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12.赤鬼と青鬼

 土饅の町から水煎の町へ移動する僕と沙希ちゃんとわたがし。

 道に沿って移動するだけなので、楽でいい。

 1時間ほど走り、休憩することにした。


「ふう、疲れちゃったよ。タカシ君はどう?」

「僕そんな疲れてないかも」

「そっかぁ、タカシ君って妖力たくさんあるもんね」

「さきちゃん、僕に任せるっきゅ。もきゅもまじっきゅあー!」

「あはっ、妖力回復したよ。わたがしはすごいねえ」

「もっきゅー! ちょっと草の補充してくるきゅー」


 わたがしは走って行った。

 割とよくある草であれだけのことができるのはすごいなあ。


「タカシ君、喉乾かない?」

「あ、乾いたかも。そういえば水筒持ってきてないや……」

「私が水の術で出すよ。えいっ……まずは手を洗ってと」

「わあ……すごいなあ」


 沙鬼ちゃんの手から水があふれ、その水で沙鬼ちゃんは手を洗っている。

 そして、手の平の上に水がためられた。


「器がないからわたしの手で悪いんだけど……どうぞ」

「うん……いただきます」


 僕の手に注いでもらえばよかったような気もするが、せっかくなのでこのままいただくことにした。

 沙鬼ちゃんの手に口を近づけると、お姫様の手にキスをしているような気分だ。

 お水おいしいなあ……。

 沙鬼ちゃんの手は小さいが、水は飲んでもどんどんあふれてくる。


「たくさん出るから好きなだけ飲んでね」

「ん……ごくごく……」

「ふふ、結構喉乾いてたんだね」

「……ふう。ごちそうさまおいしかったよ」

「うん、じゃあわたしも飲もうっと」


 あとでわたがしにも出してもらおう。

 冒険に行くのに荷物も減らせるし、水を出す術って便利だなあ。

 母さんも使えるみたいだけど……あれは鼻からだし。


「ねえ沙鬼ちゃん、その術も教わることできるかな?」

「そうだね、ちょっと難しいけどやってみる?」

「うん!」


 沙鬼ちゃんに術を教わるが……結果から言うとできなかった。

 いや……少し水が出るんだけど、鼻からだ。

 こんなところまで母さんに似なくても……。


「タカシ君元気出して。わたしも最初は全然できなかったんだよ。練習すればもっとうまくできるようになるからさ」

「うん、ありがとう……」


 応援してくれてはいるが……何となく嫌な予感がするので、この術はあきらめることにしよう。

 さて……わたがしを手伝おうかな。

 どこにいるんだろう?


「きゃああああっ!」

「えっ!?」


 沙鬼ちゃんの悲鳴が聞こえ、振り向くと青い何者かに体をつかまれていた。

 あれは角があるから鬼?

 沙鬼ちゃんの里にいる鬼は赤いけど、目の前にいる鬼は体が青い。


「ぐふふ、うまそうな人間を見つけた。おいそこのお前、荷物を置いてとっとと去れ」

「沙鬼ちゃんを離せ!」

「タ、タカシ君……」

「どうやら死にたいようだな……」


 僕がこの世界に初めて来た時と似たような状況だ。

 でも今日は母さんには頼れないし、僕が助けないと。

 頼みの綱はわたがしだけど……どこにいるんだろう?

 もう1度召喚すれば出てくるだろうか?

 でも下手なことをして青鬼を刺激してはまずい……。


「沙鬼ちゃんをどうするつもりだ」

「なかなかめんこい娘よ。連れ帰って嫁にでもしようか」


 絶対に連れて行かせるわけにはいかない……。

 この青鬼は沙鬼ちゃんを人間だと思っているのだろうか?

 沙鬼ちゃんが変身を解けば……いや、赤鬼と青鬼の仲が悪かったら今より状況が悪くなる。

 なんとかわたがしを呼ばないと……。


 そういえば沙鬼ちゃんが言ってたっけ。

 式神使いはお友達と心で会話できるって。

 わたがしに向かって念じれば、声が届くかも……。

 沙鬼ちゃんが危ないんだ……わたがし助けて!


――もきゅっ? たかしくんの声が聞こえる気がする――


 通じた!

 僕だよわたがし、心で会話しているんだ。

 沙鬼ちゃんが悪者につかまってピンチなんだ。

 戻ってきて助けて。


――もきゅきゅっ! すぐもどるのー――


 よし、これで大丈夫だ。

 わたがしに不意打ちをしてもらおう。

 戻るまで時間を稼ごう。

 こういう時ははったりが有効だった気がする……。


「沙鬼ちゃんを離さないと、僕の妖術でお前を倒すぞ」

「お前がか? 見慣れぬ杖を持っているようだな……。それを捨てないと、この娘が怪我をするぞ」

「タカシ君、わたしはいいからやっつけちゃって!」

「黙れ小娘!」

「きゃああっ!」

「沙鬼ちゃんっ!」


 青鬼が沙鬼ちゃんの頬をひっぱたいた。

 はったりで時間を稼ごうにも、人質がいてはどうしようもない。

 僕は杖を地面に捨てた。


「その杖も価値がありそうだな。こちらへ蹴ってよこせ」

「くそう……そらっ!」

「ふふ……これは珍しい装飾だな」


 青鬼は楽勝と思っているのか、完全に油断している。

 これはチャンスかもしれない。


――たかしくん、今鬼の後ろにいるっきゅ。あれ強そうだから、一撃で倒さないと負けちゃう――


 そっか、じゃあ大技を決めてもらわないといけない。

 わたがしが気付かれないように、僕が隙を作らないと。

 わたがし、今から鬼に向かってダッシュするよ。

 だから頼むね。


――わかったもきゅ! 気をつけてー――


 では足に早駆けの術をかけて……。


「ふふ、怖くなって立っていられないか」

「タカシ君、それ危険だよ!」

「む? もしや速駆けの術か!」

「えーい!」


 沙鬼ちゃんも青鬼も、僕が何をしようとしているか気付いたらしい。

 危険なのはわかっているけど、沙鬼ちゃんを助けるためだ!

