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宮廷物語  作者: 卯月弥生
第一章 蓮実鉄次
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おびえとため息

異世界で別の男の体に自分の意識が宿っていることを知った鉄次は、

夢か現実かもわからないながらも、その男として少女に付いて行く

ことにしたのだった。


 少女にとってはいつもの道なのだろうが、オレにとっては不安、驚愕、開き直り、色々な心持ちと共に歩み、目を覚ました小屋から、途方もない時間が過ぎたように感じた。

 疲れた…

 ふと、周囲に目をやると村人達が、ひそひそと物陰からこちらをうかがっている。あまり良い感じはしない。が、自分以外のことに気持ちが向けられるようになると、村人以上に少女の態度が気になった。ケガを負った家族を心配するものとは少し違っているように感じる。

 もしかしたらオレになにか不自然さがあって、警戒されているのではないかと思うと、心細さはこの上なかった。今、この少女に見放されたら、オレは一体どうなってしまうのだろうか?

 村の外れになり、家もまばらになってきた頃、少女はある家の前で足を止めた。

 この家も、大体今まで見てきた家々と同じようだが、少しさびれた感じを受けた。

 道から玄関までを外階段をあがる。

 扉に手をかけると、こちらから開く前に扉が押し開かれ、一人の幼女が中から笑顔ですべり出てきた。幼女は何か話しながら少女の胸に飛び込んだ。

 三人兄弟か…いや、この分だともっと兄弟姉妹がいるかもしれない。

 幼女を抱かかえた少女にうながされ、オレは家の中に入った。


 家の中を見回すと、村を歩いている最中に気がついてはいたが、簡素というか、ここも予想通り、あまり金のある家とは思えなかった。

 しかし家の中に入ったことで気持ちは緩み、疲労感が襲ってきた。

 どうしたものかと、痛くもなかったが頭を撫でていると、少女が板の間に上がるように手を引いてくれた。

 板の間には囲炉裏があり、囲炉裏のある部屋を囲むように台所と思われる場所が見えた。

 奥にはさらに板の間が続いていて、奥の部屋の物入れから少女が布団を出して床にひいてくれている。

 オレを布団に寝かせた後、少女は囲炉裏部屋との仕切りを作るために、戸袋から戸をガタガタと引き出していた。オレは少女に礼を言おうと、布団に起き上がり、少女の動きを目で追っていた。

 今まさに戸が閉まる、その瞬間。

 少女の表情に、ハッとした。

 今まで感じていた少女のよそよそしさは、警戒ではなく、おびえ、だ。

 カタン と、戸が閉まる。

 …一体、この二人には何があったのだろう…

 いや、そう思えば幼女がオレに向けていた瞳にも、少女と同じものが浮かんでいたように思える。

 「ふぅぅ…」オレは大きくため息をついた。

 今は考えてもわからない。

 少し休もう。そして、起きたらまた考えよう。

 オレは布団にごろりと転がり、目を閉じた。


お読みいただきまして、ありがとうございます。

次回は1月31日金曜日15時に掲載予定です。

話は変わり、小説とは別のことなのですが、

今朝、声優 永井一郎さんの訃報を知り、大きなショックを受けました。

心からご冥福をお祈りするとともに、感謝の気持ちを伝えたいです。

私には永井一郎さんが波平さんであり、ミトじいでした。

すごく悲しいです。今まで楽しませていただいてありがとうございました。

私事を書き連ねてしまい申し訳ないです。

では、また小説の中でお会い出来ることを楽しみしております。 


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