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45話




「――――ということがあったようですね。念のため、領域の外までドルフィンライダーに潜行追跡させましたが、戻ってくる様子はありませんでした」


 俺は、日課の雛達の餌やりをしながらスバルさんの報告を聞いていた。


 ふっふっふ、鳥の赤ちゃん達がピィピィと騒いで餌を求めておるわ。急くでない急くでない。今特製ベビーフードを上げるからねぇ。

 あぁ、癒される。

 そのつぶらな瞳で一心に求められると癒されるわぁ。

 今日のメニューは松の実っぽい木の実とトカゲっぽいモンスターの挽き肉を混ぜ合わせた肉団子よ。隠し味にオリーブオイルと香草を混ぜてみました。

 ふふふ、がっつく姿がまた可愛い。


 ダンジョンオープンまで、あと320日。ダンジョンは今日も平和です。


「マスター、聞いていますか?」

「勿論、耳はそっちに傾いてます」

「それならばいいのですが……、恐らく人間の船団は、今回のことを吹聴して回るでしょう。このダンジョンが明るみに出てしまうのも時間の問題かと」

「まぁ、そうなるだろうなぁ」


 人間の船が領域に侵入してきた場合は、まだオープンしてませんと追い返せ、とカロンに指示を出しておいた。

 忠実に守ってくれたようだな。


「カロンの話では、数は負けていましたが、戦いになれば圧倒できたとのことですよ。新装備を試したかったですね」

「新装備って、エウロパが作った発射銛でしょ? 実験では厚さ5センチの鉄板貫いたって聞いてるんだけど……」

「実戦では、私たちが気づかなかった点に気づけるかもしれませんから」


 そうだろうけどね、出来ればあんな武器は人に向けて撃ちたくないもんだ。


 エウロパ達オクトリッドの強い要望により、オクトリッドには現地調査部門、練金薬学部門、兵器開発部門の三つに分かれることになった。

 当然、五名のオクトリッドだけでは足りないので、DPでオクトリッドを増員です。

 また生活区域の増築だよ、ちくせう。


 各オクトリッドは、自分で好きな場所を選んで勝手に研究開発してるんだけど、エウロパだけは総合監督という名目で全ての部門に顔を出し、色々作ったり、材料探してふらふらしてたりする。


 俺の前では知的でクールなタコ系幼女なんだけど、それ以外では研究馬鹿なのだとスバルさんが言っていた。


 新規立ち上げとなった兵器部門では、作られた武器はカロン達ドルフィンライダーに実際使ってもらい、常に改良案を探している。


 今採用されているのは『毒銛アンボイナ』と銘々された武器。

 アンボイナとは、イモガイという貝のことです。

 体内に毒針を持っている貝で、パイルバンカーのように毒針を射出して魚を獲るらしいね。ダイバースーツを貫かれるほど威力があり、被害に遭う人もいるのだとか。


 50匹10ポイントで召喚できるクラムを育てることでイモガイに派生進化出来るので、材料の調達は楽々。


 エウロパ達にナニカサレタイモガイは体内からではなくて、貝殻の先端から毒針を射出できるようになったらしいので、そのまま武器に加工しました。

 硬く鋭い貝殻で突いて良し、槍として払っても良し、刺した後に毒針を打ち込んでも良し、いざというときの飛び道具として毒針を撃っても良し。

 三拍子どころか四拍子まで揃った素敵武器ですよ。


 しかも、くっついているイモガイは取り外し可能、普段はダンジョンでブルーサハギン達に飼われています。

 ブルーサハギンの通常装備はドラゴンの骨を加工した棍だが、有事の際には棍の先端に仕込んだ識別召喚魔方陣で対応したイモガイを呼び出し、そのまま『毒銛アンボイナ』となるわけです。


「要塞ガニの殻から作った鎧も軽量で動きやすいと評判です。兵器開発部門の予算は増やしてもいいかもしれませんね」

「うーん、あんまり今後の禍根になるようなことはしたくないなぁ、業績争いとかされすぎても困るしね」

「競争がない市場は衰退しますよ?」

「過ぎると毒だよ。まぁ、何事もだけどさ。一応他の部門の反応も気にしておいてあげて?」


 スバルさんは黙って一礼してくれた。

 本当にできたダンジョンコアだ。


「話は変わりますが、要塞ガニ、ミラージュクラム、サルガッソの中に進化を果たしそうな個体が見受けられます。どうされますか?」


 どうされますか、と言われても、何を求められてるのよ?


「彼らも『名付け』を期待している、ということです」

「あー……、そうなるかぁ。なるべく役割が被っていない種族か、人手が足りない種族の穴を埋める方向で強化したいな」

「我々のダンジョンで人手が足りている場所など皆無ですが?」

「はい、分かっております」


 俺なら泡を吹いて失神するような量の情報を整理してくれているスバルさんの前で軽率な発言だった。

 スバルさんからは度々管理職を増員して欲しいと言われているのだ。早く対応しなければとは常々思っている。


 とは言え、管理職に向いている魔物なんているの?


 ブルーサハギン、レッドギルマンは脳筋集団。軍団指揮はできるようだけど、管理とは違う。

 オクトリッドは研究職。頭脳労働が主なのは一緒だけど、方向性が違うよな。


 これから進化するかもしれない魔物達は?


 要塞ガニ。

 名前の通り硬い殻を持ったデカイカニ。これも脳筋臭い。防衛に向いてそう。

 ミラージュクラム。

 霧で幻影を見せるという貝のモンスターだから、魔術師タイプかな? 管理側へに適正はワンチャンありそうだけど、貝だしなぁ。手足がない。

 サルガッソ。

 海中に潜んで、通るものに巻き付き絞め殺す海藻モンスター。海上への攻撃能力はあまり無い。暗殺タイプかな?


 カロンやエウロパの例もあるし、人型に進化する可能性だって大いにあり得るんだよね。


 取り敢えず進化してもらって、何をしたいのか聞いてみるか。



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