桂と紅姫
紅姫の皇座室に呼び出され、姫に見下げられていた桂は落ち着き払っていた。その様子が月影には余計に恐ろしかった。
桂は臆することなく無礼にも紅姫を見据えていた。
「桂…」
紅姫の脳裏には数々の思い出が浮かんでは消えていった。
実の母が急逝した紅姫の側で、いつも仕えていた桂はただの女官ではなかった。
紅姫の心中を察した月影が口を開いた。
「そなたの出生に偽りがあった」
「…」
「そなたが宮中にあがる際は『水ノ国』出身の妻を嫁にした『木ノ国』の夫との間の娘であり、その兄弟がそなたの身元保証人ということであったが、身元保証人をこの国に見つけることはできず、そなたは『鉄ノ国』出身であることがわかった」
月影は誰にも口をはさませることなく言い切った。 桂が少し微笑みを浮かべたように月影には見えた。が、それは光の加減だったかもしれない。
「私はこの国に生まれ、この国で育ちました。それ以上も、それ以下も言うべきことはありません」
堂々と言った後、桂は紅姫に言った。
「姫様、どうか私を信じて下さい」
紅姫に動揺が浮かんだのであった。
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家族の病気の為、予告通り昨日投稿することができませんでした。
申し訳ありませんでした。




