20話
残りDP50
うん、後悔はしていない。
雛たちの怪我を治す為に『モンスター救急キット』が必要だったんだもの。
『救急キット』に100ポイント。イモムシをダンジョン内で殺して50ポイントです。
でもこれで雛たちの怪我は治った。
今はお椀にガーゼを敷いた簡易的な巣で眠っている。
餌に関しては小魚の中でも小さいのを選んであげれば良いだろう。野菜くずもあるし、栄養は問題ない。
はぁ、潤沢なDPで生活するにはまだまだ足りないな。
そしてコアさん尻を蹴られる形で再び地上にコンニチワ。
もう怖いだのトラウマだの言ってられない。
ハサミムシレベルのモンスターを狩らねばDPが本気で枯渇してしまう。
俺の食料やライフラインもDPに頼っているのだから、DPの枯渇=死なのだ。
ビビってる場合じゃない。
だが問題はハサミムシ、もしくはそれ準じる強力なモンスターが何処にいるのかということ。
恐らく森の中なのだろうが、あんまり深くに入ってしまうと帰り道を見失う危険もある。
出来る限りダンジョン付近で狩りをしていきたいね。
後は、罠だな。
モンスターを捕らえる罠を設置して適当に引っ掛かるのを待つ。
あんまり期待していないが、まぁ上手く行けば御の字ということで。
『大海魔法』で穴を掘り、その中に水牢仕込んでおく。
パッと見はただの水溜まりだが、誤って踏みつけたり、中の水を飲もうとすると水牢の中に引き込まれてしまうというものだ。
術者である俺が離れてしまうので、水牢の強度も下がるが、問題無いだろう。
ハサミムシクラスのモンスターがこんな罠にかかるとも思えないし。
いくつか罠を設置しつつ森の奥へ。
帰り道が分かるように木に切り傷とか付けました。
なんか冒険っぽくて良いね。
フルーツも集めながら進んでいくと、何だか開けた場所に出た。
その中心には綺麗な泉。
水が光っているかのような美しさだ。
あぁ、癒される。マイナスイオンがざばざば出ている感じがするわ。
ここで飲み水や生活用水を確保出来るな。いつまでも消費の激しい水をDPに頼りたくないし、これは良い発見なんじゃないか?
コアさんに取り込んでもらって、俺が飲んでもダイジョウブかどうか判断してもらいたいので、水筒に水を汲んでおこう。
泉の水を汲むために屈んだ、その時だった。
がさり、と茂みを掻き分ける音がして、ちょうど泉の反対側に何かが現れた。
トカゲ? うん、外見は完全にトカゲ。
だがデカい。
トラックくらいあるんですけど。
陸上競技のトラックじゃないよ? 乗り物の方だよ?
ハサミムシといいイモムシといい、この島の生き物はなんでもかんでもデカいのかよ!?
それに背中には退化したの小さなコウモリのような羽が見える。
頭には丸く短い角。
わぁ、まるでドラゴンみたい。
そいつはのっそりと鈍重動きながら泉に近付くと、水をごぶりごぶりと飲み始めた。
どうやら俺は眼中に無いらしい。
あっぶねぇ、ドラゴンとか絶対勝てないわ。
だけど、性格は温厚?
問答無用で襲ってこないんだから、狂暴ではなってことだよな。
じゃあ俺も少し水を拝借して、すぐに帰ろう。
こんなのと争うことになったら命がいくつあっても足りないわ。
ちゃぷり、と水筒を水に付けた瞬間。
「グァ!?」
驚いたようにドラゴンが顔を上げた。
その目がしっかり俺を見ている。
何?
何よ?
俺、何かした?
もしかして泉に触れるのは厳禁だった?
「グァアアアアアアアッ!」
そうだったみたいです。