 僕は青鬼の足に向かってダッシュした。


「くうっ、こざかしい!」

「ぐわあっ!」

「きゃっ!」


 思いっきり蹴られてしまい、僕の腕に鋭い痛みが走る。

 でも青鬼もバランスを崩して転んだようだ。

 沙鬼ちゃんも転んじゃってるから怪我がないといいな……。

 僕もう動けない……後は頼んだよ……。


「わたがしー……流れ星きーっく!」

「なにっ!? ぐわああああああ……」

「もっきゅもきゅー!」

「つ……角があああああっ!?」

「今だわっ! 春眠の術!」


 痛みのせいで状況がよく把握できない……。

 でもたぶん……なんとかなったんだよね?


「タカシ君、大丈夫かな?」

「わたがしが治すよ、もっきゅあー!」


 2人とも大丈夫そうなことに安心して、僕の意識は落ちていく。

 なんだか僕……こんなのばっかりだ……。



   ***



 どうやら僕は夢を見ているようだ。

 だって……もう戻れないはずの家にいるから。

 僕は怪我をして、母さんに薬をつけてもらっているようだ。


「タカシってば弱いのに無理しちゃってもう」

「だって……」

「うん、そうだよね。お兄ちゃんだもんね……よくがんばったよ」


 これはたしか……ゆうすけがいじめられてるのを助けに入った時の記憶かな。

 弟のゆうすけも僕と同じで体が弱かった。

 だからよくいじめられて……助けようとしたけど僕は全然敵わなかったんだ。


「母さん、僕どうやったら強くなれるの?」

「お前はもう十分強いよ。だってあんな大きな相手に立ち向かって行ったじゃないか」

「でも勝てなかった……」

「勝てなくてもいいんだよ。その気持ちが大事なんだから。がんばってればそのうち通用するさ」


 そう言われても、気持ちだけじゃどうしようもないよ。

 結果が出ないと……。


「その証拠にさ、さっきは沙鬼ちゃんを助けることができただろう?」

「え? そう……だね……」

「さあ、怪我治ったよ。あんまり女の子を待たせちゃだめだ。早くお行き」

「うん! いってくる」


 そうだ。

 ゆうすけの時はまだ助けられなかったけど、あの気持ちを忘れなかったおかげで沙鬼ちゃんは助けられた。

 あの時すねてないでよかった……。



「うーん……」

「あ、タカシ君気がついたかな?」

「もきゅう……」


 なんだか頭にやわらかい感触と、僕を覗き込む沙鬼ちゃんの可愛い顔。

 もしかして膝枕されてるのかな?


「たかしくんごめんね、わたがしの魔法だとその怪我治せないもきゅ……」

「動けるかな? なんとか町まで行ってお医者さんに見てもらおう」

「えっと……どこも痛くないよ」


 沙鬼ちゃんもわたがしも心配そうに僕を見ているが、僕は平気だ。

 さっきかなり痛かった腕も問題なく動く。


「すごい怪我だったように見えたけど……わたがしの治療がよかったのかな?」

「もきゅう……?」


 もしかして……母さんがこっそり治療しに夢の中に来たのかも?

 今日は休ませてあげたかったのに、結局世話かけちゃったなあ。

 でもありがとう、母さん。


「僕は大丈夫だよ。それよりあの青鬼はどうなったの?」

「わたがしが角折ってやったもきゅっ」

「それで弱ったからわたしが眠らせたよ。あの術弱った相手にしか効かないんだ」


 見ると、角が根元から折れた青鬼が離れたところで眠っている。

 


「そうなんだ。2人ともすごいなあ」

「たかしくんのおかげもきゅっ」

「そうだよー。タカシ君かっこよかった。でもひやひやしちゃったよ……」

「心配かけてごめんね。わたがしが攻撃する隙を作る方法が思いつかなくて」

「うん、わたがしに聞いたよ。助けてくれてありがとうね」


 感謝されると、なんとも達成感を感じる。

 あとあの青鬼はどうしようかな。


「ねえ、沙鬼ちゃんたちとあの鬼は仲悪いのかな?」

「青い鬼たちはね……。例の大妖怪の瘴気にあてられて少し凶暴なんだ……。だからわたし達の里に攻めてきた人間達は、青鬼の被害者なのかも」

「そうなんだ……なんだか可哀想だね」


 例の瘴気にやられた妖怪ってことは根は悪くないんだろうな。

 やっつけるのもあれだし、寝かせておこうかな。


「うん……。ところで折れた角どうしようか」

「それなにかの役にたつの?」

「うん、いろんな薬になるんだよ。あと旅人長屋で……怖くて言えなかったんだけど、鬼の角を持ってくれば賞金が出るってあったんだ。貴重なものらしいから……お金にはなるよ……」

「じゃあこうしようか。それ貸して」

「うん……」


 僕は沙鬼ちゃんから角を受け取って立ち上がり、青鬼の手に握らせておいた。

 きっとだいじなものだろうし。


「こうやってお金を稼いでプレゼント買っても、母さんは喜ばないと思うんだ」

「タカシ君……優しいなあ。悪くなっても同じ鬼だから嬉しいよ。わたしタカシ君とお友達になれてよかった……」

「うん……」


 僕も沙鬼ちゃんと友達になれてよかった。

 そう言いたかったけど、なんとなく照れて言えなかった。

 さあ、早く仕事の続きをしないと……。

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