団は巨大なたき火を作り始め……。

 火事にはならないことを願おう。


「わあ! すごく大きな鍋が出てきたよ。あんなのどこにしまってたんだろう?」

「母さんは変な術がいっぱい使えるから」

「変じゃなくてすごいよー、あれで一気にジャガイモをゆがくのかなあ」


 巨大なたき火の上に、人が入れそうな巨大な鍋が置かれた。

 その前に母さんがいて、周りにはたくさんの鬼。

 これが昔話であれば、今から鬼たちが人間を釜ゆでにしようとしている光景に見えそうだ。


 なんて失礼なことを考えていると、準備が終わったようだ。

 鍋に水が少しと、ジャガイモがたくさん入れられる。

 ふかしいもだから、ゆがくんじゃなくて蒸すのかな。

 鍋に蓋がされ、その上に母さんがどーんと座った。


「母さん、どうしてそんなところに座るの?」

「これ圧力鍋じゃないからね。こうやって押さえておかないとしっかり蒸せないんだよ」

「そっか……」

「えいっ! つけもの石の術ー!」


 母さん一人が押さえたくらいでいいのかなと思ったが、今使った術で重くなっているのだろうか。

 面白そうだから見守っていよう。


「さあ鬼火たち、火力アップしておくれー」

「めらめらめらー!」

「うめぼしも行ってくるぴー!」


 鬼火たちが集い、火力がどんどん増していくようだ。

 鍋の上の母さんが暑そうに汗をかいている。

 やっぱり今から鬼に食べられる運命に見えてしまう……。

 鬼たちは鍋を囲んで手をつないで歌を歌っているしさ……。

 いつ作られたのか……歌詞にわらびもちと出てくるから、わらび唄かな。


「よーし、そろそろいいかな。みんな離れててー! そして鬼火たちは上に乗っておいで」


 なベの蓋の上にいる母さんの周りに集まる鬼火たち。

 あ、母さんのおばちゃんパーマが少し焦げている。

 どうするつもりなんだろう?


「じゃあつけもの石の術を解くよ。みんな、カウントダウンするよ。10、9、8……」


 急に始まったが、鬼達もあわせて言い始めた。

 楽しそうなのでこれは僕も参加してみる。


「4、3、2、1……えいっ!」


 カウント0となり、スポーンという音と共に鍋の蓋ごと母さんが上空へと吹っ飛んで行った。

 まるでロケットの発射のようだ。

 そして見えなくなったと思った瞬間、夜空に花火が煌めいた。


「おおー、なんと綺麗なのだろう!」

「よく見てみろ、あれはわらびもち様の顔じゃないか?」

「本当だ! なんて素晴らしい術なのだ」


 鬼たちは大絶賛。

 これに関しては僕も素直に感動した。

 僕が浴衣を着て花火を見に行きたいと言っていたこと……きっと叶えてくれたんだろうな。


 この後で母さんが行方不明になるというちょっとした事件はあったけど、ジャガイモはみんなで塩をつけておいしく食べた。

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