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14.猫を助けよう

 見世物小屋で見た猫叉は確かに僕に助けてと言った。

 もしかして捕えられて無理矢理演技をさせられているのだろうか?


「タカシ君、すごく楽しかったね」

「うん……」

「もっきゅう……」

「あ、ごめんね。わたがしもすっごく可愛いよ。すねてないで抱っこさせてほしいなあ……」

「もっきゅー!」

「あははっ、くすぐったいよぉ」


 沙鬼ちゃんはすごく楽しそうにわたがしとじゃれている。

 楽しそうな雰囲気に水を差すのは悪いけど、相談しよう。


「ねえ沙鬼ちゃん……さっきのことなんだけど……」

「どうしたの? タカシ君なんだか不安そうな顔」

「さっきの猫がね……」


 沙鬼ちゃんは真剣に僕の話を聞いてくれた。

 こういう時ちゃんと信じてくれるっていいなあ。


「なんとか助けてあげたいね。でもあれだけの妖術使えるのに逃げないってことはなにか事情があるのかも」

「そうだよね。まずはそこから調べないと」

「もきゅっ、わたがしが潜入してお話してくるの」

「うん、わたがしに頼むしかないけど……捕まったりしないか不安だよ」


 わたがしもあの猫叉ほどじゃないけど、見世物になれるだけの実力があるからなあ。

 相手が悪い奴らだったらどんな目にあわされるか。


「大丈夫もきゅっ。タカシ君が呼んでくれれば戻れるはずだっきゅー」

「あ、そうか。ちょっと試しにやってみよう。わたがし、向こうに行ってみて」

「もきゅー」


 あたりに人目がないことを確認して……わたがしを召喚だ。

 すると……僕の前とわたがしのいるあたりに兎の魔法陣が出現した。

 わたがしがその魔法陣に飛びこむと、僕の目の前の魔法陣から現れる。

 こんな仕組みなんだなあ。


「面白いもきゅー」

「わわ? わたがしがいきなり現れたよ。何が起きたの?」

「魔法陣見えなかった?」

「魔法陣? 急にわたがしが消えたと思ったら現れたよ」

「そっか……」


 あの魔法陣は僕やわたがしにしか見えてないみたいだ。

 まあ、目立つから見えない方がいいかな。

 とりあえずこれで安心だ。


「でもこれでわたがしは安全だよ。偵察お願いしていいかな?」

「まかせるもきゅー、いってきまーす」

「わたがしがんばれー」


 わたがしは見世物小屋の中へと潜入していった。

 僕と沙鬼ちゃんは人気のないところへ移動して報告を待つことにする。


「あの猫ちゃん助けたらお友達になれるかな?」

「そうだね、きっとなれるよ。それに着いてきてくれたら嬉しいな」

「いいなあタカシ君って。わたしにも式神使いの素質があればなったのになあ」

「素質がいるの?」

「そうだよ。だからタカシ君はとってもすごいの」


 神様は召喚士と言っていたけど、いい能力をくれたんだなあ。

 この能力を使って……幸せになれって言われたんだっけか。

 どうせなら悪い妖怪を倒す使命とかが欲しかったけど……。

 あ、でも幸せを邪魔する悪者が現れたら自然とそうなるのかな。


 しばらく待つと、わたがしから連絡が来た。


――たかしくん、見つけたっきゅ。なんかね、大切なものを奪われてるんだって――


 なるほど、それで言うことを聞かせられているのか。

 なんとか僕たちで取り返してあげたいね。


――うん、でもなんかややこしそうなの。あ……代わるって――


――タカシじゃな? 先ほどの猫じゃが、この兎を介して念話を送っておる――


 あの猫叉ってこういうこともできるんだなあ。

 口調はおばあちゃんっぽいけど、声は若くて可愛いのが不思議な感じ。

 それで大切なものとはなんなの?


――大切なものは奪われたというより呪いをかけられたのじゃ。儂が逆らえば、それが消失する呪いをな――


 それはなんともひどいことをする。

 呪いってどう解けばいいのかな?


