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宮廷物語  作者: 卯月弥生
第一章 蓮実鉄次
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オレはやはりオレではなかった

事故で頭を打った蓮実鉄次は異世界の小屋の中で意識を取り戻す。

言葉の通じない男達に囲まれ途方にくれていたが、一人の少女に手を引かれ

小屋を出たのだった。


 夕暮れの村をオレは少女に手を引かれながら歩いて行く。少女は年も近そうだし、オレの家族で姉か妹だろうか?小柄だが意思の強そうな黒い瞳をしている。

 オレは目を閉じ、大きく深呼吸をした。

 さっきから何かが微妙にズレているような感じ…違和感がある。

 まぶたに温かさを感じる。これは知っている感覚だ。

 太陽。

 ホッと息を吐き出し目を開けると、山の稜線にかかる夕日。

 オレはゆっくりとあたりの風景を見回して、あまりにも予想通りで少し笑った。

 田んぼ、木で出来た小屋、土の道。

 高床式とでも言えばよいのだろうか?オレが子供の頃、夏休みに連れて行ってもらった高原のロッジを思い出させるような丸太小屋が並んでいる。

 村の雰囲気は、そう活気に満ちているとも思えないが、酷く貧しいとも感じなかった。夕暮れが寂しい空気を作り出しているが、朝を迎えれば、そこそこの村といった感じだ。

 …本当にここはどこなんだ?

 日本とは…とても思えない。今でも、昔でも、とにかくオレの知っている日本ではないことは確かだった。

 もしかしたら大地震が原因で、何故かまでは説明出来ないけど、アジアのどこかの国へ運ばれたのだろうか?この少女も、小屋の男達も顔はアジア人のものだと思う。

 顔…

 オレははっとして、自分の顔がうつせそうなものを探した。鏡…いや、違う。そんなものはたぶんない。水…川…

 キョロキョロし出したオレを、不安そうに少女は眺めていたが、ともかくあの違和感を、いや、しっかりしろオレ!本当は今も感じているだろ!?この違和感。

 手、腕、足。これは本当にオレのものなのか?

 オレは道外れに小川が流れていることに気がついて、走り寄った。

 !!!…


 この衝撃をどう表現したらいいのだろうか…

 思い通りに動く手、しかし、その手で撫で回しているのはオレの顔ではないのだ。

 意思と、体がバラバラになりそうだった。


 布団の中で感じた違和感は気のせいではなく、オレはやはりオレではなかったのだ。


 川べりで自分の顔を確認したオレは、衝撃の大きさから頭が働かなくなり、ふらふらと少女の後をついて歩いた。

 これで、オレがオレでなくなったことは確定したんだ…

 では、今思考しているオレは、なんなのだろう?

 意識だけがこの男に乗り移ったのだろうか…

 救いなのは、この男がまぁまぁの良い顔の男だってことかな。

 フフン。オレは自分で自分を鼻で笑った。

 …もしかしたら夢なのかもしれないし、なにもわからない今、出来ることは一つのように思えた。……この男になってみよう。


読んで下さった皆様、誠にありがとうございます。

次回は1月28日火曜日、15時に掲載させてもらいたい

と思っています。

続きにご興味を持っていただけましたら、ぜひご覧いただけましたら、

と思います。



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