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宮廷物語  作者: 卯月弥生
第二章 紅姫
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失策と良策

紅姫と話し終え、政務官室に入ろうとした月影は、皇位継承権第一位を持つ白姫と、

白姫付き第一政務官の紫雲に出会ったのだった。


赤宮政務会議が始まった。

会議と報告会には合わせて、大きく三種類あった。定例の赤宮政務報告会。おもに現在の行政状態について、政務官が紅姫に報告をするものだ。ただし、この間のように自分の考えを告げる事も、紅姫に限ってはあった。

 次がこれから始まる赤宮政務会議。これは紅姫を中心に紅姫の配下に入っている政務官、政務補助官で行われ、おもに紅姫の領地についての政治について会議されるが、大会議にむけて行われる場合も多い。

 そして大会議。黄玉帝(おうぎょくてい)を中心に、この国『木ノ国』全体の政治について会議される。

 この『木ノ国』には二人の姫がいることはご存知だと思うが、政治の最終決定権はまだ黄玉帝にあった。だが領地は二つに分けられ、二人の姫、紅姫と白姫が各々のやり方での政治統治下にて村や町は営まれていた。

 会議そのものは、実に粛々(しゅくしゅく)と進み、紅姫の『秋の神移り』での輿降りの儀に特に強く異を唱える者もなく、今日もつまらないまま会議が終わるのかと、月影が思ったその時、若い政務補助官の一人が恐る恐る手を上げた。

「なんだ?」

「おそれながら、田上の民の移動を命じるのは姫様でなくても良いのではないでしょうか?例えば領地管理官ではだめなのでしょうか?」

 若い政務補助官の発言に、会議の場では政務官同士、互いの顔を見やっている。おそらく皆も同じことは考えたのだろうが、悪い慣習で、なかなか姫様がいる場では発言しないのだ。

「うむ、昨日も言ったが、民の納得という点で、私が命を出して領地管理官の口から伝えられるだけでは不満が大きく残ることになるであろうと、私は、考える」

 紅姫のゆっくりと、一言、一言、まるで自分に言い聞かせるように話し、その言葉に、皆、大きくうなずいた。若き政務補助官も、大きく頭をたれた。紅姫の考えに納得したということだろう。

 そして、赤宮政務会議は終わったのであった。

 

 会議の最中、恐恐(こわごわ)だったが質問を投げかけた、政務補助官の一人、清流(せいりゅう)が一人会議の室に残っていた月影に近づいてきた。彼は、青年というより、まだ少年のようなか細さが残っていたが、その目からは強い知性が感じられる。

「なにか?」

「月影様、あれ以上の質問に気が引けてしまったのですが、田上の民が土地を移るにあたって、大きな問題があと一つ残っておりますよね。土地が変われば…」

 清流の話を最後まで聞くと、月影は答えた。

「もちろん気がついておる」

 月影は微笑んだ。

「紅姫様は?そのことに関してのご発言がありませんでしたが?」

「紅姫様はおそらく気が付いておられないだろうな」

「なぜご進言なさらないのですか?」

「こたびの案、確かに悪いものではなかったが、紅姫様は詰めが甘い。そして他の者もほとんどの者がこの穴に気が付いておるだろうが、わざわざ進言しなかった…まぁ皆が紅姫様を慕って配下についているわけでもないからな」

「では、月影様を含め、政務官たちは紅姫様をおとし…」

 清流はそこまで言いかけ、月影を侮辱する言葉を言いそうになった自分を戒めた。

「清流…お前は、正しい者だな」

 月影の言葉と今まで見たことの無いような慈愛に満ちた表情に、清流は顔を赤らめた。

「別に姫様を困らせたい訳ではないから大丈夫だ」

「では明日の大会議では?」

「案ずることはない。もう手は打ってある」

 月影は不敵な笑みを浮かべたのであった。


皆様、ご機嫌いかがでしょうか?

わたくしごとで恐縮なのですが、どえらい風邪を引いてしまい難儀しております。

皆様も、どうかご自愛下さること、切に願います。

次回は明日、3月2日日曜日15時に掲載予定です。


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