4,無題
―夢を、見ていた。
僕と流香が、初めて出会った時の夢。
たしか、あの時、僕達は何かよくわからないものに、殺されそうになった時のこと。
那和が泣いていた。
僕も泣いていた。
そんな時、流香が現れて…―
よくわからないそれは、流香から逃げた。
そして、流香は何を思ったのか、流香は流香を殺そうとした。
そして、僕は何を思ったのか、流香を助けてしまった。
「邪魔をするなら殺します」
「邪魔をしないと君が死ぬ」
「ではまず貴方から殺します」
「それは、いや」
「では邪魔をしないで下さい」
「それも、いや」
「わがままですね」
「わがままだよ」
「貴方、名前は?」
「九条 朋夜」
「では朋夜、」
―私は、貴方を、殺します。
それは、今も昔も上手くイメージ出来ないが、とても嫌な響きだったのを思い出す。
「何で?」
「貴方が私の邪魔をするから」
「そう」
「……死にたいんですか?」
「死にたくないよ」
「なら……」
「でもね」
夢で見た、とても懐かしい昔話は、僕の知る限り、そこで途切れてしまった。
◆
頭の芯まで響くような目覚時計の電子音に、深く沈んでいた意識が浮き上がる。
一番最初に目に飛び込んだのは見慣れた自室の天井。
目を何度か開閉させて、まどろみにもがいてみる。
それでも、何となく体が重く、嫌に気怠い。
体が、まだ睡眠を欲しているのが明らかだった。
「……ふぁ」
あくびを噛み殺しながらも、体を起こす。 カーテン越しに入ってくる日の光が妙に憎らしく感じる。
「……やっぱり、夜遊びなんてするもんじゃないや」
そう勝手に自己完結して、僕はまたベッドに横になる。
目覚めたばかりの意識は、再び深いまどろみの中へと、そのまま抵抗もせずに沈んでいった。
ども、婀羅洙です。
これを書いているのは朝の電車で終点まで寝る気満々の婀羅洙です。
そんなことはさておき、今回は主人公達が出会った時の夢のお話。
これはもう別のお話への伏線っぽいですが、
明らかにメインです。
伏線どころじゃありません。このお話の芯です。
まぁ、このお話を読んでちょっとした違和感や矛盾点を覚えるアナタ、……多分気のせいです。
軽く右から左へ流して下さい。
まぁ、次回からはあらすじでもある『秘密』に遠回りながら近付いていこうと思います。
では、次回『過剰睡眠』で、またお会いしましょう。