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天才と凡才 4







シファネ国際魔法学園は全寮制だ。いくら近くに孤児院があるといえど、今日からは寮生活だ。

さみしくないといえば嘘になるが、新たな生活にはやる心ももちろんある。

アルカナは人だかりから離れ、寮がある方へと一人歩き始める。





…が、突然ぐいっと手首を引っ張られた。思わず体が後ろに傾くが、そこは引っ張った本人が支えてくれた。





「……どこ行く気?」





引っ張ったのは案の定といおうか、ユアンだった。どうやらこの短時間であの人垣を抜けてきたらしい。

手首を掴む手が痛くて軽く手を振ると、あっさりと手首は解放された。




「…ユアン?お話はもういいんですか?」




アルカナの言葉にユアンは形のよい眉を潜める。明らかに不機嫌なのが分かる。





「はぁ?なんであんな低脳どもとお話しなきゃならないのさ」



「…さようでございますか」





低脳て……

あなたどんだけ他人を見下してるんですか……



だいたいあんな美人さん方に囲まれて何が不満なのかがさっぱりわからない。

にこにこ笑いながら会話していたくせにどの口が言ってるんだか。呆れて声も出ない。





ユアンは人当たりは良いのだが、かなり人間嫌いな所がある。先程のような台詞を言うのも珍しくはない。

いつだったか、アルカナは自分の方が明らかに低能ですけどね。と言ったことがある。


その時は…





「君は低脳じゃなくてただの馬鹿だから」




などという訳の分からない返答が返ってきた。


正直、頭の弱いアルカナにはユアンの言葉の意味なんてさっぱり今でもわからない。



「…アルカナ?どうかした?」



でも、それでも彼女たちではなく自分を選んでくれたのだ。

何となく心があったまるものがあって、ついクスッと小さく笑ってしまった。



「……?」



笑うアルカナに、ユアンは訳が分からないといった風に首を傾げる。

と、そこでふとアルカナはユアンに言おうと思っていたことを思いだしてぽんっと手をたたく。





「そういえば、偉そうに主席合格だったんですね。非常に苛つきますがおめでとうございます」


「………」




……あれ?



自分としては素直に誉めたつもりだったのだが、どうやら素直になりすぎたらしい。


ユアンが冷めた視線をアルカナに向けながら静かに口を開く。




「…君さ、敬語だったら何言っても良いって思ってない?」



「いいえ、今のはちょっと口が滑っただけです」





*****





(…口が滑った…ねぇ)




実際、口が滑っただけなのだからユアンも救われない。



しかし…それでも、先ほどの奴らと話すよりもよっぽど良いとユアンは思っている。



他の誰よりもアルカナが良い。


鈍い相手は自分のことを家族のようにしか思っていないのだろうけれど…



(…困った奴だよね、ほんと)


ユアンは呆れながらも、楽しそうに笑った。













アルカナとユアンは同じクラスになった。



一学年1000人、一クラス50人という中、同じクラスというのは奇跡だと言える。




これもアルカナの運がなせる技なのか、それとも…



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