39話
と言うわけで『名付け』です。
エウロパもカロンも天体から取ったから、二人の名前もそうしようかね。
方向性が決まるとやりやすいし。
コアさんの名前は一発で決まりました。
『スバル』です。
コアさん改めスバルさんは、元無機物、ダンジョンコアとしての特性なのか、性別不詳綺麗系ボーイッシュなので中性的な名前にしました。
慎んでお受けしますとか言って丁寧に頭を下げていたけど、いつもよりも頬が赤かったぞ。おいちゃん、ちゃんと気付いたんじゃ。
ケモミミ少女の『名付け』も割りと直ぐだった。
スバルさんが言うにはケモミミ少女は獣人――見りゃ分かる――で、種族がユキグマ族と言うらしい。
じゃあもう一つしかないじゃない、と命名。
『ポーラ』です。
北極星であり、シロクマのことでもあるポーラならば、この子にぴったりだろう。
相変わらず濁った目をしていたけど、『名付け』を行ったら少しだけ動揺していたようだった。
何故だ? 嫌だったか?
もしそうならショック!
一応『名付け』はやり直すことが出来るから、最悪変更しますよ。だから嫌だったら言ってくれ。
解除に一度目に使用したDPの二倍が必要になるけど。
スバルさんもポーラも、10000DP注ぎ込んだ分相当強くなっていると思う。
何せ配下たちは『名付け』をしただけで特殊進化みたいになったからな。
流石にダンジョンコアと配下でも何でもない獣人少女は進化しないようだったが。
いやこれで進化されても困ったけどね。
スバルさんはダンジョンコアとしての機能が幾つか開示できたらしい。
以前、ダンジョンコアに捧げるものとしてDPは効率が悪いと言っていたが、それでも10000ポイントは大きかったようだ。
ポーラにも聞いてみたが、無反応。
心の壁はまだまだ分厚く固そうだ。
時間はある。
焦らずやっていこう。
残りDPは22500ポイント。
15000ポイントくらいダンジョン領域の拡張に使ってしまおうかね。
「マスター、お待ちください」
「んぁ、何よコ……っとスバルさん」
「マスターのお名前を教えて頂けませんか?」
俺の名前、ねぇ……。
「いや、俺は無いよ。というか、覚えてない」
俺と思考共有しているスバルさんは知っている筈だが……?
「…………奴隷?」
お、ポーラが話しかけてくれた。
『名付け』で少しは気を許してくれたのかな?
いや、同じ奴隷なのかと同族意識が湧いただけかもしれんな。
あ、なるほど、スバルさんはこのために言ったのか。
ポーラから俺に関わらせる為に。
「いや、俺は奴隷じゃないよ。記憶が全部無いのさ」
「…………ごめん、なさい」
「いやいや、気にすんな。俺はまったく気にしてない」
頭をわしわしと撫でてやる。
ビビクゥ! と震えたけど、俺が手を上げるのは殴る為じゃない。それを知って欲しくて頭を撫で続けた。
「……ごめん、なさい」
それしか知らないようにポーラは繰り返す。
こう言うときは口で言っても伝わらないよなぁ。
かといって行動だけでもだめ。
言動のバランスを上手いこととらないと、こっちの善意でダメージを与えかねない。
そっと壊れ物を扱うように優しく抱きしめ、背中をぽんぽんと叩く。
ポーラはやはり強く震えた。
まだ恐いよなぁ、当たり前だ。
ちょっと行動が急すぎただろうか?
一旦放して距離を置こう。
「…………あ」
「しかし、俺に名前がないと不便か? 別にマスターで良いんじゃないか?」
こっちの様子を伺っていたスバルさんに話しかける。
まずはポーラにはこの環境に慣れてもらうことが先だな。
俺らがポーラを傷付けない、此処は安全な場所だ、ということを覚えてもらわなければ始まらない。
「いえ、配下に名前があり、マスターには無いなど示しが付きません。ここは是非名前を付けるべきです」
「といってもなぁ……、自分で自分の名前を付けるのか、かったるいし、恥ずかしいわ」
「でしたら、私達が考えたものを送らせて頂く、というのはどうでしょうか?」
まぁ、それくらいなら……。
でもあんまり変なのは嫌だからな。
「じゃあ任せる。良識の範囲内で頼むわ」
「お任せください。必ずやマスターに相応しい名前を考えてみせましょう。さぁ、ポーラ、貴女もですよ」
「…………?」
お、そこでポーラに振る?
HURM ...
なるほどなるほど、そういうことね?
了解、おいちゃん分かったよ。
俺への『名付け』、期待してるぜ、ポーラ。