02話
『本日は“異世界転生斡旋事務所”をご利用いただき誠にありがとうございました!』
水晶に触れると、そんな声が聞こえてきた。
機械音声じゃ無いな。
何だこれ、通信装置か?
俺が驚いている内に、水晶はどんどん話しを進める。
『お客様はDコース。前の世界の記憶をリセットしてやり直すコースを選択されましたので、改めて説明させて頂きます。まず、御理解してほしいのですが、お客様が現在居る場所は、貴方様の知識にある世界・日本ではありません』
その言葉に俺は愕然と…………
…………
…………しなかった。
自分でも拍子抜けするくらい何も感じ無かったのだ。
今の俺は自分に関する記憶が殆んど無い。
だが、異世界に居ると聞かされて、まるで最初から知っていたかのように受け入れることが出来た。
あ、そうなんだ。ふーん。
程度の驚きしかない。
それは、俺が望んでこちら側に来たからなのだろう。
……俺は、余程前の世界のが嫌いか、興味がなかったんだな。
いったい何があったのか少し気になるが……、まぁ、こうなってしまった以上どうでもいいか。
きっとロクでもない記憶だろうし。
『さて、こちらは異世界。剣と魔法を人間が振るい、魔物が歩き回るファンタジーワールドでございます。お客様はそこでダンジョンマスターをされたいと申されたのです。ダンジョンマスターについて説明をもう一度受けますか?』
もう一度も何も、説明を受けた記憶がまったくないぞ。
当然、イエス。
『ダンジョンマスターとは文字通りダンジョンの支配者となります。ダンジョンとはいわば迷宮型の無機生命でありまして、お客様はその頭脳となって魔物を生み出し、罠を配置し、宝物や魔力を餌に生物を引き寄せ、ダンジョンを養う存在でございます』
何それ超疲れそう。
本当にそれ俺が望んだの?
めっちゃメンドイんですけど。
しかも養うって……。
俺が養って欲しいわ!
『ダンジョンは侵入してきた者の魔力や命を食べて生きていますので、お客様は定期的に生物をダンジョンに誘い込む必要があります。ダンジョンが成長すればそれだけ多くの食事が必要となりますので、頑張ってくださいね。詳しくは当社より販売しております“決定版 誰でも分かる! ダンジョンの育て方”を御参照下さい』
おいおい、購入しろってか。
金なんかねぇよ。
そもそも世捨て人みたいに異世界に来たらしき人間に現物求めるんじゃないってーの。
『お客様は最初からダンジョンマスターを選択されていたので無料でお配りいたします』
お、ラッキー。
どうやら職業? で何を選んだかによって特典が変わってくるとか、そういうことがあるみたいだな。
他にもあるのかね?
ま、その前に説明の続きを聞かなきゃな。
『ダンジョンの設置場所のついてですが、まずはこちらをご覧ください』
水晶から光が溢れて、空中に映像が映り始める。
おぉ、凄いな、まるで航空写真だ。いやライブ映像か。
雲が流れているし、鳥が飛んでいるもんな。
この島? を上空から映したものが俺の目の前に展開された。
映像は段々地表に向かい、島の絶壁に割れ目のようにして出来た海蝕洞窟に侵入、俺の背後まで来ていた。
振りかえるが、何もない。
魔法があるんだから、監視魔法みたいなのもあるんだろう。
『お客様の現在地をご確認出来たでしょうか?』
出来たね。スゴイ出来た。
つまりここは四方見渡す限り水平線の広がる海で、陸地はない。
俺の居る洞窟のある島だけが唯一の陸地。
他にもぽつぽつ島はあった様だけど、海鳥が僅かに居る程度。
つまりここ、絶海の孤島なのです。
ダンジョンに獲物を呼べないじゃん……。