――儂は呪いをかけることはできるが、解くことは検討がつかぬ。だがお主ならばそれができるはずじゃ。場所はこの兎に伝えておく。頼めぬか?――


 うーん……できるかはわからないけど、助けたいし引き受けるよ。


――ありがたい。では慎重にな。時間はかかっても構わぬ。ゆっくりと事を進めておくれ――


 わかった、待っててね。


――じゃあたかしくん、場所聞いたらもどるもきゅっ――


 わたがしもお疲れ様。

 今の話を沙鬼ちゃんにもしてと……。


「呪いかあ……おばあちゃんならわかるかなあ」

「僕にもさっぱりだから、ぜひ聞いてみようよ。あ、もし場所が近かったら様子見ていこう」

「うん、お任せするね。あ、土饅の町への配達はどうする?」

「一応やってお金稼いでおこう。お店で役立つもの買えるかもしれないしさ」

「うん、わかった」


 とりあえずあの町の雑貨屋のヨロズさんにも聞いてみよう。

 母さんへのプレゼントも見ておきたいし。

 あせって猫叉さんの大切なもの壊しちゃいけないし、じっくりと解決するぞー。

 やがてわたがしが戻ってきた。


「ただいまもきゅー」

「おかえりなさい」

「おかえりわたがし、それで場所教えてくれるかな?」

「うん、猫塚ってところらしいきゅ」


 僕が地図を出し、わたがしが場所を教えてくれた。

 この水煎の町から離れた山奥にあるようだ。


「タカシ君、この場所ってもしかしたら青鬼の隠れ里が近いかも……」

「危険な場所なんだね……。今日は寄らずに戻ろうか。母さんにも手伝ってもらった方がよさそうだ」

「そうだね……」


 いろいろ難しそうだなあ……。

 でも、わくわくしている僕がいる。

 これこそ冒険って感じがするんだ。

 今困っている猫叉さんには悪いけどさ……。


「あとね、困ったら使えって渡されたの」

「これは……猫の毛かな?」

「うん、これをふーって飛ばしたらなにか起きるって言ってたもきゅ」

「なるほど……」


 ピンクと白と黒、3本の猫の毛だ。

 でもこれなくしちゃいそうだなあ。


「どうやって持っておこう……」

「あ、わたし持っておこうか。便利な術があるんだよ」

「そうなんだ、じゃあ任せていいかな?」

「うん、貸して。……えいっ、ひっつきもっつきの術―」


 なんだか可愛らしい術名だなあ。

 あ、沙鬼ちゃんの首にあるペンダントに猫の毛がくっついた。

 石に飾りがついたみたいでちょっといいかも。


「どうかな? 大切なものにくっつけたからなくさないよー」

「うん、可愛くなったよ」

「えへへー」

「さきちゃん素敵だもっきゅー」

「わたがしもありがとー」


 さあ、冒険長屋へ行って土饅の町へ戻るとしよう。

 配達の仕事は誰も受けなかったようで、まだ残っていた。

 これでもう少しお財布が潤いそうだ。

 地図を見ながら、安全なルートを検討する。


「さっき襲われた場所の手前と後で2回休憩したらいいと思うんだけど、どうかな?」

「うん、それでいこう」

「わたがしたくさん草集めたから、休憩短めでいけるっきゅ」

「うん、ありがとね。わたがし」


 ということで移動開始だ。



 計画がよかったのか、何も問題は起きずに土饅の町へ到着。

 さっそく旅人長屋で配達を終わらせると、報酬は行きより少ない2餅だった。

 ここでも青鬼に襲われたことを報告しておく。

 もちろん赤鬼はいい妖怪アピールも忘れずにと。

 そして、沙鬼ちゃんが街への通行手形を手に入れる方法を聞いてみた。


「こちらで購入もできますが、風来人登録をされる手もありますよ。そちらのお嬢さんの年齢であれば、保護者の承認が必要ですが」

「なるほど……」


 保護者かあ……母さんに頼んでいけるだろうか?

 大妖怪として絶賛手配中だから、問題が起きそうで怖いなあ。

 そう考えていると、上から1枚の紙がひらひらと落ちてきた。

 そして受付のお姉さんの手元へと収まる。


「あら? これは署名入りの登録証ですね。確認しますので少々お待ちを」

「タカシ君、もしかして用意してくれてたの? お母様の名前が書いてあるよ」

「えっと……? 母さんがいつの間にか用意してたのかも……」


 なんで急に降ってきたかは考えないことにして……。

 母さんが沙鬼ちゃんの保護者でいいのだろうか?

 この町に最初来た時、偽手形を作って捕まった母さんを思い出す。

 すごく不安に思いながら、なにかしらの術を使っている受付のお姉さんを見守る。


「問題ないようですね。では登録を済ませておきます」

「わあ……ありがとうございます」

「ほっ……よかったね沙鬼ちゃん」

「うん! ありがとう。帰ったらお母様にお礼言わないとね」


 問題なかったようで一安心だ。

 あの術で受付の人は嘘を見破れるらしいんだけど、なんでうまくいったんだろう?

 もしかすると……母さんは嘘だと思っていないのかもしれないな。

 沙鬼ちゃんを本気で自分の娘と思っていそうだ。

 手配書に書かれた大妖怪が保護者だけど、ここのシステムは大丈夫なのだろうか?


「タカシ君、いこ!」

「あ、うん……」


 ご機嫌な沙鬼ちゃんに手を引っ張られて、まあいいかって気分となった。

 だって沙鬼ちゃんの笑顔がとっても素敵だったんだ……。

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