27話
パチパチと油の弾ける音。
食欲をそそる、肉の焼ける匂い。
思い出したように体が空腹を訴える。
目が覚めた。
固いベッドの上で身を起こして、体を伸ばす。
「ッあ~……、よく寝たわ」
「おはようございます。といっても今は夜ですが。食事の準備が出来ています、すぐに食べられますか?」
寝起きから肉かぁ。
しかも油っこそうだな……。
いや、贅沢は言うまい。折角コアさんが準備してくれたんだ。喜んで頂かなければバチが当たるわ。
「あぁ、頂きます。それと、配下の連中はどうなった?」
「進化に必要な量は充分に食べた様ですね。とりわけ内臓系を食したオクトパス達が強く進化しそうです」
オクトパスは唯一の300ポイントモンスターだからなぁ。
強くなりやすかったのかね。
生活用水で顔を洗ったあと、
木製のテーブルに着き、コアさんが焼いてくれた肉を食べる。
うぅん、血生臭い。
ドラゴンの肉だろうけど、狩ったあとに血抜きなんてしてないからなぁ。ついでに言うなら、肉は固く、異様に筋張っている。
お世辞にもいい肉じゃないな。
ファンタジー小説ではドラゴンの肉は美味いってことが多かったんだけど、これははっきり言って不味い。
塩胡椒で味付けがなかったらとてもじゃないが食えないな。
うん、歯の隙間という隙間に肉の筋が挟まりやがる。顎も吊りそう。
二、三切れでもう結構ですわ。
余った肉切れは小鳥たちにでもあげてしまおう。
喉に詰まらせるといけないから、『新生活応援セット』の中にあったナイフで筋を切って食べやすい大きさに分けておく。
ほれ、小鳥ども、腹一杯食うがいい。
「お口に合いませんでしたか?」
「食うために狩った肉じゃあ無かったからね。次は食用になるように、もっと上手く狩るよ」
コアさんも食べながら口のなかをもにゅもにゅやっている。
アレは歯の隙間に肉の筋が挟まったんだな。
ふふふ、擬人化していなければその感覚は味わえまい。
小鳥たちに肉を切ってやるついでに、枝を削って爪楊枝を作る。
「ほれ、これを使って取るといいよ」
「ん、ありがとうございます」
俺はコアさんが食事をしている間に進化するモンスターのリストでも確認しておこうかね。
そう思ってリストを開いたんですがね。
驚いたことに、俺の仕事は全部終わっていた。
モンスターたちが勝手に進化していたのだ。
『配下モンスター進化』のスキルを使わなければ進化出来ないんじゃなかったのか?
「マスターが配下一匹一匹の進化に煩わされるのは嫌だとお考えでしたので、配下自身に選ばせるように設定を変更しておきました」
お、おぅ、有り難いが、事前に説明が欲しかったぜ……。
面倒だとは思ったけど、ちょっと楽しそうとも思っていたのに。
まぁこうなってしまったものはしょうがない。
モンスター自身が自分の目指す形に強くなっていくのも面白いだろう。
彼らは次のように進化していた。
・リトルフィッシュ×100
→レッドフィッシュ ×150
・シーグラス×200
→サルガッソ ×500
・クラム×100
→ミラージュクラム×200
・ミニキャンサー×10
→アーマーキャンサー×30
・キャンサー×30
→要塞ガニ×30
・ブルーフィッシュ×30
→ブルーサハギン ×30
・オクトパス ×5
→オクトリッド ×5
DP低めのモンスターは繁殖もしたようです。
こんな短時間で繁殖!? と思ったが、保有魔力が濃すぎる
敵を倒すとこうなることがあるんだと。
各モンスターの説明をしていくと――――
・レッドフィッシュ
火炎属性を持った珍しい魚。
名前の通り、ウロコが赤い。
水中でその実力を発揮することは難しい。
・サルガッソ
海藻が長年魔力を浴び続けてモンスター化したもの。
水中に落ちた獲物に巻き付き、溺れさせる。
・ミラージュクラム
口から霧を吐き幻を見せる二枚貝のモンスター。
単体では驚異ではないが、群れで霧を吐かれると非常に厄介。
・アーマーキャンサー
硬い甲殻を手にいれたカニのモンスター。
生半可な武器や魔法を弾いてしまうほど防御に優れる。
・要塞ガニ
巨大な体を硬質の甲殻で覆ったカニのモンスター。
砲弾でも硬い殼に傷一つ付けることができない。
口から毒の泡を吐く。
・ブルーサハギン
サハギンの中でも上位種。
武器を器用に使い、連携を取って獲物を狩る知恵を持ち合わせている。
水陸どちらでも暮らせるが、水中の方が動きが早い。
・オクトリッド
高い知能を持つ人型のタコモンスター。
独自の文明と魔法体系を持っており、プライドが高い。深海には彼らの都市があるという。
こんな感じですね。
サルガッソが異様に増えたので否応なしにダンジョンを広げなければならなくなりました。
要塞ガニもでかすぎてダンジョン化していない海にいるっていうし。
DPは余ってるからな。
配下モンスター強くなったし、ここはダンジョン拡張といきますかね。