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プロローグ

 異世界とはなんだろう? 言葉から察するに異なる世界だろう。うん、まんまだ。


 今まで何度か耳にしていたし、ちょっとだけ憧れもあった。剣と魔法とか、ハーレムとか、勇者とか、魔王とか。特に剣と魔法とハーレムに強い憧れがあった。


 だって女の子と付き合ったこととかないし、中三から引きこもりだから出会いなんてあるわけないし。


 剣とか振り回して、魔法とかズバーッとだして、可愛い女の子の頭を撫でてにっこり微笑んだだけで、好きです、みたいな。


 まあ、現実はそんなことあり得ないし、見知らぬ女の子の頭とか撫でるの無理だし、もし撫でたとしても、キモ、とか言われそうで怖いし。



 ようするに、僕とは最もかけ離れた世界だというか、だからこそ妄想して楽しんでいるというか、というより妄想じゃないと困るというか。


 ということで、今僕は非常に困惑しつつも現実を受け入れられずにいるというか。


「でも、意外と冷静に思考を巡らせている自分に驚きを隠せない」


 気が付いたら異世界、なんてことは現実にはないでしょう? もしあったとしても、せいぜい海外とか、何故そこが異世界であると判断できるのか疑問だというか。


 まあ、僕がここを異世界だと判断した理由は至極簡単であり簡潔であり僕の人生においてあり得ないことだから。


「あの……大丈夫ですか? あの、顔色が悪いようですけど、具合が悪いのなら家で休んでください」


 ふふふ、これ誰? 気が付いたら知らない場所に立っていた、なんていうのはどうだっていい。そんなことはどうだっていいんだ。


 何故僕の目の前に女の子がいる? 何故僕にさっきから話しかけている? 女の子から話しかけられるのなんて小学校の三年生のとき以来なのですが?


 だから思ったわけだ。ああ、夢か、ってね。でもね、なんかね、夢っぽくないわけなんだよね。そしたらさ、残りの選択肢は二つなんだよね。


 ああ、こりゃあ死んだか異世界かな? って。


 でも、死後の世界も異世界って言えば異世界なわけで。だとすると、選択肢は一つになるわけで。


 だとするとだとすると。


「あ、あの……」


「きた……」


「へ? きた、ですか? えーと、北? それとも来た? あの、すみません。わたし、孤児でして、学校に行ったたことがないんです。あ、頭が悪いので、難しいことはわからな――」


「異世界来ちゃったんですか僕ーっ? ないわーっ! 異世界はないわーっ! どうすんのこれーっ! ああ、僕も頭が悪いんで問題ないです女の子さんっ!」


「ひゃあっ!」


 あはははっ、なんだこれ全然意味わかんないんだけどっ! 異世界っ? ないわー、それはないわー。


 ってまずいっ! 勢いで目の前の女の子さんに話しかけてしまったっ! しかも僕がいきなり話しかけたせいで女の子さんが尻餅をついてしまったっ!


 あ、謝らないと、謝らないと変態とか言われてしまう。いや、僕が変態というのはあながち間違いでもないけど、ってそうじゃなくてっ、女の子さんを襲ったと勘違いされて警察に摑まってしまうかもしれないっ。


 でもどうしよう? 謝るにしても話しかけないと。そうするとまた悲鳴を上げられるかもしれない。キモいとか言われて叩かれるかもしれない。


 僕なんかが話しかけると不快な思いをさせてしまうかもしれない。


 こ、このまま黙ってお辞儀をして、この場から去ったほうがいい。それが一番無難だ。


 今までの人生、空気だった僕は空気らしくさっさといなくなろう。


 いまだに尻餅をついている女の子さんに向かってぺこりとお辞儀をして、そのまま全力ダッシュをかけるために後ろを振り返った。


「ご、ごめんなさい。わ、わたし……変なこと言っちゃいましたか? そんなつもりじゃ……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」


 後ろから聞こえる不思議な声。今まで聴いたことがない言葉。でも、今までたくさん言ったことのある言葉。


 ごめんなさい。引きこもる前の僕が、何度も何度も口にした言葉。


「お、女の子さんが悪いんじゃないです。ぼ、僕が全部悪いので……」


「ご、ごめんなさい、自己紹介がまだでしたね。わたしはリーナです。苗字はありません。ただのリーナです、勇者さま」


 ど、どうしよう? 僕が悪いのに何故か女の子さんが責任を感じてしまっている。なんて言ったらいいのか全然わからない。どうしたらいいのかわからない。


「ぼ、僕はその……」


「はい、勇者さま」


「えーと、その……」


「はい、勇者さま」


 ……ん? あれ? 


「えーと、あれ? ゆ、勇者?」


 へ? どういうこと? 勇者って何? 



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