フィオナの一撃
フィオナは、栓を抜いた小瓶を一息で飲み干した。
喉を落ちる感触の直後、内側から、焼けるような熱が走る。
「……っ」
肺がきしみ、心臓の鼓動が一段跳ね上がる。
血が速く巡りすぎて、視界の縁がわずかに白んだ。
それでも、剣は落とさない。
床に、淡い光が滲んだ。
点だった光は線へ、線は紋へと変わり、玉座の間全体に、星屑を散らしたような残光が広がる。
王が、息を詰めた。
(……これは)
魔術ではない。
だが、魔術よりも直接的で、乱暴だ。
剣身に、星の光が絡みつく。
軌道をなぞるように、淡く回転する。
フィオナは何も言わず、前に出た。
足音は一つ。
だが、その一歩で、空気が変わる。
ティアナの影が、反射的に足元を這った。
「……へえ」
黒い魔力を巡らせながら、興味を隠さない。
「無理を承知で、引き上げたね」
フィオナは答えない。
呼吸は、すでに少し荒い。
肩が、わずかに上下している。
それでも、剣先は一切ぶれない。
王は理解した。
(長くは、もたない)
だが同時に――
(これでティアナに勝てるかもしれない。)
三者の力が、正面で噛み合う。
星霊術の光が、静かに強まる。
フィオナは、踏み込んだ。
床が、軋む。
フィオナの星霊術が、真正面から放たれた。
光は一直線ではない。
空間を歪め、逃げ道を削ぎ落とすように展開される。
ティアナは即座に影で位置をずらした――はずだった。
「……っ」
星の光が、左の鎖骨下を掠めた。
直撃ではない。
だが、星霊術特有の負荷が、体内に残る。
魔力の流れが一瞬乱れ、呼吸が詰まる。
「……今のは」
ティアナが低く息を吐く。
人外の身体でも、無視できない種類の攻撃。
肉体よりも、内側に効く。
だが――
次の瞬間には、もう立て直している。
黒い魔力が鎖骨下にまとわりつき、強引に流れを上書きする。
痛みも、違和感も、切り捨てるように。
「……いい一撃ね」
口元だけで、そう言った。




