♥夏子の思い、南の思い
激しい雷雨は、あっという間に過ぎ去りました。後には舞い上がった土のにおいと、洗い流された草のにおいが残ります。
リンダ達は連れ立って母屋の外に出て見ました。雲の隙間から幾筋にも分れて地上に降り注ぐ日の光は、自然の息吹を皆に教えてくれました。
「綺麗…」
夏子は幻想的な光景を目に南の肩にもたれかかりながら眼前に展開される自然の営みに心が奪われました。それ程遠くない昔。地球にも自然が有って、人の手が入れらていない風景が有った筈なのに、人間はそれを、全て人工物に変えてしまったのです。
人間にとっては理想的な居住環境と成りましたが動植物に対してはどうなのでしょう、今と成っては後戻りできない人工の環境は、これからも、そのまま受け継がれていく事でしょう、それは仕方の無い事でした。
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星空の見える夜空。それは何度見ても感慨深く幻想的で、心打たれる物でした。
昼間の雨で草木が荒い流され性でしょうか緑の香りが辺り一面に漂います。そして虫達の音。
夏子とリンダ有連れ立って星空見物をしていました。
「地球でもこんな空が見れたら良いのにね」
リンダは牧場の柵に頬杖をついて星空を見上げます。ミルキーウェイがはっきりと見える夏空は、何か願い事を唱えれば叶えてくれるのではないかと言う位、幻想的で美しい夜でした。
「そうね、地球でもネオンや照明が消えれば、多分見える筈なんだけど…」
夏子も星空を見上げつつそう言いました。
「処で、南の事だけど…」
リンダは少し改まった口調で、夏子にそう切り出しました。
「――彼、少し雰囲気変わったでしょう?」
夏子はそう言いながらリンダに向かって視線を移します。リンダは夏子の瞳を見て小さく頷きました。
「良い事だと思うわ。自分の事を少し曝け出せる様に成ったの。以前はじぶんの殻の中に閉じこもって、割れた隙間から世間を見てる感じが有った」
リンダは、うんうんと頷きます。
「でも、その殻も最近剥がれて来て、冷めてた部分が無くなって、性格も少し丸くなって…良い意味で大人になったのかなぁって思うわ」
「大人…かぁ」
「ねぇ、リンダは、大人になるって、どんな事だと思う?」
夏子の質問にリンダはう~んと考え込んでから夏子に向かってこう答えました。
「人と仲良く出来る…事かな…」
曖昧な表情でそう答えましたがリンダには未だ大人になると言う実感は沸きませんでした。
「そうね、リンダ、それは大事な事だと思うわ」
夏子は優しく微笑みながら、リンダに向かってそう言いました。




