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15.呪いを解く方法

 僕たちは、ヨロズさんのいる雑貨in土饅へと向かっていた。

 呪いを解くための道具がないかなと思ったわけだ。

 妖怪退治の道具もあると言っていたし、基本なんでもありそうだ。


「こんにちはー」

「おや、今日もお越し下さったのですね。ようこそ……お茶をお出ししましょう。おーい……」

「あ、お構いなく……」

「いえいえ、坊ちゃんがたはもう常連。サービスをさせてください」

「じゃあ……」


 今のところたいした買い物はしてないのに常連扱いか。

 これが商売というものだろうか?

 ただ……ここに来るのは3回目だけど、他に客を見たことないのがちょっと気になる。

 聞いて図星だったら悪いし、たまたまだと思うことにしよう。


「それで本日はどういった物をお探しで?」

「ここは呪いを解く道具って置いてますか?」

「呪い……ですか。物騒な話ですな。種類にもよるのですが、どのような呪いでしょう?」

「大切なものにかけられて、言うことを聞かないとそれが消えてしまうとか……」

「ふむ……」


 ヨロズさんは棚から分厚い本のようなものを取り出し、それを見始めた。

 待っていると、人のよさそうな顔のおばちゃんがお茶を持って現れた。

 それを飲みながらヨロズさんの言葉を待つ。


「坊ちゃん、それはかなりの邪法ですな……。かけるのも解くのも手がかかるもののようです。それが必要と?」

「はい、かけられて困っている……人がいるんです」

「ふむ……いろいろ試してみるしかありませんな」

「なにか方法があれば教えてください」


 ヨロズさんはまた本を見ながら考え始めた。

 変なものをたくさん売りつけようとすることはないようだ。

 信用できる人なのかもしれない。

 やがてヨロズさんは口を開いた。


「呪いを解く定番はこの清めの水と塩をかけることです。ただしこれでは効き目が弱くて呪いを消すことはできないでしょう」

「たくさん使ってもだめですか?」

「解呪に必要なのは、量より質です。何とかこれらの力を増す方法を考えなくてはなりません」


 ここには猫叉さんの呪いを解く道具はないってことか。

 でも一緒に方法を考えてくれるみたいなので期待してみよう。


「幸い明日は満月、こちらに書いてある方法を試すのが良いかと思われます」

「あ……僕字が読めないんです。そうだ、書く物をなにか売ってください」

「ではこちらをどうぞ」


 たくさんの紙がひもで束ねられたノート的なものと鉛筆を渡された。

 ついでなんで追加の鉛筆と削るナイフも買うとしよう。

 ヨロズさんに本を読んでもらい、それを日本語でメモしていく。


「おや? 坊ちゃんは異国の方なのですか? 見たことのない文字ですね」

「まあそんなところです」

「それにしては喋るのは上手でいらっしゃる。たいしたものですね」

「あはは……」


 そのあたりは自分でも不思議で、当たり前のように喋れている。

 気分的には日本語を話すのとなんら変わりない気分だ。

 このお店だって雑貨in土饅という日本語と英語が混ざった言葉で認識しているし……これも神様がくれた便利な力なのかもしれない。

 欲を言えば文字も読めるようにしてほしかったけどね。


「満月の晩にこれを清き乙女が持ち、月の光をためるのです。それで清めの水の力は増すでしょう」

「ふむふむ……」


 清き乙女というのは沙鬼ちゃんでいいのだろうか?

 なんだかこれは聞くのも失礼だし……きっと問題ないだろう。


「塩はこちらの升に入れ、穢れを知らぬ男性が持ちます。坊ちゃんは大丈夫でしょうか?」

「た、たぶん大丈夫です……」


 僕には聞くのか……。

 これも大丈夫だよね?

 僕は元の世界でもこの世界でも未経験だ。

 というかそういう意味だよね?


