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宮廷物語  作者: 卯月弥生
第一章 蓮実鉄次
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帰りたかった場所

家族とも次第にうちとけてきたオレ。

そんなある日“男”の仲間だった男達がやってくるが、

腑抜けたオレを確認すると嘲笑い帰っていったのだった。


 平穏な毎日が過ぎていく。

 山賊どもはその後、姿を見せることも無く、オレは心の底からホッとしていた。

 オレは自嘲気味に笑った。

 ここまで来て、また、あんな奴等にオレの毎日が滅茶苦茶にされるとしたら…オレは一体どうしていたのだろうか?

 紅玉から男達の話を聞いた紅麗は、酷く顔色を悪くしたが、オレのいつも通りの様子を見て、ひとまずは安心したようだった。

 …オレが『帰りたかった場所』はここだったのだろうか?

 漫画も、ゲームも、スマホもない。

 確かに初めの数日は、そんな生活も悪くないと思った。だけど…

 …いや、もうそのことについて考えるのはやめよう。

 たぶん、もう、戻れないのだから…


 その日も紅麗は学校に行き、オレと紅玉は庭で洗濯をしていた。

 いつも母親を手伝っていたのだろう。紅玉はてきぱきと洗濯を進めていく。

 紅玉が洗った着物をオレに手渡す。オレは物干しに着物を干す。

 突き抜けるような青空の、気持ちの良い朝だった。

 紅玉の柔らかな手が、オレの手に触れる。

 子供というものは、なんて柔らかくて、温かいのだろう。

 しかし先日の山賊達にひるまない、紅玉の堂々とした態度には度肝を抜かれた。

 紅麗と紅玉を見ていると、両親はよほどしっかりした人物に違いない。そのうえ、おそらく美男美女の間に生まれたのだろう。兄弟である紅麗もオレもまぁまぁの面構えだが、中でも紅玉は見れば見るほど愛らしく、将来は村一番の、いや、もしかすると国一番の美人になるかもしれないとオレは思っていた。

 家族の欲目かな?

 そんなことを思いながら、オレと紅玉は縁側に腰かけ、一休みをしながら、林につながる庭を眺めていた。すると庭の奥のほうに三匹の親子連れと思われる、猫のような狸のような動物が見えた。

 紅玉が顔をほころばせながら、しきりに指差しながらオレの着物をひっぱる。

 初めは動物に対して興奮しているのかと思ったが、紅玉の指先を見ていると、次第にそれが、もっと違う意味を含んでいることに気がついた。

 動物のお父さん、お母さん、子供。

 オレを指さし、そしてここにはいないけど、と、遠くを指さす。そして自分。

 一緒だよ。と。

 お父さん…。お母さん…。自分…。

 お父さん、お母さん、自分。

 オレ、紅麗、紅玉。


 オレが…

 オレが、父親なんだ!!!!!


次回は2月8日土曜日15時に掲載予定です。

昨日は節分でしたね。近所のスーパーの豆まきへ行ったのですが、

皆さんの豆拾いの真剣さに今年も胸打たれ、圧倒的な敗北感を

感じながら帰宅しました。でも四袋(一袋五個入り)拾えて嬉しかったです。

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