小説家になろうの読者の方に読んで欲しい事 解答編
このお話はフィクションです
夜中に目を覚ました。
アルコール中毒の基準の一つに起きた後の迎え酒をするかどうか、というのがある。そういう意味で起き上がりでPCの電源を入れる様は紛れも無いテクノ中毒だが、それをツッコむような人間はこの場にはいない。
静かで暗い部屋の中、モニターの中で立ち上がるWINDOWSの画面をなんとなくで眺める。カラフルなパーツが踊り踊って一つに集うようなロゴは、WINDOW7というOSバージョンを意味する。芸のない政客(≠政治家)が愛国心を売り物にするかのように迷走した8は却下だ。インターフェースがやたらとわかりにくくなったWORD2010でさえ持て余しているのである。売れないポータブルデバイス用にカスタマイズしたクソOSなどお呼びではないのだ。
とりんぴんぽん、としか形容のしようがない起動音。無論マウスはデスクトップのブラウザで待機済み。エクスプローラーにネットスケープ、ファイアフォックスとブラウザを変えるのは使い手が移り気なのではない、普通に使いにくくなったからだ。世界に名だたるグーグル開発のクロームもいずれは初期ブーストを終えた小説のように、WEB歴史の底へと沈んで行くのだ。
そして開くのはニコニコ動画でもYOUTUBEでも18禁サイトでもやおいポータルでも2chでもない、小説家になろうである。
トップ画面の上にあるログインを押すと、毎日開いているのを証明するかのようにマイページがパスワードの入力画面なしでご開帳。
書きもしないのに小説を読もうに移行しないのは何故か、物書きの性か、そもそも何ヶ月も小説を書かない生き物がそれだと言えるのか。
半年前に書いた連載小説。お気に入り4件。18ポイント。
頭を抱える。自分で入れた5点5点が忌々しい。未だにアカウント削除されていないのが運営にお前は相手にする価値もない雑魚だと言われているようで気が滅入る。
ズラーと執筆中小説に並ぶ続編や新作のタイトル。開くまでもない。全て適当に入力した1文字しかない、自分への言い訳にすらならない進行中の虚しい建前。
小説家になろう。小説投稿サイト。その設立は2004年と意外と年季が入っている。当初は凡百の投稿サイトの一つであったはずのこのサイトは、今や累計ランキングのTOP10に載ったが如くWEBサイト界の覇者となっている、と言っても過言ではないだろう。
何人かの作家を大手出版社に取られた挙句、儲かるのなら自分で出版しちゃえと考えたサイトのTOPに戻って日間ランキングをクリック。どうせまた地球では取り柄も根性も仕事もない、よく考えると何で神様がこんなのを、というツッコミが尽きない感じで選んでこれでもかっていうほどエコ贔屓するのだ。一人にとっての神様でも、他の人間にとっての邪神なのである。そんな邪神でもいいから選んでくれ、という奴が佃煮にしても海に捨てるしかないほど湧いているのが現実であり、このジャンルがウケる原因でもある。自称社会学者なら未来のない閉塞感を覚えた若者が、という但し書きでも付けるのだろう。
そしてそこに疑問を覚えた時、いわゆるニート転生俺つえーというジャンルは個人の中で終焉を迎える――俗に言う卒業である。が、『ニート転生俺つえー』を別の何かで置き換えても特に支障がないという事は、作家たちの間でもあまり知られてない。
勿論ありふれた題材で大成した挙句にプロにまでなる奴もいるが、それは創り出した方が凄いのであって猿真似をしても、と思う。ジャンル自体に意味はない、料理法にコツがある、ともっともらしく言ってみる。そういや何時かの業界最大手の編集者も大賞のコメントで、応募される作品の半数が最近ブレイクした作品のパクリだと言ってたような気がする、とりあえず読んで衝動的に書いて勢いがなくなった頃に筆を止めるというのは理解できなくはないが、大賞への応募にVRMMOモノを投稿するのは多分アウトであろう、というのは薄々とわかる。これでVRMMOモノを書いたのが黒歴史になる掴みがオッケーである、ざまあ見ろ。
よし、各方面への喧嘩は売った。
が、一つ問題がある。
ここまで考えておいて肝心の小説は一文字たりとも進んでいない。
何かを書きたい。それは面白い小説を読んだり、暇を持て余した時には殊更にそうだ。
そんな時、ランキングの上位に一つの小説が目に入る。
何々? 小説家になろうの読者の方に読んで欲しい事。
うむ、言いたい事はわかる。しかし案の定感想欄に踊る読者からの総スカン、作者からのわかるわーコール。
しかし。
これだ!これが欲しかったんだ!
この瞬間、自分はパンサー戦車を見た時のアドルフ・ヒットラーとなった。電撃戦の構想が如く閃きが留まる事なくキーボードの連打となる。キーボードの寿命がすり減るのも気にしない。キーボードというのはこと小説を書く事に限定した場合、安い方がリズミカルでテンポがよいのである!散々ディスっておきながらウィンドウズなポータブルデバイスがほしいと思ったのはここだけの話だ! 一時間で書き上げた駄文、その下に鎮座おわす上書き保存に投稿を脊髄反射でクリックする。
匿名で書き殴った本音が、恐らくは日間ランキングの自己更新という悲しい現実を味わったであろう作者よ、悲しむ事はない。
ネタにする奴が、ここにいる。
そして代わりに叫んでやろう、貴様はこれが言いたかったのだろう。
聞け、読者共よ。
俺の小説を読めええええええええええええ!
ドンドンドンドンドン!
『うっせーぞクソニートが! 朝っぱらから叫んでんじゃねえ! あと聞けか読めかハッキリしろこのスカタンが!』
アッ、ハイ。
フィクションだってば