♥彼の意識と…
南の熱も下がり、それぞれが通常業務に戻りました。都会から来た少年少女達は、毎朝の牛の世話や、麦の刈り取り、野菜の収穫等を経験して、機械や合成食材に頼りきりの生活から脱却して、若者本来の健全さに戻って行きました。
麦畑の真ん中に額の汗を拭いながら立ち尽くす田中は、ぽつんと一言呟きました。
「暮らせる…よな…」
その様子を見ていたリンダが、彼に駆け寄って来て「どうしたの」と尋ねました。
「あ、いえ、何でも無いですよ。今日も暑いなぁって思って」
「ん~そうだね、暑いけど気持ち良いよね」
「はい、気持ち良いです」
田中の目にはリンダの姿が煌めいて見えた。農場で働く彼女の姿はこの上も無く魅力的に見えました。
「さ、もう少し、頑張ろう」
リンダはそう言って煌めく笑顔を残して田中の前から去って行きました。その姿が、脳裏に鮮明に焼き付いた。トウモロコシの様な薄め。彼女にぴったりの表現だと思いました。
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陽が落ちて、夕食も済んで、以降は自由時間なのですが、田中はノートと筆記用具を持ってミルおじさんと食堂で何事かを話し合っていました。
「なんか、あいつ、スイッチはいっちゃったんじゃぁ無いのかい?」
ミルおじさんから熱心に農業についてのレクチャーを受ける田中の瞳には、本気の気迫が見られました。
三人組が、この星に訪れたのは、地球でで有ったリンダの事が忘れられずに、もう一度会いたい一心でここまで来たのです。農業体験は二の次で、リンダの顔を見る、ここにこの研修の目的が有りました。
そして目標は達成されて毎日楽しくリンダと暮らしている訳ですが生活するなら地球だねと言う意識に変わりは有りませんでした。
しかし、田中は、その目的が変わって来ているらしく、つまり農業そのものにも目覚めてしまった訳でした。




