♥フィールドワーク
朝食が美味しいと感じるのは、皆が初めての経験かも知れませんでした。空腹は、食べ物に対する一番のスパイスでした。皆、メイおばさんが出した物を美味しそうにたいらげます。それを見たメイおばさんは、皆に向かって言いました。
「やっぱり、体を動かすのは良いでしょう?特に若い頃はね」
確かにこの充実感は癖に成るかもしれないと思いました。頭だけで考えるのでは無く、それを行動で示す。重要な事だと皆、感じた様です。
朝食が終わって皆で暫く休憩ひた後。六人は蓋手に分れます。三人組は牧場の整備、南、夏子、リンダは収穫直前の麦畑に出掛ける事に成りました。
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都会っ子とは言え、男の子は押し並べて、機械に強い物の様です。
ミルおじさんから一時間ほどレクチャーを受けた南は、大型コンバインの操作方法をマスターした様でした。今日はこれから一日、麦刈が続きます。
「南、がんばれ~」
刈り取りが終わった畑の上で、リンダと夏子が南の様子に声援を送ります。
「やっぱり、頭の良い子じゃな」
ミルおじさんの正直な感想でした。一度教えただけで、全てマスターしてしまうんだそうで、ミルおじさん曰く、大きな戦力に成るだそうでした。
リンダと夏子は、コンバインが刈り取った残りの麦藁をトラックで回収します。大きな束に纏められた麦藁を積み込むのは、結構な柔道ろうです。
「ダイエットに良さそうね」
汗だくの夏子が首にかけたタオルで顔を拭きながら、ちょっt辛そうな表情をリンダに見せましたがリンダは慣れているからか、全く動じません。
「これ位、へーきへーき」
相変わらずの笑顔です。夏子はリンダに励まされながら、ちょっと危ない手元、足元で作業を続けて行きました。
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重労働の一日は何とか終わり、夕食も済んで、夏子と南は母屋を出て降り出しそうな位綺麗な星空を見に、二人連れ立って母屋を出ました。
「う~~ん、未だ、筋肉が張ってるわ」
夏子が自分の腕を自分で揉みながら、ちょっとぶ~たれた表情で南に向かって、そう言いました。
「なんだ、ダイエットじゃぁ無かったのか?」
「もう、ダイエットどころか、筋肉付いてマッチョマンになっちゃいそうよ」
夏子は微笑み、そう言いながら南の顔を横から覗き込みます。その笑顔は、地球では見せた事の無い、安心しきった表情です。
都会の夜は有る意味暴力的です。喧騒と闇の中に、何が潜んでいるのか予想がつきません。しかし、この星の夜は、穏やかで柔らかです。星達が見詰める甘い夜。こんな雰囲気は都会のネオンでは味わう事が出来ません。静かで空気が済んだ環境だからこその雰囲気でした。
「なんだよ…」
「ん、ちょっとね、顔色、少し良いかなって思ってさ」
夏子は南の髪の毛を掻き上げながら、ちょっと安心した表情でそう言いました。予想以上に暗い夜です。はっきりと確認できた訳では有りませんが目の輝きが、ぎらぎらの棘々から少し柔らかくなったなと夏子は感じていました。南は、母親が子供にする様な行動を取る夏子に、少し狼狽します。
「よせよ、子供じゃないんだから」
少し不満そうな表情でそう言いましたが、南にとって嫌な行動では有りませんでした。あったかい彼女の掌に安心出来るし、出来れば、もう少しこのままでいたいと言うのは、正直な気持ちでした。
「ねぇ、南…」
夏子の表情に、悪戯っぽいっ少女の顔が現れます。彼女は周りを見て、誰も居ない子尾を確認すると。
「ちょっと、失礼」
そう言って、南の唇に自分の唇を重ねました。南は全身がざわめく様な、感覚に襲われて動く事が出来なくなりました。
闇の中では人間は大胆になる物だと言う事を南は知りました。
夏子は南の唇から離れると、やはり悪戯好きの少女の表情で、南の頬にもう一つキスをしてから
「じゃあね、又、明日。寝坊しないでね」
そう言って、右手を振りちょこちょこと後ろを振り返りながら南の前から去って行きました。後に残された南は何が起こったのか理解出来ずに、その場に茫然と立ち尽くしました。
虫達の声が闇夜に響きます。
乾いた風は、火照った頬を優しく撫でて行きます。南は右手人差し指で、自分の唇を弄ってから満天の星を見上げ、夏子の行動の意味を改めて、考えました。




