35話
結局、カロン達に救助されてきた人間はケモミミ奴隷少女の一人だった。
他にも人間は居たそうだが、皆死んでいたとのこと。
ご冥福をお祈りし、ダンジョン領域の外へ流すよう指示しておいた。
きっと他にも沢山居たのであろうケモミミ少女奴隷のことを考えると胸が痛む。
奴隷商人の方は知らん。きっと脂ぎって腐った親父に違いない。鮫の餌にでもなれ。
そう言えば、ブルーサハギンたちはモンスターだから人間を食べるのかと思ったけど、別に好んで食べるものじゃないらしい。
いつもは貝や海草、小魚等を取って食べているそうだ。
それって共食いじゃね?
「ダンジョンモンスターはダンジョンのマスターに強く影響されるのです。ブルーサハギン達の食の好みもそうなのでしょう」
ケモミミ少女の体を拭いてくれていたコアさんの説明が入りました。
まだ気絶しているけど、濡れた服のままでは風邪を引いてしまう、と服を着替えさせることになったのだ。
この流れ、既に読めていた俺に隙はない。
露骨に俺に任せようとしてくるコアさんを華麗にかわし、着替えを押し付けてやった。
女の子の服脱がすなんて無理に決まってるでしょう!
ヘタレなんだからさ!
胸さわったけど、あれは確認の為に必要なことなのであって、後の悲劇を回避するための不可抗力なのです。
「それで結局、この者を世話するということで良いのですね?」
「まぁそうなるね。着替えは三日分出しといたから、なんとかなるでしょ」
「ダンジョンコアが人間の世話をするなど、前代未聞ですよ」
「そう言わないで、後でチョコレートケーキを奢るからさ」
「……500DP相当で手を打ちましょう」
「質? 量?」
「当然、質です」
コアさん、段々性格が良くなってきているな……。
良いことなんだけど。
そうこうしている内に少女の着替えは完了したようだ。
俺は目を背けていたよ。当然ね。紳士としての嗜みです。
「まだ目を覚まさないな」
「肉体的、精神的に疲労が濃いのでしょう。それと、マスター、一応お耳に入れておきたいことが……」
コアさんが言い淀むのは珍しいな。
あんまり良い予感はしない。
「この少女はどうやら性奴として扱われていたようです。体の数ヵ所に外傷、そして体内に男性の体液が確認出来ました」
「……綺麗にしてやってくれ」
「既にしています。ですがそういった者の治療は時間がかかります。改めて問いますが、本当に面倒を見る気は御有りですか?」
奴隷、と判断できた時点でそういうこともあるだろうとは思っていたけど、実際言葉として聞かされると、なんだろうね、嫌な気持ちになるね。
でもコアさんがこの女の子を食糧としてではなく、治療すべき相手と認識してくれているのが分かって嬉しいわ。
チョコレートケーキに釣られただけじゃないよね……?
コアさんはあんまり表情が変わらないから、なかなか判断に困るわぁ。
「ここで匿うからには治療の途中で投げ出すなってこと?」
「少し違います。一度関わってしまえば、お優しいマスターは最後まで面倒を見てしまうでしょう。それは重荷になりませんか? それほど情が移っていない今を逃せば今後ずっとこの娘と関わることになりますよ? ということです」
あんまり変わらない気がするけど。
要は俺の負担になるから、ダンジョンのことをロクに知らない奴は排除したいということか?
ダンジョンコアとしては、侵入者をいつまでも入れておく状況が居心地が良いとは言えないだろうし。
だが、すまん。
一度関わってしまえば、と言うなら、俺はもうその子に関わってしまったのだ。
情なんて、とっくに移ってる。
ていうか、コアさんだってもう分かってるでしょうに。
だからこそ俺にこの子の境遇の話をしたんでしょう。
「この子が此処に飽きるくらいまでなら、養ってやってもいいさ。ダンジョンコアを養ってるんだ、もう一人増えても変わらないよ」
「では、色々と揃えなければなりませんね」
コアさんは、反対意見など最初から無かったかのようにスパッと切り替えて動いてくれる。
本当にありがたい相棒だ。
「それではマスター、早速DPを稼いできて下さい。最低でも5000DPは欲しいですね。魔冷泉の掃除と水汲みもお忘れなく」
コアさん、やっぱり怒ってる……?
ご不満だったでしょうか?
何も言わずこちらに向かって微笑みながら手を振る我が相棒。
その無言の圧力に尻を蹴られるようにして、俺はダンジョンを後にするのだった。




