致命傷
フィオナの手元で、光が収束する。
材料が、一つずつ溶け合っていく。
赤い液体。白い粉末。そして、星霊術。
すべてが混ざり合い――一本の注射器に、収まった。
透明な液体。
だが、その中には微かに光が渦巻いている。
「……できた」
フィオナは、それを握りしめた。
手が、震えている。
身体中が、悲鳴を上げている。
薬の効果が――切れかけている。
「フィオナ!」
王の声が、遠い。
視界が、揺れる。
だが――
「まだ、よ」
フィオナは、ティアナを見据えた。
「まだ――終わってない」
一歩、踏み出す。
その瞬間――身体から、力が抜けた。
「……っ!」
膝が、崩れかける。
星霊術の増幅が、途切れる。
光の紋様が、一気に弱まった。
「……時間切れ、ね」
ティアナの声。
影が、再び膨れ上がる。
光の鎖が、砕ける。
ティアナが、解放される。
「フィオナ、下がれ!」
王が、叫ぶ。
剣を構え、ティアナの前に立ちはだかる。
だが――ふらつく足で、前に出る。
注射器を、強く握りしめる。
ティアナに、向き直る。
「お母様――!」
駆け出す。
まっすぐに。
ティアナは、動かない。
ただ、静かに――フィオナを見ている。
その手に、影が集まる。
黒い魔力が、形を成していく。
長剣。
刃のない、影だけの剣。
だが、殺傷力は本物以上。
「フィオナ!」
王の叫び。
だが、フィオナは止まらない。
止まれない。
ここで止まったら――もう、二度と――
ティアナの目が、揺れる。
一瞬だけ。
そして――
「……邪魔よ」
影の長剣が、突き出される。
正面から。
フィオナの腹部を――貫いた。
「――っ」
息が、止まる。
痛みが、全身を駆け巡る。
視界が、白く染まる。
「フィオナ!」
国王が叫んでいるのが聞こえてきた。




