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46話



 進化を控えた配下モンスター達の様子をダンジョンマップで確認してみることにした。

 ダンジョンマップには、自分のダンジョン範囲内ならばテレビ画面のようにライヴ映像を見られる機能付きだ。


 最初に映し出されるのは、俺が大まかに支配した地域。つまり島の周囲の海と、海蝕洞窟だ。

 洞窟は現在五階層に分かれ、1~3階層が迎撃用の罠満載の迷路、四階層が人型配下モンスターの住処兼各部門の作業所。これは海中にも繋がっており、ダンジョン外の領域へはここから出撃出来る。ある意味、この階層が一番広くて複雑。

 そして五階層が俺とスバルさん、ポーラの居住区だ。


 ちなみに、最初に設置した地上への扉だが、俺の居住区に残したままにしており、魔力式エレベーターで地上まで直通である。

 勿論、出入り口は偽装してあるし、魔力認証式なので、俺とスバルさん以外には開けることも出来ない。


 周囲の海は今や島をぐるりと覆う形でダンジョン化しており、その範囲をじわじわと広げている。

 まぁ、範囲より深さ優先ね。出来ればさっさと海底までダンジョン化したいもんだ。

 深海まで掌握するには、まだまだ時間がかかりそうだけど。


 ダンジョン化した範囲にサルガッソが繁茂するもんだから、周囲の海と色が変わってちょっと困る。

 せっかくの青い海が、深緑色になってるってどうよ?

 南国の宝石の青のような海が、海草で覆われる。うん、景観が損なわれるよな。

 サルガッソ達も頑張ってくれてるから、あんまり強くは言えないけど。

 もう少し数を減らしてもいいかもな……。

 そこは新しく進化したヤツに種族代表を押し付け……ウ"ッウン"ッ! 任せるから、応相談だな。


 さて、進化目前の個体だが、区別はすぐに付く。

 サルガッソも、要塞ガニも、ミラージュクラムも、一回りから二回りは大きい奴がいる。たぶんソイツ等だろう。

 ある程度強くなってくると知性が芽生え始めるので、コミュニケーション取って、名前を付けて仕事を与えればあら不思議。種族代表の誕生という訳だ。

 今は魚系とタコ型モンスター以外、つまりカロンとエウロパの配下以外は全部俺が管理している。

 スバルさんにも手伝ってもらっているけど、正直目が回りそうなんだよね。


 ただの管理、生き物の世話と侮るなかれ、世話する相手はモンスター、それも毎日10匹、20匹は最低でも増えるのだ。

 いや、配下が増えるのは良いことだし、何より配下達が平和に宜しくやって増えてるんだからさ、止めることでもないんだけどね?


 サルガッソは繁殖力が高く、また外部刺激による進化の変化が大きいので、オクトリッド達と協力して品種改良に励んでいる。毎日何かしらの変化があり、オクトリッドの研究員達はマメに書き出して報告してくれるのだ。


 要塞ガニは定点防御が基本なので、毎日決まった時間にドルフィンライダー隊と合わせた警備報告があり、何か見慣れない物……船や人など……が近づいている時などは緊急連絡網で全員に報告するという仕事がある。当然、判断するのは俺だ。


 ミラージュクラムは幻影の幅を広げるために特訓しており、それを監督するのも俺の仕事である。ダンジョンに寄らずにお帰り願いたい攻略者おきゃくさまが来たときに一番頼りになると思うので、特訓に手は抜けない。


 これに加えて日々DPの為の狩りを平均五時間以上しているんですよ?


 もっと仕事を配下に任せないと死ぬわ。配下って言葉の意味が失われている! おかしい、ダンジョンマスターってもっと知略を巡らせるタイプのお仕事である筈だ!

 毎日の狩りの時間が長すぎるんだよぉ!


 狩りの時間はポーラとの触れあいも兼ねてるんだけどね。

 実際、本格的に狩りをする時間と、ポーラと遊ぶ時間は半々くらい。

 こんなことしたら情が移っちゃって大変なことになると思うんだけど、いつまでも怖がられるのもアレだし、スバルさんは露骨に俺に世話させようとするしで、こうなっている。


 まぁ、最近はおずおずとではあるけど、笑ってくれたり近付いてくれたりするようになった。

 焦らず関わっていきたいね。


 おっと、話がずれた。

 新しいモンスターを名付けるかどうかって話だよな。

 そりゃ名付けますよ。

 注ぎ込むDPはカロンやエウロパと同じ5000ポイント。

 階層の拡張工事で少しDP使ったけど、まったく問題ない範囲で済ませているから、DPは最近余り気味。

 でも、変に注ぐDPで差を付けて後々差別とかになっても嫌だし、配下モンスターの名付けで使用するポイントは統一する所存。


 さて、それじゃあ要塞ガニとサルガッソとミラージュクラムの進化間近の奴等にはダンジョンマップ詳細版で、進化したら顔を出すように伝えておいて、と、俺はそろそろ狩りの時間、もとい、ポーラとの触れ合いタイムだな。


「マスター、そろそろお時間です」


 タイミングバッチリでスバルさんが準備万端のポーラと現れた。

 ちなみに、スバルさんとポーラで同じ部屋、俺は一人部屋です。

 女性と同じ部屋? 出来るかンなもん。寝れないわ。純情ハートのピュア・ボーイを舐めるなよ!


