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証明してやる

 黒い魔力の残滓が、夜気に溶けていく。


 完全に静かになるまで、フィオナは剣を下ろさなかった。


「……消えた、わね」


 足元の床は抉れ、壁は崩れ、塔全体が微かに軋んでいる。

 それでも――立っていられる。まだ、戦える。


 リーネは一歩前に出て、周囲を警戒しながら告げた。


「ティアナ様の反応、上空ではありません。……城内です」


 フィオナの表情が、僅かに強張る。


「……やっぱり」


 撤退じゃない。

 戦いを切り上げて、目的地へ向かっただけ。


 フィオナはすぐに視線を東塔の東、王城中枢の方角へ向けた。


「陛下との……距離は?」


「最短経路で五分。ですが、あの方であれば――」


「もう着いてる可能性もある、か」


 リーネは否定しなかった。


 それが、答えだった。


 フィオナは小さく舌打ちし、剣を握り直す。


「……ほんと、性格悪いわよね」


「…はい。“もう戦えないのですか”とでも言いたげでした」


 敬語のまま、わずかに棘のある言い方をしている。

 フィオナはそれに気づいて、ふっと笑った。


「煽られてるわよ、私たち」


「承知しております」


 リーネは剣を構え直す。


「ですが――あの方は、私たちを排除する必要がないと判断された」


 その言葉に、空気が張り詰める。


 フィオナは一瞬だけ黙り込み、次の瞬間、強く床を踏みしめた。


「……上等よ。」


 その瞳に、迷いはない。


「なら、証明してあげる」


 リーネは一拍置いてから、静かに頷いた。


「フィオナ様」


「なに?」


「ただでさえ、今無傷ではありません。無理な突入は――」


「わかってる」


 フィオナは短く答え、歩き出す。


「でも、向こうはもう終わりだと思ってる」


 崩れた塔の出口へ向かいながら、振り返る。


「その油断、突くには今が一番でしょ。それに……こっちの切り札にあっちは気づいていない。」


 リーネは一瞬だけ目を見開き、それから、はっきりと剣を構えた。


「……承知いたしました」


 夜風が、二人の背を押す。


 同じ城の中。

 同じ時間。


 そして――

 ティアナは、2人を止められたつもりでいる。

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