真実は日のもとに
紅姫の心は痛みで張り裂けそうだった。物心がついた時から桂は紅姫の側にいたのだ。
一緒に遊んでくれた桂。
転んで泣いてしまった紅姫を抱きしめる桂。
母である紅梅貴妃が崩御した時、ずっと、ずっと抱きしめていてくれた桂。
なぜか不思議と子供の頃の思い出ばかりが、紅姫の脳裏によみがえってきていた。
「ならば…」もうよい。
と言いかけた紅姫を月影が制した。
「長く紅姫に仕えてくれたそなたに、こんな真似をせねばならぬことは不本意だが、問いたださねばならぬことがあるのだ」
そう月影は桂に告げ、紅姫を見た。その目には日陰の死を無駄にしてはいけません。という強い力が宿っていた。
はっ
(そうだった)
この尋問には日陰の死、そして多くの民を戦火の渦に叩き込んでしまうかどうかがかかっているのだ。
紅姫は一時とはいえ、自分の情に流されたことを恥じた。
紅姫が頭を振ると、しゃらしゃらと耳飾が鳴った。
「桂…」
「紅姫様」
目を大きく見開き、桂は紅姫を見た。顔をそむける紅姫。
それが合図かのように、月影が中庭にかかっていた遮光布を開いていった。
薄暗かった皇座室に日の光が差し込んでいく。
「これを見ても真実をあかす気にはならぬかな。桂よ」
桂が声にならない悲鳴をあげ、顔を大きく歪ませた。
「伽羅(きゃら)!!」
先週の金曜日はお休みさせてもらいまして申し訳ありませんでした。
諸事情により、なかなか続きを書けなくて残念に思っています。
予告は出来ませんが、書ける時に少しずつでも書いていきたいと思っています。
ではまた。