 冗談はさておき、ポーラのケアに時間がかかるのだ。

 正直、俺と過ごす狩りタイムだってきっと苦痛だろうし、ストレス凄いんだろうなぁ、と思う。

 俺も、腫れ物に触るような扱いになっちゃってたって思う時があるし。


 ポーラの装いは動きやすい軽装で固めた冒険者のスタイル、らしい。詳しくは知らない。

 スバルさんに適当にDP渡して、動きやすい服を見繕ってもらっただけだったから。

 彼女は奴隷の間の子として生まれたという経緯があり、一般常識から、何から、色々足りない所がある。

 俺もこの世界に記憶を失った状態で送り込まれて、人様に教えられるほど常識を知っている訳じゃないけど、そんな俺よりもポーラは何も知らないのだ。


 奴隷としてどう振る舞うか、ということだけは教え込まれているみたいだけど。


 まぁ、ポーラに関しては、最終的にダンジョンから離れて自活できるくらいにはしてあげたいと思ってる。

 俺自身の異世界知識、常識については問題ない。いざとなればDPでインストールすればいいだけだし。


「今日からポーラにも狩りに参加させる予定となっておりますが、どのような計画をお考えですか?」


 スバルさんが最近ポーラに過保護です。

 俺の意思を汲んでくれているというのもあるだろうけど。

 俺によりもポーラに情が移ってないかい?

 俺は、ポーラが望むならこんな孤島のダンジョンではなくて、しっかりと人間種が住まう世界に返してやりたいと思ってるんだけど。

 スバルさん、ポーラ離れできるのかね?


「近接訓練よりも、魔法訓練に適正が見られたからな、まぁ、今回は牽制をメインに頑張って貰おうと考えてるよ」


 ちなみに、近接訓練の教官はカロンであり、魔術訓練の教官はエウロパである。

 幹部クラスの配下モンスターは実力も随分上がってきたので、後進の育成にも力を入れてもらっているのだ。

 ポーラは、そのテストケースでもある。


「本来ならば私も着いていきたいのですが……」

「スバルさんは俺の代わりに報告書のまとめ宜しく。それと、ダンジョンオープンまでにもう少し階層を掘り下げて行きたいと思うから、DPに無理の無い範囲での罠や、各層の規模、配備するモンスターの候補何かを宜しく」


 ササッと割り振った仕事に露骨に顔をしかめるスバルさん。

 分かってる。仕事が多いんだよね。

 これは事務仕事や企画などを専門にする部門を作った方が良いかもしれないな。

 現状、ダンジョン運営に携われるのは俺とスバルさんだけだし。


 頭がいいのはオクトリッドなんだけど、種族的に研究開発方面に特化しているからなぁ。

 事務や経理関連で動ける配下を育てるべきかもしれん。


「DPでダンジョン拡張するんじゃなくて、配下増やす? 経営関係の仕事を割り振れるモンスターも必要だよね?」

「そこまで知力が高い配下モンスターとなると、それ専門を育て上げるつもりでレベルの低い内から鍛え上げなければならなそうですね」


 スバルさんがため息を吐く。でも組織ってそんなもんだぜ……。

 仕事を部下に割り振って、自分にかかる負担を減らすために、まずは部下を育てるという負担を背負わなければならない。

 当然、その間は仕事が増えるわけで、部下次第では徒労感ばかりが募るということになる。

 だが、そこを怠れば、半端に部下の教育に時間を取られ、その部下がいきなり仕事を辞めるとか胃に穴が開きそうな展開が続いたりするのだ。

 それで次の部下をまともに育てる気が失せて、新しい部下も辞めだし、結局手間が増えるだけ増えて仕事の負担が減ることもないまま苦痛が続くという負のスパイラルが起こるという羽目になる。


 うん、こんなことを思うってことは、こっちの世界に来る前の俺がどんな生活を送っていたのか、なんとなく分かる気がするな。

 スバルさんには同じ轍を踏ませる訳にはいかん。

 まぁ、DPで召喚したモンスターは、基本的に俺に忠誠を誓ってるっぽいから、指導や教育が徒労に終わるってことはあんまり無いと思うんだけどね。


 そこら辺、どうしていくかはスバルさんと相談だな。


 またまた話が逸れたが、今日の目的はポーラに実践を経験させること。

 ビシバシやってくつもりはないから、まぁ気楽に行こうや、ポーラ。



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