「それでは2人で行ってください。月が高く昇る時、1時間の間動かずに月の光を浴びせるのですよ」

「わかりました。やってみます」

「あ、タカシ君……猫さんが明日雨って言ってなかった?」

「あ……そうだった。夜中は晴れてくれたらいいんだけど……」


 猫叉さんが顔を洗いながら明日は雨だにゃー、って言っていたんだ。

 おそらくあれは当たるんだろう……。


「ふむ……どなたかに天気の占いを聞かされましたか? それは弱りましたね。もし月が見えなければ、次の満月まで半月ほど待つことになります」

「その場合、なにか他に方法はないんでしょうか?」

「そうですね……月の光を作りだせる術者の話を聞いたことがあります。しかし、このあたりにはいないでしょう……」

「月の光を作る……」


 ん? ふと脳裏におかしな映像がよぎった。

 母さんが目玉焼きを焼いたフライパンを天に掲げている光景……。

 それはまるで月の光のように……。

 うん、却下で。


「なんとか晴れることを願おうかな」

「そうですな。私は明日晴れるよう祈祷を依頼しに行くとしましょう」

「そんなことできるんですか?」

「ええ、効果は薄いですが……。まあ気休め程度ですね」

「そうですか……」


 天候を変えるなんてそうそうできないだろうなあ。

 母さんならできそうで怖いけど……。

 いざとなったら頼んでみることにしよう。


「では肝心の使用方法ですが……」

「はい」


 ヨロズさんに言われたことをしっかりと書きとめて、何度も確認しておく。

 呪いを解くのに失敗すると、猫叉さんの大切なものに害があるかもしれないんだ。

 慎重にいかないとね。


「それで、これらの値段はいくらでしょうか?」

「そうですな……これらの道具はすべて安物なので、20飯といったところでしょうか。あとは坊っちゃんたちの努力次第ですよ」

「そんな安いんだ……。たくさん相談に乗ってもらったのになんだか悪いです」

「いえいえ、これからもご贔屓にしていただければ問題ありませんよ」


 結構長い間いたのに、売り上げは2千円程度かあ。

 ちなみにこの間……他に客は来なかった。

 よし、ここで母さんへのプレゼントも見繕ってもらおう。


「じゃあさっそく、お母さんにプレゼントできるようななにかってありませんか?」

「おお、あのお母様に贈り物ですか。どういった系統のものをお考えでしょう?」

「うーん……こういうのって初めてなんで……。沙鬼ちゃんはどう思う?」

「わたしもどんなものがいいかは……」

「ではお薦めをいくつか見繕いましょう。おーい、お前も来てくれー」


 ヨロズさんが奥さんを呼びだし、2人でいろいろ考えてくれた。

 奥さんが出てくると、なんとなく心強い。


 出てきた案はまず身に着ける物として着物、バッグ、扇子、履き物など。

 生活に使えるお鍋ややかん、湯のみ……には名前を入れて焼く注文もできるそうな。

 お酒やお花という案もあった。

 しかし……いろいろ提案はされたけど、これだと思えるものがない。

 ヨロズさん達もどうしたものかと唸ってしまった……。


「ではこういうのはいかがでしょう? 母親にとって一番の幸せは子供の幸せ。お2人が結婚して結ばれたと伝えれば、さぞかし喜ぶと思いますが」

「ななななな! 何を言ってるんですか!」

「タ、タカシ君とわたしが結婚……。まだちょっぴり早いかなあ……」

「そうですか? お似合いだと思いますがねえ。お前もそう思うだろう?」

「そうですねえ、私達の若いころを思い出しますよ」


 プレゼントから話が飛びすぎだよ……。

 僕も沙鬼ちゃんも顔が真っ赤になってしまっている。

 でも……沙鬼ちゃんは早いと言っただけで、嫌と言ってないのがなんとなく嬉しかった。


「急いで決めなくても、ゆっくり決めればいいのですよ」

「そう……ですね。また考えてから来ようか」

「そうだね、それとなくお母様に欲しいものを聞いてみる?」

「うーん……」


 なんとなく……孫の顔が見たいとか言う予感がした。

 というか頭に響いてきた。


「聞くのはやめておこう。驚かせたいんだ」

「そっか、その方がいいよね」

「じゃあヨロズさんとおばさん、いろいろありがとうございました」

「いえいえ、またお待ちしておりますよ」

「ありがとうございました」


 というわけで店を後にした。

 なんとも和やかな買い物ができたので、お気に入りの店認定してよさそうだ。


「タカシ君、なんだか楽しかったね。また一緒に来たいなあ」

「うん、一緒に来よう。プレゼントも一緒に決めてほしいし」

「うん!」


 さあ、里に帰るとしよう。

 今日はたくさん冒険した気分だぞ。

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