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♥彼氏の気持ちと彼女の気持ち

 自然の中での休日は、都会人の五人にとって、開放的で心地の良い物でありました。鈴木は被写体を求めて、高原を走り回り心の赴くままにシャッターを切って行きます。

 佐藤、田中はフリスビーを持ち出して、互いに投げ合い、子供の様にじゃれ周り、南と夏子は文庫本を取り出して、のんびりと読みふけり、リンダは、そんな皆の間をちょこまかと動き回っておりました。

 「リンダさん、これこれ!」

 鈴木が少し悪戯っぽい表情でリンダの鼻先に小さな川蟹をひょいと突き出しました。

 リンダの動きが一瞬止まります。そして…

 「わぁ、おいしそう!」

 鈴木が盛大にずっこけます。彼は『可愛い』とか、逆にい『やぁ~』とかいう反応を期待して、その瞬間をカメラに収めようとしたのですが、まさか『おいしそう』という反応は予想していませんでした。

 「これ、茹でて食べると美味しいんだよ」

 リンダは本気でした。皆が、その野性的な様子に、一歩引いてしまいました。

 「鍋、持って来れば良かったかな、そう言えば、川蟹のシーズンだったわね」

 その発言に、皆の視線がリンダに集まる。改めて、野性的なお譲さんであると言う事を実感した一瞬だった。

 

          ★☆★☆★☆


 その日の天気は急変する事も無く、リンダ達は、光源の休日を満喫しました。地球にいた時は、休みと言えば、家で寝ているかゲーム化、良くてクラブに出掛ける程度の生活でしたので、屋外に一日居ると言う経験は、とても貴重な物で有りました。

 「地球でも、探せば、こんな環境で有ないにしても、少しは外で過ごせる空間が有るかも知れないわね」

 夏子の言葉に皆が賛同します。陽が傾きかけようとする時刻、帰路に就くそれぞれの表情は明るく生き生きとした物でした。リンダは、この時間が長く続く事を、心から祈っていました。


          ★☆★☆★☆


 次の日の朝、リンダは何時も通りに、牛達の世話をする準備をして、食堂に降りて行きました。

 「おはようみんな」

 食堂には、既に南意外の面々が揃い、仕事に出かける準備の真っ最中でした。

 「あれ、南は?」

 リンダはその声に、皆が、顔を見合せます。

 「全く、しょうがねーなー、起こして来るよ、ちょっと待ってな」

 田中がそう言って、南の部屋に向かいました。そして暫くしてから、彼がばたばたと食堂に戻って来ました。少し焦っている様です。

 「なんか、熱有るみたいなんだけど」

 田中は、ちょっと困った表情を浮かべながら、皆に向かってそう言いました。

 「あらあら、それはイケないわね」

 今度はメイおばさんが南の部屋に向かって急ぎ足で歩いて行きました。


          ★☆★☆★☆


 南の熱をメイおばさんが測った結果三十七度六分、と確かに熱が有りました。

 「急に力仕事をしたから、少し疲れたかも知れんな。熱が下がるまでゆっくり休むことじゃな」

 ミルおじさんはそう言うと夏子を見て更にこう言いました。

 「夏子さん。今日は南君の傍にいてあげてくれますか?」

 夏子はリンダとアイコンタクトして、ちょっと済まなそうな表情を浮かべつつも南の事が心配と言う、複雑な表情で、皆に向かって、こう言いました。

 「ごめんね、悪いけど、今日は…」

 そう言って南に視線を移しました。

 「うん、大丈夫、みんな、南がいない分も頑張って、お仕事しましょう」

 そう言って三人組とリンダは元気に母屋を出て行きました。

 「夏子さん、取りあえず、冷やしてあげましょうね。あと、薬も飲ませて暫く様子を見ましょう。もしもあんまり下がらない様だったら、主人に言って病院に連れて行って貰うわ」

 メイおばさんはそう言って、南の部屋を出て行きました。部屋にはベッドに横たわる南と夏子の二人きりです。

 夏子は、勉強机から椅子を引っ張り出すと、ベッドの傍らにおいてゆっくりと腰掛けました。そして、南の顔や頬に手を当てて、やはり熱いのを実感しました。

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