死闘の始まり
張り詰めた空気を、先に断ち切ったのは王だった。
剣を、ゆっくりと下段に落とす。
力を溜める構えではない。
迎え撃つための構え。
王が、前に出た。
「……へえ」
ティアナが、目を細める。
「今さら、前に出てくるのね」
王は答えない。
床を踏みしめる。
瓦礫の上でも、剣先は一切ぶれない。
次の瞬間。
王が、踏み込んだ。
速い。
先ほどまでの剣速とは、明らかに違う。
無駄を削ぎ落とし、力を一点に集中させた動き。
ティアナは影で距離を取ろうとする――が、
「遅い」
王の剣が、影の展開位置を先読みして突き抜ける。
黒い魔力が弾け、火花のように散った。
「……っ」
ティアナの腕が、わずかに遅れた。
その隙を、王は逃さない。
斬るのではない。
叩く。
剣の腹で、肋の負傷側を正確に打ち抜く。
衝撃が、内部に響く。
「――ぐ」
今度は、はっきりと膝が沈んだ。
フィオナが、息を呑む。
一撃。
二撃。
刃は深く入らない。
だが、ティアナの体勢を確実に崩していく。
「……なるほど」
ティアナが、低く笑った。
次の瞬間、黒い魔力が爆発的に膨れ上がる。
王は、弾かれた。
壁に叩きつけられる直前、体勢を捻り、床に着地する。
だが、肩で荒く息をする。
「陛下!」
フィオナが叫ぶ。
「わたしに構うな!」
即答。
「いけ!!」
王は剣を支えに立ち上がる。
(……まだ、いける)
身体は重い。
だが、目は死んでいない。
ティアナが、ゆっくりと姿勢を正す。
血が、床に落ちる。
「やっぱり」
吐き捨てるように。
「あなたは、厄介ね」
王は、剣を構え直した。
「娘に、背中を預けるのは――」
一拍。
「悪くないな」
フィオナの剣に、星の光が再び集まる。
王が前線を張る。
フィオナが、後ろから“決めにいく”。
役割は、はっきりした。
ティアナは、それを見て、楽しそうに目を細める。
「……いいわ」
黒い魔力が、再び濃くなる。
「まとめて、相手してあげる」
三者の視線が、交差する。
次の瞬間――本当の死闘が、始まった




