ティアナの本気
踏み込みは浅い。
だが、速度が違う。
火が走る。
王が剣で弾いた瞬間、氷が床を這い、足元を凍らせる。
踏ん張った先へ、風圧をおくる。
王は歯を食いしばり、剣を地に突き立てて耐えた。
「……その身体で、まだ来るか」
低く、だが確かな声。
ティアナは答えない。
答える代わりに、雷を落とした。
直上からではない。
斜め――回避先を読んだ位置。
王は反射的に跳ぶ。
だが、そこに影がある。
床を滑っていた影が、王の足首に絡みつく。
拘束ではない。
ほんの一瞬、動きを遅らせるだけ。
その一瞬で、十分だった。
ティアナは、剣を振るわない。
魔術だけで、距離を潰す。
掌を向ける。
圧縮された魔力が、砲弾のように放たれた。
王は剣で受ける。
――受けきった、はずだった。
だが、衝撃が抜けない。
床を削りながら、数歩後退する。
「……理解したわ」
静かな声。
「この程度じゃ、あなたは止まらない」
だから――
ティアナは、わざと一歩踏み込む。
王の間合いへ。
自分から、剣の届く距離へ。
王の目が、わずかに見開かれた。
「……自分から来るか」
剣が振るわれる。
速い。
正確。
致命を狙った一撃。
その瞬間。
ティアナの額が、王の胸に迫る。
「――だから、押し切る」
爆発した。
魔力が、内側から炸裂した。
王の身体が、後方へ吹き飛ぶ。
玉座の段差を越え、床を転がり、ようやく止まる。
瓦礫が落ちる音。
ティアナは、その場に立ったまま、深く息を吐いた。
ティアナは、王を見据えた。
まだ、終わらせる気はない。




