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宮廷物語  作者: 卯月弥生
第二章 紅姫
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五行の国と月影

紅姫の成長ぶりに驚きつつも、その背後に存在する白蓮の

存在が気に入らない月影。

そんな二人が宮中の庭園で言葉をかわしたのだった…


 この世界は『五行ノ国』(ごぎょうのくに)と呼ばれていた。

 月影は自分の目で確認したこと以外は、あまり信じないようにしているが、『木ノ国』(もくのくに)の武官学校で教えられた話では、この世界には五つの国があり、各国の計測隊が計測出来た分では、その陸地は実際に五角形の形をしていたらしい。そしてその五角形の陸地を海が囲っている。

 五角形の中心部にあるのが『財ノ国』(ざいのくに)。

 『財ノ国』を囲うように、北に『木ノ国』、右回りに『土の国』(どのくに)、『火の国』(かのくに)、『鉄ノ国』(かなのくに)、『水ノ国』(すいのくに)が五角形にかたどっている。

 月影は『財ノ国』の出身だった。

 白蓮と別れてから一人、赤宮の見晴台(みはらしだい)から、眼下に広がる村々を見ていた。右手に見えるのが田上を含む紅姫様の領地。左手が白姫様の領地であった。

 月影の国であった『財ノ国』はこれといった産業がなく、月影は自分の幼少期を思い出すと、いつも飢えていた印象が強い。若い者は、決して豊かに実ることのない土地を捨て、他の国へと出て行こうとするのだったが、『財ノ国』から出国する審査は厳しく、国から出ることも出来ずに、飢えと病に一家心中に追い込まれていく者たちを月影は何度か目にした。

(なぜ、あのような不毛な地に『財ノ国』などと皮肉な名をつけたのだろうか?)

 どうにか『木ノ国』へ出国出来た月影は、『財ノ国』には隠し財宝がねむっているのではないか?という憶測が、他の国々では流れていることを知った。

 そう言われれば、あの国には「禁忌」になっている場所が多くあった。

 『財ノ国』の王族たちはそれを知っていて、自分たちは私腹を肥やしていたのではないかと思うと、今でも飢えていた自分の子供時代を感傷深く振り返るのであった。

 

 月影が武官として『木ノ国』で採用され一番驚いたのは、国を治めているのが女帝だったということだ。

 当時『木ノ国』を治めていたのは白姫の母親である白梅輝帝皇妃(はくばいきていおうひ)ということに表向きはなっていた。だが、体が弱い白梅妃の代わりに政治を動かしていたのは、白姫、紅姫の父親でもある黄玉帝皇(おうぎょくていおう)であった。

 そして、黄玉帝の政権は白梅輝妃が亡くなった後も、白姫が帝になることが出来る十八歳まで続くことになっている。

 紅姫の配下になったことを、月影は、今は楽しんでいた。

 初めこそは、皇位継承順位第二位、それも皇族の出ではない女性の産んだ庶子で、ほぼ帝になることはないとされている紅姫の配下である政務官の下働きと聞き、少々落胆もしたが、自分も政務官専門の学問を修めていたわけではなく、先に述べたように、月影は当初武官としてこの国に採用されていたので、下働きをしながら政務官の勉強をするには丁度良い環境である気もした。多くの者が政務官を目指していた中で、声をかけられた月影は幸運だったと言えるであろう。なんといっても政務官は給金が格段に違うのだ…月影は喜んで、武官から政務官への官替えをうけたまわったのだった。 

 それが、いつの間にか第一政務官とは。

 目の前を通り過ぎた一羽の蝙蝠に、月影は我に返った。

 黄昏時に、夕日なんぞを眺めていたせいで、つまらぬ感慨に浸ってしまった…

 月影は頭を振った。

 こんな所でぼんやりとしている場合ではない。

 至急、各村の長へ伝令を出さねばならぬ。

 月影は足早に政務室へと立ち去った。

「五行の国」は五行思想から発想を得ておりますが、

実際の五行思想の形とは違うかたちで、国の名称に使っています。

今回も読んで下さいまして、ありがとうございました。

次回は2月の26日水曜日に掲載を予定しています。

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