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薬の材料

フィオナは踏み込んだ。


星の光を纏った剣が、今度は斜めから振り抜かれる。

速さではない。

逃げる判断そのものを遅らせる圧が、空間ごと叩きつけられる。


影が盛り上がり、ティアナの足元から引き剥がそうとする。


だが、星霊術の光がそれを縫い止めた。


「――っ」


初めて、ティアナの身体がはっきりと弾かれる。

壁に背が触れ、衝撃で石が鳴った。


フィオナは止まらない。


二撃目。


踏み込みと同時に、星の紋が床から立ち上がり、衝撃だけを圧縮して叩き込む。


空気が爆ぜた。


ティアナの身体が、床を滑る。


「……く、ふ」


息が詰まった。


肋腹の負荷を無視して動いた反動が、遅れて来る。

黒い魔力が一瞬、濁った。


その隙を、フィオナは逃さない。


「――っ!」


三撃目。


星霊術を、そのまま体当たりのようにぶつけた。


防御も、影の逃げも、間に合わない。


ティアナは玉座の段に叩きつけられ、膝をついた。


玉座の間が、静まり返る。


王は、剣を構えたまま動かない。

助太刀が不要だと、理解している。


(……押している)


フィオナ自身も、それは分かっていた。


だが――


「……っ、は」


喉が焼ける。

視界の白が、さっきより広がった。


星霊術はまだ展開できる。

だが、細かい操作が効かない。


フィオナは、目的を思い出す。


(薬の……材料)


視線が、ティアナの方へ向く。


ティアナは、ゆっくりと立ち上がった。


ボロボロだ。

明らかに押されている。


それでも、その手には――何もない。


「……探してる?」


低い声。


「ここには、ないよ」


フィオナの心臓が、嫌な音を立てた。


「最初から、持ち歩くわけないでしょ」


ティアナは、口元を歪める。


「それは、別の場所」


影が、再び床を這い始める。

さっきより鈍い。だが、完全には消えていない。


フィオナは、歯を食いしばった。


(このままなら、倒せる)


でも――薬は、取れない。


星霊術の光が、わずかに揺らぐ。


ティアナはそれを見逃さなかった。


玉座の間に、再び緊張が張り詰めた。

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